映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍以後の現代社会において、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。




▼『映画を語れてと言われても』



 TODAY'S
 
第二七六回『シャンチー? ……違う違うシャァンチー! 違う違うShang-Chi! 違う違う……“シャン・チー:テンリングスの伝説”』





『シャン・チー:テンリングスの伝説』

2021年公開
監督・脚本:デスティン・ダニエル・クレットン
プロデューサー:ケヴィン・ファイギ
出演:シム・リウ オークワフィナ ベネディクト・ウォン ベン・キングズレー ミシェル・ヨー トニー・レオン



 あらすじ

 はるか千年の昔……一人の男が永遠の命と不思議な力を授ける謎の10個の腕輪を手に入れ、その力を用いて人を支配し、歯向かう者を蹴散らし、テンリングスと名のって闇の組織を作り、歴史の裏で暗躍し続けた……。

 そして20世紀末のある時、さらなる究極の武術を求め、謎の力を秘めたといわれる伝説の国ターローを探し求めたテン・リングスことシェンウー(演:トニー・レオン)は、捜索の末そのターローへの入口付近までたどり着いたものの、ターロー入口の番人であったシェンウーに匹敵する類まれな武術の使い手の女性イン・リーと出会い、戦いの末に……恋に落ち、夫婦となり、息子と娘をもうけるのであった。



 それからおよそ30年後……。
 アメリカはサンフランシスコの高級ホテルでは、配車係の青年シャンチー(演:シム・リウ)が、同僚にして親友のケイティ(演:オークワフィナ)とつるみながら、日々変わらぬ生活を送っていた……はずだった。

 ある朝、ケイティと共に乗っていた通勤バスの車内で、シャンチーは突然謎の悪漢どもに襲われる。
 が、類まれなカンフーの腕でこれを撃退するシャンチー。
 
 実はシャンチーこそがシェンウーとイン・リーの間に生まれた息子であり、幼き日に母が父の敵によって殺されたことが切っ掛けとなって、父により幼い時から殺し屋としての猛訓練を施されたものの、殺し屋になるのを拒否してアメリカへと出奔した身であったのだ。
 襲ってきた男たちが父の手下であったことから、シャンチーは同じように家を出た妹のシャーリンが狙われていると考え、彼女を守るべくシャーリンのいるマカオへと向かおうとするが、それに事情を聞かされたケイティもまた、強引に同行するのであった……。


 しかしてマカオのとある建築途中の高層ビルへと向かったシャンチーとケイティは、見違える程成長し、変わり果てた妹シャーリンと再開を果たす。
 と、同時にシェンウーの追っ手達もまた、彼らに迫っていたのであった。

 はたしてシャンチー達の運命やいかに!? そしてシェンウーの目的とは!?







 さて今回は2026年9月末の本文章執筆現在、にわかに活気づきつつあるMCU映画の一作にして、珠玉のカンフーの妙技が炸裂し、さらに……〇〇〇〇にまでなっちゃう一本について語りたいと思います!

 その作品とは『シャン・チー:テンリングスの伝説』、MCU映画ということは、当然原作コミックがあるわけですが、残念ながら筆者はその原作コミックを存じておりません。
 聞くところによると、ブルース・リーがブームになった頃に生み出されたカンフーも達人キャラで、キャプテン・アメリカのスパーリング相手になるくらいの実力の持ち主……と言うと凄さが伝わる人には伝わるかもしません。


 とはいえ、どう考えてもマイナーな(失礼!)原作コミックである『シャン・チー』を、名作多きMCU映画が一本として撮った監督は、デスティン・ダニエル・クレットンってお方。
 筆者の知ってる映画では、マイケル・B・ジョーダン主演の黒人差別裁判映画の『黒人の黒い司法 0%からの奇跡』なんかを撮ったお方。
 まったくアクションともSFともファンタジーともアメコミとも関係ない映画を撮ってた監督です。
 それが何故にMCU映画を撮る監督に抜擢されたのかは分りませんが……ともかく、同監督が本作の後に撮ったのは、2026年9月末現在、ド派手に大ヒットをかっ飛ばした『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』であると知れば、その実力に対する疑問は氷塊するってもんでしょう!




 そして出演者達は!?

 主人公シャン・チー役にシム・リウ。
 カナダで売れない役者として、様々なドラマや広告に出演しつつ本作のオーディションを受けでシャン・チー役を射止め、猛烈なカンフーの特訓末にシャン・チー役を演じきったシンデレラボーイです!

 本作後は『バービー』『ラストブレス』『ジャックポット!』などなど、数々の出演作で着実にキャリアを積んでおります。

 その役者としての魅力は、カンフーの腕前はもちろんですが、その地に足のついたフツーさな気がします。
 そのフツーさが、とんでもない事は巻き起こるMCU世界ではとても特別なのです。




 そしてそのシャン・チーの盟友にして相棒のケイティ役にオークワフィナ。
 本コーナーでいえばニコラス・ケイジ&ニコラス・ホルト主演の吸血鬼コメディ『レンフィールド』の勇敢な婦警や、『ジュマンジ』『オーシャンズ8』の他、前述した命がけの宝くじ争奪アクションコメディ『ジャックポット!』ではシム・リウと共演しております。

 関西の陽気なおっかさんみたいな女優さんで、彼女とシム・リウとの軽妙な掛け合いが、本作のムードの形成に大いに役立っていると思うのです。


 さらに、シャン・チーの父にして、神秘の力を発揮する謎の腕輪の使い手テンリングスにして、その力よって統べる闇の組織の長、シェンウー役にトニー・レオン。
 本コーナーで言えば『ハードボイルド:新・男達の挽歌』や『インファナルアフェア』シリーズで有名な超絶イケオジです。
 彼が出演してる時点で本作は勝ったも同然です!




 さらに、アカデミー俳優のミシェール・ヨーとベン・キングスレーと、なかなかに豪華なキャストで脇が固められております!




 そんな本作が公開されたのは2021年、2019年公開のMCUの集大成映画『アベンジャーズ:エンドゲーム』の後に作られ、なおかつ、続編ではなく、新たなヒーロ誕生を描いた“オリジン”映画が一つとしてです。
 と、同時に……あのコロナ禍の過ぎ去りし直前に公開された映画でもありました。


 正直なところ、公開前の評判はあまり芳しくなく、筆者もMCU映画だから見るけど、過度な期待はしていませんでした。

 だって知らないヒーロー、知らない主演俳優でしたから!

 しかし、いざ公開してみると、コロナ禍の最中にも関らず思いの他の大ヒットとなり、見にいった筆者も大いに満足したわけです。

 しかしてそれは何故だったのか!?





 毎度の事ながら、このレベルで大ヒットする大抵の映画がそうであるように、本作もまた、脚本、キャスト、映像、ロケ地、撮影、セット、VFX、スタント、キャストの熱演などなど、全てのパラメータがハイレベルだったのです。
 公開前の低かった期待値さえも、予想外の喜びの要因となったかもしれません。

 中でも、筆者が個人的に良かった点を上げるならば……。



 まず、本作のヴィランたるテン・リングス/シェンウー役のトニー・レオンがかっこええ!!

 若い頃からハンサムなお方でしたが、今はそれに渋みが加わり、その悲しみをたたえたような表情芝居が、今回演じるシェンウーというキャラと相まって、より哀愁を称えているだけでなく、本作では彼のカンフーの妙技が見れるのです!
 逆に言うと、今後またトニー・レオン出さないと、本作の続編が作られる場合は相当な戦力不足ということに……。
 あと指抜きグローブが超似合うおじさんです!!





 さらに、カンフー映画としての本作のクオリティもパないのです。
 本家香港映画のカンフーアクション映像にも勝るとも劣らぬ映像が見れたことに、初観賞時筆者は大いに驚いたものです。
 それは無理矢理例えるならば、空中に見えないレールがひかれているかのように、正確で、かつ迫力とアイディアに溢れたカンフーアクション映像なのです!
 また、サンフランシスコを走行中の通勤バス車内、建築途中の高層ビルの足場など、手を変え品を変え、バラエティ溢れるプレイスでのカンフーバトルに挑戦しているところも素晴らしい!



 そしてもちろん、脚本も自ら書いた監督たるデスティン・ダニエル・クレットンのお仕事も素晴らしいのです。
 回想シーンと、アクションパートと、コメディパートを適度に挟みながら、MCU名物の父との諍い話と、この世界に迫る恐るべき危機を、怖ろしく滑らかなテンポでバランス良く描き切り、見事なエンタメとしているのは、これが初のアクション大作映画監督とは思えぬほど。
 勢い余ってクライマックスではカンフー映画だったはずのジャンルが、大○○映画にヌルッとスライドしちゃうのはご愛敬です!
 そりゃ『スパイダーマン』の監督も任されるってもんです。



 最後に筆者が付けくわえておきたい本作の魅力を挙げるならば、それは主演のシム・リウの奮闘です。
 カナダ在住の売れない役者だった彼ですが、まぁ、控えめに言ってもビジュアルに華の無いお方であり、公開前の段階ではまったく惹かれるものは無かったのですが、撮影までの猛特訓と奮闘で見せるカンフーの妙技と、芝居の中に見える彼の実にフツーの人柄が良いのです。
 その彼の人としてフツーさが、物語の決着にとても説得力を与えている気がするのです
 (あと吹き替えの細谷佳正氏の名演となじみ具合!!)
 はたして、無名俳優だった彼が、本作でいかなる活躍をするのか? 本作未見の方はどうかその目でご確認下さい!






 さてここでいつものトリビア。

 アメリカ製作のTVドラマや映画は、ロケ予算が安く済むカナダでよく撮影されることがあり、カナダ在住のシム・リウは、ちょいちょいそのカナダ撮影のドラマで、エキストラよりもちょい出番の多い役なんかで出演歴が多々あるそうです。
 筆者が見た中では、アマプラ製宇宙SFドラマ『エクスパンス:巨獣めざめる』のシーズン3で、見覚えのある顔の男が酷い目に合ってビックリしましたよ!!


 ……ってなわけで『シャン・チー:テンリングスの伝説』もし未見ならオススメですぜ!!




 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍以後の現代社会において、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。





▼『映画を語れてと言われても』



 TODAY'S
 
第二七五回『退屈を持て余した平凡な主婦に打ってつけのお仕事は?“亀は意外と速く泳ぐ”』





『亀は意外と速く泳ぐ』

2005年公開
監督・脚本:三木聡
出演:上野樹里 蒼井優 岩松了 ふせえり 要潤 松重豊 伊武雅刀 嶋田久作 他



 あらすじ

 とある地方の海辺の町で暮らす23歳のごく平凡な主婦の片倉スズメ(演:上野樹里)は、夫が海外赴任となった為、夫から託されたペットの世話をする以外、極めて退屈な日々を送っていた。
 そしてその結果、あらゆる暇つぶし能力と無駄な観察眼と、類まれな存在感の無さを有するようになっていた。

 たまに会う幼なじみにして親友のクジャク(演:蒼井優)は、自由人過ぎるカメラマンとしてカンボジアに行くらしく、彼女と自分を比べ、自分の人生に大いな危機感と劣等感を覚えたスズメは、偶然町中で見かけた『スパイ募集』と書かれた切手サイズの広告に、思い切って応募してみることにする。


 かくしてごく平凡なアパートへと面接に呼ばれたスズメは、そこでクニキダシズオ(演:岩松亮)とエツコ(演:ふせえり)の夫婦のスパイと出会い、スズメの類まれな平凡さと存在感の無さから、即スパイに採用され、500万円の経費を渡される。

 しかし、彼女に下された指示は、別命あるまでひたすら目立たない生活を送れ! というものであった。

 かくして、これまでの普段の生活をまったく変わらないにも関らず、それ自体がスパイ活動でもあるという日々を送り始めたスズメは、かつてない充実感を抱くようになる。

 だが、その生活もいつまでも続くわけではなかった……。

 はたして、スズメのスパイ生活の先に待ち受けるものとは!?




 さて今回はコメディ邦画回です! それもごく平凡な主婦が、その類まれな存在感の無さや普通さを活かし、なぜかスパイをやることになるという脱力系ユルふわスパイコメディについて語りたいと思います!


 監督、脚本は三木聡。
 元々放送作家をされていたお方で、『タモリ倶楽部』『ダウンタウンのごっつええ感じ』『トリビアの泉』などの人気番組でキャリアを重ねつつ、大竹まこと、きたろう、斉木しげるらで結成されたコントユニット・シティーボイズの作家として活躍し、本作で長編映画デビューから二本目の生粋のコメディ作家なお方です。
 

 出演は、主演の23歳の平凡すぎて暇つぶし能力と観察眼と存在感の無さがカンストした主婦のスズメ役に上野樹里。
 矢口史靖監督作『スイングガールズ』や、実写ドラマ版『のだめカンタービレ』の主演等で人気の女優さんです。
 本作では、全編にわたって緩い感じのモノローグをすることで、独特のゆる~い感じの世界観の構築に一役かっています。




 その幼馴染にして親友のクジャク役に蒼井優。
 『フラガール』や『花とアリス』など、数々の映画ドラマで活躍している女優さん。
 本作では他彼女が演じるキャラのイメージからかけ離れた、破天荒はっちゃけキャラをからっと演じております。


 そして主人公スズメをスパイとして雇う怪しい……と言うより胡散臭い夫婦の夫、クニキダシズオ役に岩松了。
 その妻エツコ役にふせえり。
 三木聡監督の映画とドラマのほぼ全てにレギュラーで出てくる御二方であり、三木聡監督作品はこのお二人の実に息の合った実にどうでも良い掛け合いを楽しむ為のものと言っても良いかもしれません。




 さらにスズメ行きつけのある特徴のあるラーメン屋の店主に『孤独のグルメ』で御馴染みの遠藤憲一。
 スズメの初恋の加藤先輩役に要潤。
 公安刑事役に伊武雅刀と嶋田久作。
 その他、個性派脇役俳優のおじさま達がぎょうさん出てきております。

 この豪華キャストが出演して脱力系コメディを撮るなら、それだけで面白いものが作れそう! となる曲者揃いの顔ぶれ!
 なお筆者的には要潤の使いどころと演技が素晴らしいと思います!
 実に丁度ええキャスティング!




 そんなスタッフ・キャスト陣でお送りされた本作、特大ヒットと言うよりも、じんわり高評価され続けたような売れ方をしたようです。
 筆者はたまたまCSで放送したのを見て存在を知ったクチで、以後三木聡監督作品にプチハマりしたものです。

 ともあれ、本作を機に映画『図鑑に載ってない虫』(2007年)『転々』(2007年)『インスタント沼』や、ドラマ『時効警察』など、三木聡監督作はしばらくの間コンスタントに製作されるに至ったのだ思われます。
 岩松了&ふせえりコンビと共に!

 そしてさらにその後には『大怪獣のあとしまつ』を監督することになるわけですが……それはまた別のお話。


 ともかく、三木聡監督の近年の作品評価は別として、本作の評価が好評であることには違いありません。



 しかして、それは何故なのか?



 毎度のことそれを考えてみるならば、今回はなかなか難しいのです。
 ザックリ言えば、コメディとしての本作のユーモアの波長が、筆者の好みと合っていたから! ということになります。
 それを無理矢理文章で説明を試みるならば、人が普段の日常でぼ~っと考えているくだらない想像や、ふとした疑問、日常のあるあるやどうでもいい発見が、金はかけずに手間暇はかけ、アナログな手段でイチイチ映像化され、それが最初から最後までシュールかつ独特のテンポで隙間なく埋まっているところが良いのです。
 しかし、やっぱりその良さは見てもらって確かめて欲しいところ。
 お笑いの面白さを後から言葉で説明して伝わるわけないのですから……どうかその目でご確認下さい。





 ……などなどと、書きましたが、この部分はたいていの三木聡監督作品に共通する面白さです。
 ぶっちゃけ、他の三木作品を見ても、この部分の面白さはあんま変わらないかもしれません(例外もありますが)。
 



 では、本作ならではの良さは何か? といえば、それは本作の座組でのみ見れる個性豊かなキャスト陣によるアンサンブルといえるかもしれません。
 そして、上野樹里演じるスズメを通して、平凡な日常でも、見方一つ変えれば、充実した過ごし方に変えられる……というメッセージが本作には込められていたのが、上手いこと描かれていた気がしなくもありません。

 その手段がスパイになること……というのは、本作公開当時はともかく、今だったら到底笑えないですけどね!!!




 さてここでいつものトリビア。
 
 三木聡監督作品で毎回息のあった掛け合いを見せる岩松了とふせえりですが、ふせえり氏と実際に夫婦なのは三木聡監督。
 
 本作の、その大都市と言うほど華やかではなく、田舎と言うほど寂れてもいない独特の舞台となる町は、主に神奈川県の三浦市にて撮影が行われている。
 本作はその港町にあるあらゆる場所を巧みに利用したロケ地映画と言えるかもしれません。


 ……ってなわけで『亀は意外と速く泳ぐ』もし未見ならオススメですぜ!!



 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍以後の現代社会において、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。





▼『映画を語れてと言われても』



 TODAY'S
 
第二七四回『永遠の終り……“ドクター・スリープ”』






※本作はスティーブン・キング原作・スタンリー・キューブリック監督作『シャイニング』の続編となっております


『ドクター・スリープ』

2019年公開
監督・脚本:マイク・フラナガン
原作:スティーブン・キング
出演:ユアン・マクレガー レベッカ・ファーガソン クリフ・カーティス ジェイコブ・トレンブレイ


 あらすじ

 アメリカ・1980年……。
 この世ならざるものを感知できる等、様々特殊な力を発揮できる“シャイニング”と呼ばれる超能力を持っていた少年ダニーは、作家志望の父が、住み込みで山奥のリゾートホテル:オーバールックホテルの管理人の仕事を引き受けたことから、母と共にそこで冬を過ごすこととなるが、そのホテルに宿る悪霊に父が侵されたことで惨劇に見舞われ、ダニーのシャイニングを唯一理解してくれた、同じシャイニング能力を持つホテルのコックの老人ハロランと、父ジャックを亡くすことになる。

 事件後、幼きダニーはその後も自分にだけ見える悪霊に悩まされるが、良き霊となって現われたハロランにより、ある方法を伝授され、からくも悩みを克服する。

 その一方、ローズ・ハット(演:レベッカ・ファーガソン)率いる、シャイニング能力を有する子供を殺し、その際に発する精気を吸うことで不老不死を得ている集団トゥルー・ノットが、世界に住まうシャイニング能力者を探してはその手にかけていた。
 と同時に、シャイニング能力を持ちながらも、邪悪な心を持つ人間は勧誘し、自らの仲間に加えていた。

 それから時は経ち……2011年、病で母を亡くしたダニー(演:ユアン・マクレガー)は、それでもホテルの惨劇からのトラウマと、シャイニングによるストレスから酒浸りの人生を送っていたが、流れついた片田舎で、アルコール依存症患者支援団体の人間ビリー・フリーマン(演:クリフ・カーティス)と知り合い、社会復帰の道を歩みだす。

 そしてホスピスて働きはじめたダニーは、シャイニングを活かし、死に行く者に安らぎを与え送り出す能力に目覚め『ドクター・スリープ』と呼ばれるようになる。

 と同時に、遠隔地に住まう類まれなシャイニング能力者の少女アブラと、アパートにある黒板に文字を残すという方法を通じて知り合いとなる。

 そして2019年……ある日、アブラはいずこかに住まう同じシャイニング能力を持つ少年が、何者かによって惨殺される際の断末魔をシャイニング能力のテレパシーで受信し、トゥルー・ノットの存在を知り、唯一話を理解してくれるダニーに助けを求めるのであった。


 と同時に、絶好の獲物たるアブラの存在を感知したトゥルー・ノットは、次の標的をアブラに定め追い始めるのであった……。


 はたしてアブラとダニーは、トゥルー・ノット達の魔の手から無事生き延びることが出来るのであろうか!?













 さて今回はホラー映画回、それもスティーブン・キング原作の傑作ホラー……のおよそ40年ぶりの続編について語りたいと思います!

 スティーブン・キングといえば、ホラー小説界のレジェンドな作家でして……本コーナーでも紹介した大ヒット作……

第二二六回『デリー良いとこ一度はおいで♪“IT/イット “それ”が見えたら、終わり。”』

 ……の他、本コーナーでいえば『ショーシャンクの空に』や『キャリー』『シャイニング』『ミザリー』『ペットセメタリー』『スタンド・バイ・ミー』『ドリーム・キャッチャー』『ミスト』『サンキュー、チャック』『死のロングウォーク』などなど、ホラー映画に限らず数々の小説が映画化されているお方です!

 つまり、原作力なら保証付きってこと!



 そしてそのスティーブン・キングが2015年に書いた原作小説の映画版を撮った監督は、マイク・フラナガンってお方。
 スティーブン・キング原作映画では後に『サンキュー、チャック』も監督しており、高評価を得ているお方です。
 ……と同時に、あのスタンリー・キューブリック監督の稀代の名作『シャイニング』の続編を撮ろうとした大変に勇敢な監督とも言えます。



 そして出演者たちは!?

 主人公のダニー役にユアン・マクレガー。
 ご存じ『スターウォーズEPⅠ~Ⅲ』までのオビ=ワン・ケノービや、『トレインスポッティング』や『ムーランルージュ』『ビッグフィッシュ』『オークストリートの異変』などなど20年以上ハリウッド映画界の一線で活躍してきたお方です。





 そしてシャイニング能力を狙う不老不死の集団トゥルーノットのリーダーであるローズ・ハット役にレベッカ・ファーガソン。
 トム・クルーズ主演『ミッションインポッシブル:ローグネイション』でブレイクした他、本コーナーでも紹介した『MARCY/マーシーAI裁判』や『グレイテスト・ショーマン』『デューン:砂の惑星』などなど、数々の映画で活躍する女優さんです。
 彼女がその人間離れした美貌をもってして、人ならざる邪悪な悪玉側の主人公とも言える存在を演じるところが、本作の見どころの一つと言えるでしょう。




 さらに名脇役俳優のクリフ・カーティスや、香港映画紹介した御下劣少年友情コメディ『グッドボーイズ』で主演した名子役のジェイコブ・トレンブレイ君なんかが出演しております。





 そんな本作、そこそこにヒットしたものの、投じた予算に比すると少々もの足りない売り上げの作品だったようです……が、それでも……筆者的にはここで語る価値ある作品だと思うのです。
 だって筆者が好きだから!

 本作は他で無理矢理例えるならば、同じスタンリー・キューブリック監督作、アーサー・C・クラーク原作の『2001年:宇宙の旅』に対する、ピーター・ハイアムズ監督作の『2010年』みたいなポジションの映画であり、筆者もまた後者の方が好きなことが、今回本作を語る作品に選んだ理由と同じなのです。
 本作の場合は、その『2010年』よりもさらに状況が複雑です。 


 まず、ざっくりと本作が出来上がるまでの経緯を誤解を恐れず筆者の認識で語ると、1980年にスティーブン・キングの大ヒットホラー小説『シャイニング』が、巨匠スタンリー・キューブリック監督により映画化され、これまた特大ヒットしました。

 どれくらいヒットし、高評価されたかというと、本コーナーでも紹介したスピルバーグ監督作『レディ・プレイヤーワン』やディズニーフルCGアニメ『ズートピア2』内で思い切りオマージュや再現が出てくるほど、鮮烈だったのです。

 ……ですが……キューブリック監督は、原作からオチを大いに改変した結果、原作者のスティーブン・キングは大いに不満を抱き、のちに自ら監督して原作に忠実なTV映画版『シャイニング』を撮るに至った……と言うのは界隈では有名な話。

 それから時は経ち、スティーブン・キングが数十年ぶりに小説『シャイニング』の続編小説を刊行、それが大ヒットし映画化が決定……したのですが、本作では大ヒットした映画版『シャイニング』の続編という体裁で作られることになった……というわけです。
 映画を作る側としては仕方ない判断と思います。
 ヒット映画として存在していない原作の続編だけを映画化するのはなかなか無理があるでしょうから……。
 納得いかなかった映画版『シャイニング』の続編となったことへのスティーブン・キングの心境は分りませんが、ノリノリでメイキングのインタビューに出ているので、きっともう蟠りは消えていると思いたいところ。





 で、出来上がった本作の何が筆者は気に入ったのか? と言いますと……。


 一つは監督スタッフ・キャスト陣による大いなる『シャイニング』愛です!
 本作は映画ド頭に流れるBGMから、オーバールックホテルの再現から、新たに撮影された映画『シャイニング』のシーンから、『シャイニング』に登場したキャラや数々の悪霊達やらが、そっくりに再現から、ともかく『シャイニング』愛が凄く、それを見てるだけでも関心するのです。
 特にオーバールックホテルの内装と外観の再現は、映画『シャイニング』では見れなかったアングルもあって関心するのです!
 




 さらに本作で好きなところは、スティーブン・キングが続編を書くにあたって登場させた、一種の吸血鬼のような邪悪な集団トゥルー・ノットの存在と、彼らとダンやアブラとの良き迫るシャイニングを用いた戦いです。
 
 スティーブン・キング作品あるあるで、シャイニングと呼ばれる超能力者や、幽霊たちが登場するだけでなく、本作はトゥルーノットと呼ばれる邪悪な集団とのバトルとなっているところが、本作をただのホラー映画というだけでなく、凄く分かりやすくエンタメにしていると思うのです。

 超能力とは言っても、念力でモノを動かしたり瞬間移動したり炎を操るような派手な能力は出て来ず、本作でシャイニングと呼ばれる能力は、テレパシーや千里眼や幽霊が見える、幻覚が使える、命令した言葉通りの行動を強要できる……など、少々地味な能力ばかりです。
 しかし、地味な能力を使い、数々のアイディアで戦ったり、映像化しているところが素晴らしいのです。

 なかでも筆者が好きなのは、トゥルー・ノットのリーダー、レベッカ・ファーガソン演じるローズ・ハットが、幽体離脱をして、アメリカ大陸の端から端へ移動し、アブラの元に移動するシーン。
 2020年代前後の映画だからこそできる素晴らしい映像なのです。


 そして本作の最大の魅力は、最終的に原作版の『ドクター・スリープ』とも違うクライマックスをむかえ、結果として原作版『シャイニング』をフォローすることに成功していることです。

 つまり映画版『シャイニング』で無視された部分が、本作では描かれているわけなのです。
 しかし、結末に関するそれをここで語るのはあまりにも無粋……本作未見の方はどうかその目でご確認下さい!





 さてここでいつものトリビア。

 本作作中で最も強力なシャイニング能力を持つ少女、アブラの部屋には、日本でも話題となった海外製フルCG人気アニメシリーズ『RWBY(ルビー)』のポスターが貼られており、アブラが同作のファンであることが伺える。
 そして枕元にはそれに登場するエメラルドというキャラのフィギュアが飾られている。
 これは『RWBY』内でエメラルドが幻覚能力を駆使して戦うキャラであり、アブラもまたシャイニング能力で幻覚を操るのを得意としていることを示唆しているものと思われる。
 ちなみにアブラがローズ・ハットとシャイニング能力を用いて相対するシーンでは、アブラがエメラルドっぽい変装をしているのも見ることができる……。




 ……ってなわけで『ドクター・スリープ』もし未見でしたら『シャイニング』を一回見てから見るのがオススメですぜ!