『スタートレック』…………それは1966年に放送が開始されたTVドラマシリーズを皮切りに、2026年の現在にいたるまで続々と劇場版やTVドラマシリーズ、アニメシリーズなどが製作され続けている超人気宇宙SF作品のシリーズ………。

 これは……そんな『スタートレック』の、ファン“トレッキー”を増やす為に、性懲りも無くまたもや『スタートレック』映画の紹介に、勇敢に挑戦した文章である!




▼『(スタトレ)映画を語れてと言われても』


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第二五六回『恩讐の彼方に平和など……“スタートレックⅥ:未知の世界”』




 
『スタートレックⅥ:未知の世界』
1991年公開
監督・脚本:ニコラス・メイヤー
出演:ウィリアム・シャトナー レナード・ニモイ ディフォレスト・ケリー ジェームズ・ドゥーアン ニシェル・ニコルズ ジョージ・タケイ ウォルター・ケーニッグ デビッド・ワーナー キム・キャトラル クリストファー・プラマー他

 あらすじ

 時に23世紀の末…………ワープ航法を発見した人類は、銀河系の四分の一にまで進出し、そこで遭遇した数々の異星文明と、時に戦争となりながらも、惑星連邦を結成し発展の時をむかえていた。

 かつて宇宙船USSエンタープライズ号の艦長として気心知れたクルー達と共に、5年間の外宇宙への探査任務を達成し、歴史に名を残した惑星連邦艦隊の士官ジェームズ・T・カーク(演:ウィリアム・シャトナー)は、それから20年以上が経ち、一時は提督にまで昇進したものの、宇宙の平和を揺るがす陰謀に巻き込まれ、紆余曲折を経て降格処分を受け、再び新造宇宙船エンタープライズ号の船長となり、新たなる冒険の日々を送っていた……。

 だがそのカーク船長の冒険の日々にも、三か月後に控えた定年退官により、とうとう終りの時を迎えようとしていた。
 そんなある日、惑星連邦に激震が走る。

 かつて大戦争を繰り広げ、今は中立地帯を挟んで惑星連邦と敵対関係にあるクリンゴン帝国の本星、クロノスの月・プラクシスが、過度の資源採掘の結果大爆発し、甚大な被害を本星にあたえたのだ。

 この事態に、かつてクリンゴン人によって一人息子のジャックを殺害された経験のあるカークは、そのままクリンゴン帝国など滅んでしまえば良いと感じていたが、惑星連邦上層部の結論は違っていた。
 惑星連邦は甚大な被害の出ているクリンゴン帝国本星クロノスの救援を行い、それを機に、クリンゴン帝国と恒久的和平を結ぼうという方針が決まったのだ。

 それはカーク船長の指揮するエンタープライズ号の副長にして、バルカン人との地球人とのハーフにして、カークの親友でもあるミスター・スポック(演:レナード・ニモイ)の主導で決められたことであった。
 しかもスポックは、こともあろうにカークに和平交渉の為にクリンゴン帝国よりやってくるゴルゴン宰相(演:デビッド・ワーナー)の、エンタープライズ号によるエスコート任務まで決定させていた。

 クリンゴン帝国に恨みのあるカークは、スポックに自分には向いていない任務だと訴えるが、クリンゴン帝国との和平こそが、銀河の平和な未来をつかむための唯一論理的選択なのだと言って耳を貸さなかった。

 かくして、任務として断ることなど出来なかったカークは、惑星連邦最新鋭宇宙船エクセルシオ号の船長へと昇進転属した元エンタープライズ号操舵主のスールーに代わり、新たな操舵主となったバルカン人のヴァレリス(演:キム・キャトラル)を加えたクルーと共に、エンタープライズ号でゴルゴン宰相との合流宙域へと向かう。

 しかして、そこに現れたのは、ゴルゴン宰相を乗せたクリンゴン帝国の誇る巨大宇宙戦艦であった。

 カークは外交儀礼として、ゴルゴン宰相と、共にやってきたクリンゴン軍のチャン将軍(クリストファー・プラマー)と、ゴルゴン宰相の娘のアゼドバーの三人を、ビーム転送(※)でエンタープライズ号内に招き、食事会を催して一応の歓迎して見せる。
 が、カークがそうであるように、クリンゴン帝国軍のチャン将軍やアゼドバーもまた、惑星連邦に対する敵対心と偏見を隠せずにおり、食事会は惨憺たる有様でお開きとなり、三人の客はクリンゴン帝国艦へとビーム転送で帰還する。

 その直後、突如エンタープライズ号より発射されたと思しき光子魚雷二発がクリンゴン帝国艦に命中。
 さらに被弾したクリンゴン帝国艦内部に何者かが潜入し、ゴルゴン宰相に銃撃した後に再びビーム転送を用いて艦内から去る。

 その一方、クリンゴン帝国艦は攻撃してきたと思われるエンタープライズ号に直ちに反撃をしかけるが、カーク船長が全面降伏を宣言したことで辛うじて攻撃は回避される。
 さらにカークは、医者の存在しないクリンゴン帝国艦内にエンタープライズ号船医のドクター・マッコイ(演:ディフォレスト・ケリー)と共にビーム転送で乗り込み、銃撃を受け瀕死の重症のゴルゴン宰相の救命を申し出る。
 しかし、未知の異星人であるクリンゴン人の医療には限界があり、マッコイの尽力虚しくゴルゴン宰相は世を去る。

 この事態に際し、残された娘のアゼドバーとチャン将軍は、この一連の襲撃事件の最重要容疑者として、カークとマッコイを逮捕。
 エンタープライズ号を中立宙域に残し、二人を裁判にかけるべくクリンゴン帝国艦はクリンゴン領へと帰還するのであった。


 いったいクリンゴン帝国艦を光子魚雷で撃ち、同艦に潜入してゴルゴン宰相を銃撃したのは何者で、何を目的としていたのか?
 もちろん自分たちが犯人では無いと確信しているエンタープライズ号に残されたスポック達は、その謎を解きつつカークとマッコイを助けるべく、クリンゴン帝国領内への危険な侵入を試みる。

 その一方、クリンゴン帝国に連れ込まれたカークとマッコイは、クリンゴン帝国での、限りなく不利な裁判に掛けられようとしていた。


 はたして、カーク達とクリンゴン帝国と惑星連邦と銀河の運命やいかに!?






 さて今回は全銀河のトレッキーみなさまお待たせしました!
 待望の劇場版スタートレック作品回です!
 それもウィリアム・シャトナー演じるカーク船長をはじめ、TVシリーズ時代からのオリジナルキャストとキャラによってお送りされたシリーズの最後を飾る作品回です!


 例によって、今一度『スタートレック』とは何ぞや? を語っておくならば……。

 本コーナー第三十五回『“スタートレックⅡ:カーンの逆襲” 老いたる主人公達の新たなる冒険のはじまり』

 ……の他、第五十回、第五十一回、第九十一回、第一一〇回、第二一回の数々の劇場版『スタートレック』回を読んで頂くとして……。

 超ザックリと語ると約60年間ほども続く『遠い未来……(主に)カーク船長率いるエンタープライズ号が、宇宙を舞台に大冒険する』を描いた超人気宇宙SFテレビドラマ&映画作品群です。

 その魅力は、遠未来の宇宙を舞台に『スターウォーズ』級のアクションやバトルが行われるだけでなく、人生、社会、国際情勢や環境問題を、宇宙の生命や文明やあらゆるSF的現象に置き換え、生命や倫理や道徳や人生とは何か? を問いかける見事なドラマとしたところにあると思われます。


 して本作は、その劇場版『スタートレック』の6作目にして、オリジナルシリーズの完結編となりわけです。
 こも後もスタトレ映画は造られ続けますが、以後は新たなる時代の新たなる主人公たちの物語となります。


 そのシリーズ完結の大役を任され、脚本と共に監督したのは、前述した『スタートレックⅡ:カーンの逆襲』を撮ったニコラス・メイヤー。
 劇場版スタトレシリーズで最も面白いと言われている『カーンの逆襲』の監督なのですから、その面白さは保障されたようなものです。
 また『シャーロック・ホームズ』シリーズのパスティーシュ(半公式二次創作のようなもの?)を何冊か書いている作家でもあり、その経験が本作の物語に大いに活かされているのです。



 そして出演者は!?
 カーク船長演じるウィリアム・シャトナー、人気キャラのミスター・スポック演じるレナード・ニモイをはじめ、ディフォレスト・ケリー、ジェームズ・ドゥーアン、ニシェル・ニコルズ、ジョージ・タケイ。ウォルター・ケーニッグのエンタープライズ号のクルー達が全員顔を揃えてるのはもちろん、ゲスト俳優として、『セックス&ザ・シティ』の主演で有名なキム・キャトラルや、近年では『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』等の出演が記憶に新しい名優クリストファー・プラマー(故)などが出ており、劇場版らしい華やかさを添えております。




 そんな本作は、公開当時までのスタトレ映画の中でも屈指の大ヒットとなり、オリジナルシリーズとしてのスタートレックの歴史に有終の美を飾ったのであります。
 筆者も公開当時は大いに期待して劇場へ行き、シリーズの完結を見送ったものです。



 しかして、本作が何故にそこまでヒットしたのか?
 ……と例によって考えるならば、模型特撮技術の最盛期にして最後の宇宙船バトルが存分に見れることや……。
 ジュラシックパークのちょっと前、ターミネーター2とほぼ同時期に投入された最新のCG技術を用いたVFX映像……。
 誰がどうやってクリンゴン帝国艦に光子魚雷を撃ったのか? ……という謎解きを、ミスター・スポックがシャーロック・ホームズの名台詞と共に解き明かすミステリー要素や……。
 エンタープライズ号クルーの頼もしいチームワークや。
 劇場版三作目で初登場して以来、ようやく大活躍するエクセルシオ号の雄姿や。
 ウィリアム・シャトナーの何歳になっても変わらないナルシズム溢れる名演に……。
 既に放送されていた本作のおよそ80年後の宇宙を舞台にした新TVシリーズ『スタートレック:The Next Generation』との数々の繋がり要素などなど、さまざまな要因が挙げられます。



 もちろん本作をもって、一時終了となる劇場版『スタートレック』を、筆者のように見送ろうとしたトレッキーも大勢いたことでしょう。
 そしてその結果、本作の成功が、この後に続く新たな劇場版『スタートレック』へと繋げた……と言って良いと思います。
 本作はそれまでの『スタートレック』の集大成であり、同時に次なる劇場版『スタートレック』へのバトンとなったのです。


 そして他のスタートレック作品がそうであるように本作もまた、人が世を生きる上で、大いに有用なエレメントを与えてくれるのが、大きな魅力な気がします。
 それは本作の場合、混迷の度合いを深めてゆく2026年現在の世界情勢の中にあってはなおさらなのです。
 その部分こそが、本作最大の魅力だと思うのです。



 ザックリと言えば、本作は公開時の数年前に起こった米ソ冷戦の終了にインスパイアされた物語です。
 現実世界ではアメリカとソビエト連邦で行われていた冷戦が、チェルノブイリ原発事故や東西ドイツのベルリンの壁崩壊から終了したように、本作では、地球を中心に結成された惑星連邦と、覇権主義国家クリンゴン帝国との、クリンゴン母星の月崩壊を切欠とした講和を描いた物語なわけですが……。

 当然ながら、数十年も敵対していた国家と、そうそう容易く和解できるわけがありません。
 なにしろ主人公たるカーク船長自身が、クリンゴンに恨んでも恨み切れない程の憎しみがあるのですから……。

 今現在、現実の世界で起きている戦争でもそうであるように、すでに多くの命が互いによって奪われてしまった後で、和平を結べ、これからは仲良くしろ! と言われて、ハイそうですかそうですねと素直に従える人など、そうそういるとは思えません。

 ですが、そうであったとしても、いつかは人は争いから手を引かなければなりません。
 これから生まれてくる命にまで、争うことを強いて、永遠に戦い続けることなど出来ないのですから……。

 本作はいかにしてその和平が成しえたか? ……に挑戦したのが本作なのです。




 ……とはいえ、映画の中で描かれたことが現実でも成しえたなら苦労はせず、本作での惑星連邦とクリンゴン帝国との講和とその経緯に納得が出来るか?は人それぞれでしょう。
 完璧な答えなど出せたら苦労は無いのですから。
 ただ、この題材に果敢に挑戦したことの意義があり、それこそがとてもスタートレックだと思うのです!!





 さてここでいつものトリビア。

 元エンタープライズ号操舵主のスールーが船長となって、本作7で大活躍する惑星連邦の最新鋭宇宙船エクセルシオ号のクルーの一人役で、当時のハリウッドのスター俳優クリスチャン・スレイターが出てる。

 本作撮影時、隣のスタジオではアルパチーノが映画撮影しており、ドアを開けたらカーク船長とミスター・スポックがいる! というドッキリをしかけられたことがある。

 本作ではクリンゴン人の血液がピンクに近い紫色であることが判明するが、それは赤い色にしちゃうと、映画のレーティングが上がっちゃうからその色にした。



 ……ってなわけで『スタートレックⅥ:未知の世界』もし未見でしたら長寿と繁栄を!



 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍以後の現代社会において、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。





▼『映画を語れてと言われても』



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第二五五回『ゾンビだって恋したいっ“ウォーム・ボディーズ”』


 タグ:ゾンビ パンデミック アポカリプス ラブコメ アクション 



 
『ウォーム・ボディーズ』
2013年公開
監督・脚本:ジョナサン・レヴィン
原作:アイザック・マリオン著『ウォーム・ボディーズ ゾンビRの物語』
出演:ニコラス・ホルト テリーサ・パーマー ジョン・マルコヴィッチ デイブ・フランコ他


 あらすじ


 ゾンビパンデミックの末に文明が崩壊した近未来……アメリカのとある空港跡付近……。

 わずかに生き残った人間は、グリシオ大佐(演:ジョン・マルコヴィッチ)の指揮の元、巨大な壁で安全地帯の生活圏を囲う一方で、壁の外に医薬品などの必要物資の回収を目的としたチームを送っていた。


 その一方、空港跡で暮らす若い男性のゾンビのR(演:ニコラス・ホルト)は、わずかに残った人間時の思考と、ゾンビとしての本能に動かされながら、生き残った人間に頭を撃たれることや、人間の思考を完全に失ったゾンビの成れの果てのガイコツに怯えつつ、ゾンビとしての食欲にしたがって遭遇した人間を襲うべく、空港とその周辺をウロウロする日々を送っていた。

 そんなある日、Rはゾンビ仲間と供に、医薬品を求めて壁の外に現れた人間の集団に遭遇、その中の若い男性を襲う。
 そして彼の脳を食した瞬間、Rは突然の欲求に襲われ、他のゾンビに襲われていた一人の女性をゾンビから守り、彼女を連れて安全な自分の隠れ家にかくまってしまう。

 実はその女性はRが食った男性の恋人ジュリー(演:テリーサ・パーマー)であり、Rが男性の脳を食った結果、彼の恋人への思いがRの思考に流入したからであった。

 突然人間の彼女ジュリーへの愛に目覚めてしまったRは、彼女を他のゾンビやガイコツから守りつつ、人間の住む壁の向こうへ無事送り届けようと決心する。


 はたして、恋するゾンビRと、彼に彼氏を食われたジュリーの運命やいかに!?






 さて今回はゾンビ映画回! それもゾンビ映画の癖に心がほっこりしちゃうハートウォーミングなゾンビ映画の珍品について語りたいと思います。


 原作はアイザック・マリオン著『ウォーム・ボディーズ ゾンビRの物語』。
 どうも吸血鬼恋愛映画『トワイライト』などの系譜の、向こうの若者向け小説のなかの一作っぽいです。

 これの映画化に挑んだのがジョナサン・レヴィンって監督。
 本作以外の監督作だと、ガンを患ったジョセフ・ゴードン=レヴィット演じる主人公が、セス・ローゲン演じる主人公と共に、闘病生活を乗り越えるドラマ映画『50/50 フィフティ・フィフティ』なんかが有名なお方です。
 つまりゾンビ映画云々というより人間ドラマがお得意な監督と言えるのかもしれません。




 そして出演者達は!?

 主人公ゾンビのR役にニコラス・ホルト。
 何気に本コーナーで言えば『マッドマックス:怒りのデスロード』『X‐MEN:ファーストジェネレーション』『レンフィールド』などに主演・出演してきた子役出身の若手売れっ子俳優です。
 今回も内向的なんだけれど、恋の為に勇気をふり絞る好青年を演じております。


 そのゾンビRが恋するお相手のジュリーを演じるのはテリーサ・パーマー。
 ハリウッド版の『呪怨』のニ作目『呪怨:パンデミック』や『ライトオフ』などのホラー映画や、第二次世界大戦での沖縄戦でも衛生兵の活躍を描いた『ハクソーリッジ』、本コーナーでも紹介した『フォールガイ』などまど、数々の映画にするっと出演している美人女優さんです。
(ちなみに筆者は時々クリステン・シュチュワートとごっちゃになります)




 さらに生き残った人間側の指揮官にして、ヒロイン・ジュリーの父親であるグリシオ大佐役にジョン・マルコヴィッチ。
 迷映画『マルコヴィッチの穴』の他、本コーナーでも紹介しクリント・イーストウッド主演の大統領警護の映画『ザ・シークレットサービス』で、イーストウッドと対決した暗殺犯役などで有名なンハリウッドを代表する個性派俳優が一人です。




 そして序盤でR食べられてしまうジュリーの彼氏のペリー役にデイブ・フランコ。
 イケメン俳優ジェームズ・フランコの弟で、『グランド・イリュージョン』シリーズや、ホラー映画『トゥギャザー』などに主演・出演している気がつけば出ている系売れっ子俳優です。



 うむ、あまり潤沢では無いであろう予算を、上手くやりくりして呼んだセンスあるキャスティングな気がします。




 そんな本作、本国では制作費の三倍の売り上げを叩きだす大ヒットとなり、筆者はちゃ~んと映画館で本作を観賞し、とてもゾンビ映画を見た後とは思えないような、ほっこりした気分で映画館を後にしたものです。
 残念ながら、日本公開での売り上げは芳しくなかったみたいですけどね!



 しかして、本作は何がそこまで受けたのでしょうか?


 本作の場合、なによりもアイディアの勝利があった気がします。
 本作の原作の解説によれば、ゾンビアポカリプス版『ロミオとジュリエット』をコンセプトに、本作原作小説は執筆されたのだといいます。
 そのアイディアの段階で、ユニークかつ秀逸です。
 いかにジュリエットといえど、ゾンビを彼氏にしようとはそうそう思いますまい。
 というか、ゾンビで恋愛モノを描こうなどとは普通は思いつかないはずです
 だってゾンビと人間のカップルだったら、人間側が高確率食べられちゃいそうですからね!
 ゾンビで恋愛モノがそれまで生まれてこなかった最大の理由がそれでしょう。

 しかしながら本作は、いくつかのアイディアを駆使したオリジナル設定を設けておくことで、上手いことゾンビでの恋愛作品を成立させているのです。
 それらの設定を活かし、上手いこと映像化したことが本作の成功の鍵だった気がするのです。

 その設定とは……。

 まずゾンビに二種類の段階を設けたことです。
 本作におけるゾンビは、Rたちのようないわゆるゾンビと、ゾンビもゾンビ度が進行しきったガイコツという二種類があり、主人公Rのようなゾンビは、食人欲求はあれども、人間時代の思考や記憶はうすぼんやりと残っており、ゾンビ仲間と軽い意思疎通や交流さえ可能となっています
 人を襲うことを覗けば、日々ノロノロとうろついているだけの存在と言えなくもありません。
 が、そのゾンビが飢餓状態が続いた結果、食欲によって人間時代の記憶と思考が完全に奪われると、ほぼ骨だけになったガイコツと呼ばれる状態に変化し、それはもう人間をただたただ襲うだけの肉食マシーンとなってしまうのです。

 つまりゾンビに種類を設け、一方にいくらかの人間味を残すことで、ゾンビと人との恋愛ができるかもしれないという可能性を造ったのです。
 まぁ……こうでもしとかないとゾンビ恋愛は無理ですもんね。


 そして二つ目の本作オリジナル設定は……。
 あらすじでも書きましたが、この作品のゾンビは、人間の脳を食すと、食った人間の記憶と思考が移るのです。
 そも結果、人を食うことしか頭に無いはずゾンビが、人間の女性に恋するわけです。
 ぶっちゃけRがジュリーに惚れる件でしか出てこない設定ですが、その一回だけで充分な効果と説得力があります。
 実にゾンビ映画らしい設定ですしね。


 そして最後の三つめは、この作品のゾンビは○○すると○○に〇〇るという設定なことなのですが、それをここで語ってしまうのはあまりにも本作クライマックスのネタバレ過ぎますので、本作未見の方は、どうかその目でご確認ください。


 人によってはそんなゾンビあるか~い! と憤りそうなオリジナル設定ではありますが、そもそもゾンビが架空の存在なのですから、たまにはこういうパターンもあってもいいじゃん……と筆者は思う次第であります。



 ……などなどと色々語って来ましたが、ここまで語ったのと同じくらい本作を魅力たらしめているのは、なんといっても主演のニコラス・ホルトの熱演にある気がします。
 思えば……叛コーナーでも紹介してきた『マッドマックス:怒りのデスロード』『X‐MEN:ファーストジェネレーション』『レンフィールド』で、毎度毎度、気弱だけれど勇気を出せば凄い力を発揮する好青年を演じていた彼ですが、本作でもそんなニコラス・ホルトが演じそうな好青年ゾンビを見事に演じているところが、本作の魅力な気がするのです!
 ゾンビなくせに、なんかモノローグで朗々と語るし、なんか応援したくなっちゃう役を見事に演じているのです。

 いやニコラス・ホルトは他の映画じゃちゃんと全然違うキャラも演じているんですけどね! 『スーパーマン(2025年)』のレックス・ルーサーとか!!



 さてここでいつものトリビア。

 本作のキャラ名のRとジュリーは、シェイクスピア作の『ロミオ(Romeo)とジュリエット』から。
 本作作中ではその『ロミオとジュリエット』の有名なバルコニーのシーンをオマージュしたパートもありますよ。

 本作は主に、カナダにある廃空港を使って撮影されており、予算を掛けずに、リアリティあるアポカリプス世界の映像化に成功してます。



 映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍以後の現代社会において、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。





▼『映画を語れてと言われても』



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第二五四回『この子にしてこの親あり!“インディ・ジョーンズ/最後の聖戦”』




 
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』
198年公開
監督:スティーブン・スピルバーグ
プロデューサー:ジョージ・ルーカス
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ハリソン・フォード ショーン・コネリー リヴァー・フェニックス アリソン・ドゥーディ他

 あらすじ

 時に1938年……その道では高名な考古学者、インディ・ジョーンズ(演:ハリソン・フォード)は、ある日、大富豪のドノバンなる人物より、イエス・キリストの処刑時に、その血を受けたとされる聖杯捜しの依頼を受ける。

 その聖杯を手に入れた者は、不老不死と強大な力を得る……」とされていたが、何千年もの間、人類が探し求めていたにも関らず今だその聖杯は見つかっておらず、インディは今さらそう簡単に見つかるわけが無いと依頼を渋る。
 だがドノバンは、歴史上最後に聖杯を所持していたとされる十字軍によって、聖杯が隠された在りかが刻まれた遺物の石板を手に入れていた。
 しかし、その石板は半分に欠けており、それだけでは聖杯の在りかを知ることはできなかった。
 もしも、欠けたもう半分の石板がみつかれば、そこに刻まれた聖杯の在りかを解読し、聖杯の在りかまでたどり着けるかもしれない。
 ドノバンはその残りの石板の捜索を、ある人物に依頼していたが、その人物が行方不明になり、インディに彼を探して欲しいというのだ。
 その人物とは、インディの疎遠となっていた父、ヘンリー・ジョーンズ博士であった。


 父が行方不明となっては断ることはできず、しかたなく父親探しを承諾したインディは、最後にヘンリーが目撃されたイタリアはヴェネツィアへと飛ぶ。


 現地でヘンリーの助手を務めていた女性エルザ(演:アリソン・ドゥーディ)とおち会い、ヘンリーの後を追って十字軍ゆかりの元教会の図書館へと向かう。
 そこでヘンリーを探す中で、その地下に古代遺跡があり、石板の残り半分を発見したインディであったが、その直後何者かの集団に襲われ、殺されかけたものの、逆に制圧し、父の行方を訊きだそうとする。
 てっきり襲ってきた男達が父ヘンリーをさらったのだと思っていたインディであったが、彼は聖杯を悪人に発見させないために守護していた十字軍の末裔たちであった。
 そして彼から父はオーストリアのとある城につかまっていると訊きだしたインディは、エルザと共にドイツに飛ぶ!

 教えられた古城へと潜入し、そこで遂に父ヘンリー(演:ショーン・コネリー)と再会するインディ。
 だが父と再会したのも束の間、二人は聖杯を巡る巨大な陰謀に巻きこまれていた。

 はたして、聖杯を巡るジョーンズ親子の運命やいかに!!?






・ さて今回は、本コーナーでもお馴染みの、スティーブンスピルバーグ映画回です!

 今さら説明するのもなんですが、スピルバーグ監督と言えば、ホンコーナーでも紹介した『ジョーズ』『宇宙戦争』『プライベート・ライアン』『レディ・プレイヤー1』『フェイブルマンズ』などなどの名作かつ大ヒット作を次々と世に送り出してきたハリウッド……いやさ世界を代表する名監督が一人です。
 そしてそんな彼が、あの『スターウォーズ』シリーズを世に送り出したジョージ・ルーカス監督のアイディアとプロデュースで世に送り出し大ヒットたのが……。
 1930年代の末に、考古学者のインディ・ジョーンズが、激動の時代の中で、人知を超えた古代の秘密を巡って大冒険する『レイダース:失われたアーク』でして、その続編が、本コーナーでも紹介した……。

第六十八回『スピルバーグとルーカスが手を組んだら……“インディ・ジョーンズ:魔宮の伝説”』


 ……なわけでして、本作はその三作目ってなわけです。


 音楽はスピルバーグ作品で御馴染みのジョン・ウィリアムズ。
 本シリーズのメインテーマ曲は、本作を未見の方であってもどこかで聞いた覚えはあるはず。



 そして主演は前述した『スターウォーズ』の人気キャラであるハン・ソロや、本コーナーでも紹介した『エアフォース・ワン』で主演したハリソン・フォード。
 彼の知性とダンディズムと粗野さが入り混じった魅力が、本シリーズを大ヒットさせた大きな要因であることは間違いないでしょう。

 
そして本作の準主役とでもいうべきインディのパパ、ヘンリー・ジョーンズ役に(故)ショーン・コネリー。
 言わずと知れたスパイ映画の長寿大ヒットシリーズ『007』の初代ジェームズ・ボンド役の他、本コーナーでいえば潜水艦映画の名作『レッドオクトーバーを追え!』の主演で知られる名優です!
 彼の名演と、ハリソン・フォードとの掛け合いが本作の大きな魅力なのです!




 その他、本作のヒロイン枠たる女性考古学者のエルザ役にアリソン・ドューディ。
 長いこと本作以外で出演してるところを見かけなかったのですが、近年大ヒット・インド映画『RRR』で極悪非道なイギリス総督夫人役で見てビックリすることとなる女優さんです。


 そして忘れちゃならないのが、本作のプロローグのインディ・ジョーンズの少年期編で、彼を演じたリバー・フェニックスです。
 『スタンド・バイ・ミー』や、本コーナーでも紹介した『スニーカーズ』に出演し、23才で急逝した美青年俳優です。
 彼が本作冒頭で大冒険する姿を存分に見れるところもまた、本作の大きな魅力なのです。
 あと、現在『JOKER/ジョーカー』などあらゆる映画で活躍している売れっ子俳優ホアキン・フェニックスのお兄ちゃんでもあります。


 またシリーズ第一作『レイダース』から、後に『ロードオブザリング』で人気キャラのドワーフのギムリを演じるジョン・リス=デイヴィスが出演しております。


 うむ! ハリソン・フォードとショーン・コネリーを中心に、実力派揃いの脇役を据えた攻守ともに優れたキャスティングな印象!



 そんな本作、筆者が幼き日に初めて自発的に見に行った映画の一つです。
 本作に前後して、筆者の映画館通いが始まったと言っていいでしょう。
 それくらい本作は面白く、世間でもドカンと大ヒットしたわけです、それも予算の10倍くらいの売り上げで。




 しかして、本作は何がそこまで受けたのでしょうか?

 例によってそれを語ってみたいのですが、だいたいいつも通り、全てのパタメータがハイレベルだったから?で説明終わりたいくらいに、シナリオ、演技、アクション、音楽、特撮、編集の諸々がよく出来ており、ヒットして当然と思えてしまいます。

 まずジョージ・ルーカス監督が考えた、1930年代に考古学者インディ・ジョーンズが、太古の遺物でありながら超常の存在を、それを悪用せんとする勢力と争いながら、大冒険する……というアイディアが素晴らしく、それをハリソン・フォードが演じ、ジョン・ウィリアムズが音楽を奏で、スピルバーグが監督している時点で、この映画シリーズの勝利は半ば約束されたようなもんな気がします。


 そして本作の場合は、プロローグでのアメリカはユタ州の荒野、イタリアの水の都ベネツィア、オーストリアからドイツを縦断し、最後はトルコの砂漠と……様々に変わる世界の景色を背景に大冒険を繰り広げるところが素晴らしいのであります。
 現地人にとっては迷惑かもしれませんが……。


 そんな世界各地を巡り、インディ達が探し求めるのはキリストの聖杯です。
 日本人たる筆者には、今一つピンと来ませんが、向こうの文化圏でははかり知れない価値のある遺物です。
 問題は、その聖杯に宿る超常の力の存在を信じ、欲する輩がいることです。

 毎度インディが、その神秘の力を欲する輩と対決する羽目になるのですが、本作でもその過程で生ずるアクションの数々が素晴らしいのです。

 今回はサーカス団の一座を運ぶ列車や、ベネツィアでのボートチェイス、オーストリアでのバイクチェイスに、レシプロ戦闘機での空中戦と、実にバラエティ豊か!
 中でも筆者が好きなのは、なんといっても終盤のアレとの戦いです!
 実にインディ・ジョーンズらしく、1930年代末という設定を活かした巨大な敵と、インディはスピルバーグ節全開でバトルするところが筆者は大好きなのですが、そのアレが何なのかは、万が一本作未見で知らない方がおりましたら、どうかその目でご確認下さい。




 ……とかナントカなどと、色々語って来ましたが、筆者的に本作の最大の魅力は別にあります。
 その本作最大の魅力とは! ズバリ、ショーン・コネリー演ずる父ヘンリー・ジョーンズとインディとの丁々発止の親子漫才かのような掛け合いです。
 大概のことは腕っぷしで解決できるインディですが、パパにだけは頭が上がらず、その一方で、荒事世界とは縁の無い考古学者の父ヘンリーは、襲い来る窮地に対し危機感の無いノンキなお方でして、そんなインディとヘンリーとの掛け合いが、本作ではアクションの合間合間に完全なコメディとして差し込まれ、本作をハラハラドキドキなだけでなくコメディと言えるほどまでにしているのです。

 そしてその掛け合いの中で、父と子の絆や親子あるあるのようなもんが描かれているところが、他のインディ・ジョーンズシリーズには無い魅力なのではないでしょうか?

 それは、双方を演じた二人の俳優の名演もさることながら、親子関係については格別の思い入れがある(映画『フェイブルマンズ』参照)スピルバーグ監督の、名演出と悪ふざけ寸前のコメディセンスの成せる技な気がします。

 ちなみに筆者が本作で一番好きなシーンは、本作後半で、敵の戦闘機にジョーンズ親子が襲われた際に、成すすべの無くなったインディに対し、父ヘンリーがアッと驚く方法で窮地を脱するところ。
 未見の方はどうかその目でご確認下さい!






 さてここでいつものトリビア!

 ジョーンズ親子を演じたハリソン・フォードとショーン・コネリーは、12才しか年齢は違わない。

 作中でインディの本名はヘンリー・ジョーン・ジュニアであり、“インディ”は飼い犬の名からつけられたことが判明するが、キャラクター名としての“インディ”の名の由来は、プロデュースしたジョージ・ルーカスが昔飼っていた犬の名前から。

 飛行船の客室でジョーンズ親子が語らうシーンの撮影は、現場がとても暑かった為、上半身しか映らないカットでショーン・コネリーは、汗をかかないようズボンを脱いで撮影してたんだって。


 ……ってなわけで『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』もし未見ならオススメですぜ!!