映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるという、めっちゃコスパの良いエンタメ……。
これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍以後の現代社会において、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。
▼『映画を語れてと言われても』

第二七六回『シャンチー? ……違う違うシャァンチー! 違う違うShang-Chi! 違う違う……“シャン・チー:テンリングスの伝説”』
『シャン・チー:テンリングスの伝説』
2021年公開
監督・脚本:デスティン・ダニエル・クレットン
プロデューサー:ケヴィン・ファイギ
出演:シム・リウ オークワフィナ ベネディクト・ウォン ベン・キングズレー ミシェル・ヨー トニー・レオン
あらすじ
はるか千年の昔……一人の男が永遠の命と不思議な力を授ける謎の10個の腕輪を手に入れ、その力を用いて人を支配し、歯向かう者を蹴散らし、テンリングスと名のって闇の組織を作り、歴史の裏で暗躍し続けた……。
そして20世紀末のある時、さらなる究極の武術を求め、謎の力を秘めたといわれる伝説の国ターローを探し求めたテン・リングスことシェンウー(演:トニー・レオン)は、捜索の末そのターローへの入口付近までたどり着いたものの、ターロー入口の番人であったシェンウーに匹敵する類まれな武術の使い手の女性イン・リーと出会い、戦いの末に……恋に落ち、夫婦となり、息子と娘をもうけるのであった。
それからおよそ30年後……。
アメリカはサンフランシスコの高級ホテルでは、配車係の青年シャンチー(演:シム・リウ)が、同僚にして親友のケイティ(演:オークワフィナ)とつるみながら、日々変わらぬ生活を送っていた……はずだった。
ある朝、ケイティと共に乗っていた通勤バスの車内で、シャンチーは突然謎の悪漢どもに襲われる。
が、類まれなカンフーの腕でこれを撃退するシャンチー。
実はシャンチーこそがシェンウーとイン・リーの間に生まれた息子であり、幼き日に母が父の敵によって殺されたことが切っ掛けとなって、父により幼い時から殺し屋としての猛訓練を施されたものの、殺し屋になるのを拒否してアメリカへと出奔した身であったのだ。
襲ってきた男たちが父の手下であったことから、シャンチーは同じように家を出た妹のシャーリンが狙われていると考え、彼女を守るべくシャーリンのいるマカオへと向かおうとするが、それに事情を聞かされたケイティもまた、強引に同行するのであった……。
しかしてマカオのとある建築途中の高層ビルへと向かったシャンチーとケイティは、見違える程成長し、変わり果てた妹シャーリンと再開を果たす。
と、同時にシェンウーの追っ手達もまた、彼らに迫っていたのであった。
はたしてシャンチー達の運命やいかに!? そしてシェンウーの目的とは!?
さて今回は2026年9月末の本文章執筆現在、にわかに活気づきつつあるMCU映画の一作にして、珠玉のカンフーの妙技が炸裂し、さらに……〇〇〇〇にまでなっちゃう一本について語りたいと思います!
その作品とは『シャン・チー:テンリングスの伝説』、MCU映画ということは、当然原作コミックがあるわけですが、残念ながら筆者はその原作コミックを存じておりません。
聞くところによると、ブルース・リーがブームになった頃に生み出されたカンフーも達人キャラで、キャプテン・アメリカのスパーリング相手になるくらいの実力の持ち主……と言うと凄さが伝わる人には伝わるかもしません。
とはいえ、どう考えてもマイナーな(失礼!)原作コミックである『シャン・チー』を、名作多きMCU映画が一本として撮った監督は、デスティン・ダニエル・クレットンってお方。
筆者の知ってる映画では、マイケル・B・ジョーダン主演の黒人差別裁判映画の『黒人の黒い司法 0%からの奇跡』なんかを撮ったお方。
まったくアクションともSFともファンタジーともアメコミとも関係ない映画を撮ってた監督です。
それが何故にMCU映画を撮る監督に抜擢されたのかは分りませんが……ともかく、同監督が本作の後に撮ったのは、2026年9月末現在、ド派手に大ヒットをかっ飛ばした『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』であると知れば、その実力に対する疑問は氷塊するってもんでしょう!
そして出演者達は!?
主人公シャン・チー役にシム・リウ。
カナダで売れない役者として、様々なドラマや広告に出演しつつ本作のオーディションを受けでシャン・チー役を射止め、猛烈なカンフーの特訓末にシャン・チー役を演じきったシンデレラボーイです!
本作後は『バービー』『ラストブレス』『ジャックポット!』などなど、数々の出演作で着実にキャリアを積んでおります。
その役者としての魅力は、カンフーの腕前はもちろんですが、その地に足のついたフツーさな気がします。
そのフツーさが、とんでもない事は巻き起こるMCU世界ではとても特別なのです。
そしてそのシャン・チーの盟友にして相棒のケイティ役にオークワフィナ。
本コーナーでいえばニコラス・ケイジ&ニコラス・ホルト主演の吸血鬼コメディ『レンフィールド』の勇敢な婦警や、『ジュマンジ』『オーシャンズ8』の他、前述した命がけの宝くじ争奪アクションコメディ『ジャックポット!』ではシム・リウと共演しております。
関西の陽気なおっかさんみたいな女優さんで、彼女とシム・リウとの軽妙な掛け合いが、本作のムードの形成に大いに役立っていると思うのです。
さらに、シャン・チーの父にして、神秘の力を発揮する謎の腕輪の使い手テンリングスにして、その力よって統べる闇の組織の長、シェンウー役にトニー・レオン。
本コーナーで言えば『ハードボイルド:新・男達の挽歌』や『インファナルアフェア』シリーズで有名な超絶イケオジです。
彼が出演してる時点で本作は勝ったも同然です!
さらに、アカデミー俳優のミシェール・ヨーとベン・キングスレーと、なかなかに豪華なキャストで脇が固められております!
そんな本作が公開されたのは2021年、2019年公開のMCUの集大成映画『アベンジャーズ:エンドゲーム』の後に作られ、なおかつ、続編ではなく、新たなヒーロ誕生を描いた“オリジン”映画が一つとしてです。
と、同時に……あのコロナ禍の過ぎ去りし直前に公開された映画でもありました。
正直なところ、公開前の評判はあまり芳しくなく、筆者もMCU映画だから見るけど、過度な期待はしていませんでした。
だって知らないヒーロー、知らない主演俳優でしたから!
しかし、いざ公開してみると、コロナ禍の最中にも関らず思いの他の大ヒットとなり、見にいった筆者も大いに満足したわけです。
しかしてそれは何故だったのか!?
毎度の事ながら、このレベルで大ヒットする大抵の映画がそうであるように、本作もまた、脚本、キャスト、映像、ロケ地、撮影、セット、VFX、スタント、キャストの熱演などなど、全てのパラメータがハイレベルだったのです。
公開前の低かった期待値さえも、予想外の喜びの要因となったかもしれません。
中でも、筆者が個人的に良かった点を上げるならば……。
まず、本作のヴィランたるテン・リングス/シェンウー役のトニー・レオンがかっこええ!!
若い頃からハンサムなお方でしたが、今はそれに渋みが加わり、その悲しみをたたえたような表情芝居が、今回演じるシェンウーというキャラと相まって、より哀愁を称えているだけでなく、本作では彼のカンフーの妙技が見れるのです!
逆に言うと、今後またトニー・レオン出さないと、本作の続編が作られる場合は相当な戦力不足ということに……。
あと指抜きグローブが超似合うおじさんです!!
さらに、カンフー映画としての本作のクオリティもパないのです。
本家香港映画のカンフーアクション映像にも勝るとも劣らぬ映像が見れたことに、初観賞時筆者は大いに驚いたものです。
それは無理矢理例えるならば、空中に見えないレールがひかれているかのように、正確で、かつ迫力とアイディアに溢れたカンフーアクション映像なのです!
また、サンフランシスコを走行中の通勤バス車内、建築途中の高層ビルの足場など、手を変え品を変え、バラエティ溢れるプレイスでのカンフーバトルに挑戦しているところも素晴らしい!
そしてもちろん、脚本も自ら書いた監督たるデスティン・ダニエル・クレットンのお仕事も素晴らしいのです。
回想シーンと、アクションパートと、コメディパートを適度に挟みながら、MCU名物の父との諍い話と、この世界に迫る恐るべき危機を、怖ろしく滑らかなテンポでバランス良く描き切り、見事なエンタメとしているのは、これが初のアクション大作映画監督とは思えぬほど。
勢い余ってクライマックスではカンフー映画だったはずのジャンルが、大○○映画にヌルッとスライドしちゃうのはご愛敬です!
そりゃ『スパイダーマン』の監督も任されるってもんです。
最後に筆者が付けくわえておきたい本作の魅力を挙げるならば、それは主演のシム・リウの奮闘です。
カナダ在住の売れない役者だった彼ですが、まぁ、控えめに言ってもビジュアルに華の無いお方であり、公開前の段階ではまったく惹かれるものは無かったのですが、撮影までの猛特訓と奮闘で見せるカンフーの妙技と、芝居の中に見える彼の実にフツーの人柄が良いのです。
その彼の人としてフツーさが、物語の決着にとても説得力を与えている気がするのです
(あと吹き替えの細谷佳正氏の名演となじみ具合!!)
はたして、無名俳優だった彼が、本作でいかなる活躍をするのか? 本作未見の方はどうかその目でご確認下さい!
さてここでいつものトリビア。
アメリカ製作のTVドラマや映画は、ロケ予算が安く済むカナダでよく撮影されることがあり、カナダ在住のシム・リウは、ちょいちょいそのカナダ撮影のドラマで、エキストラよりもちょい出番の多い役なんかで出演歴が多々あるそうです。
筆者が見た中では、アマプラ製宇宙SFドラマ『エクスパンス:巨獣めざめる』のシーズン3で、見覚えのある顔の男が酷い目に合ってビックリしましたよ!!
……ってなわけで『シャン・チー:テンリングスの伝説』もし未見ならオススメですぜ!!




















