映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。
▼『映画を語れてと言われても』
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第一六五回『俺は“コンスタンティン”‥‥‥ジョン・コンスタンティンだクソったれ!』
2005年公開
監督:フランシス・ローレンス監督
原作:ジェイミー・デラノ ガース・エニス
出演:キアヌ・リーブス レイチェル・ワイズ ティルダ・スィントン シャイア・ラブーフ ジャイモン・フンスゥ プルイット・テイラー・ヴィンス ピーター・ストーメア他
あらすじ
‥‥‥この世には‥‥‥天国より来たる天使と、地獄より来たる悪魔が、ハーフブリードと呼ばれる人間の姿で活動し、人間を影ながら支援し、あるいは操ることで、いわゆる代理戦争がおこなわれていた‥‥‥。
アメリカ・ロサンゼルス‥‥‥。
悪魔祓い志望の助手のタクシー運転手チャズ(演:シャイア・ラブーフ)を足代わりにして、悪魔祓いを生業としているジョン・コンスタンティン(演・キアヌ・リーヴス)は、同業者のヘネシー神父(演:プルイット・テイラー・ヴィンス)の頼みで、ある移民一家の少女に憑りついた悪魔を払った案件から、地獄で何かしらの異変を生じていることを察知する。
その一方で、体調不良から医師の診断を受けたところ、末期の肺がんであり、余命幾ばくもないことを宣告されてしまう。
この事態にコンスタンティンは、天国から人の姿で地上に来ていた知古の天使ガブリエル(演:ティルダ・スィントン)の元を尋ねて助けを請うが、コンスタンティンの過去の数々の所業による因果応報だと、ガブリエルにすげなく断られてしまう。
自殺未遂経験があるため天国には行けず、死ねば散々自分が払ってきた悪魔達が待つ地獄行き待っていることに憤るコンスタンティン。
その少し前、ロス市警の刑事アンジェラ(演:レイチェル・ワイズ)は、精神病院に入院していた双子の妹イザベルが、飛び降り自殺したとの報に衝撃を受ける。
なぜなら妹は敬虔なクリスチャンであり、自殺すれば地獄行きとなるのに自死を選ぶとは思えなかったからだ。
アンジェラは自殺直前の妹をとらえた病院の監視カメラ映像から、彼女が最後に『コンスタンティン』と呟いていることを発見し、悪魔祓いのジョン・コンスタンティンに行きつき、彼とイザベルの自殺に関係があると睨み彼を尋ねる。
かくして、迫る死の運命に憤るコンスタンティンの元に現れたアンジェラ。
そんな彼女に、今それどころではないコンスタンティンは知ったこっちゃないと一時は突き放すが、アンジェラが〈タロン〉と呼ばれる悪魔に狙われていることに気づいたコンスタンティンは、悪魔祓いの技術これを撃退しアンジェラの話を信じる。
そしてイザベルの死の真相をしるべく、悪魔祓いの術を使い、自殺の罪で地獄に落ちた彼女に会いに行ったコンスタンティンは、確かに彼女が自ら命を絶ったことを確認すると同時に、イザベルが手首に巻いていた入院患者用タグを持ち帰ることで、アンジェラの信用を得る‥‥‥と同時に、イザベルの死が先刻の移民一家の悪魔祓いで感じた異常と関係があると睨む。
それに並行し、コンスタンティンの頼みでイザベルの遺体を調べていたヘネシー神父が不可解な死をとげる。
コンスタンティンとアンジェラは、ヘネシーの死が悪魔の仕業であり、彼の残したダイイングメッセージから、「コリント書17章1節」というワードに行きつく。
本来の聖書にはコリント書に17章は存在しないが、地獄の聖書のコリント書には17章以降が存在し、それによれば、悪魔の王ルシファーの息子マモンが、地獄よりこの世界に現れようとしているらしかった。
もちろんそれが実現すれば人類の世界は地獄と化してしまう。
はたしてコンスタンティンとアンジェラは、この悪魔の企みを阻止することが出来るのであろうか?
さて今回は、みんな大好きキアヌ・リーヴス主演でお送りする、天使と悪魔のロクでもない争いに、ロクでもない手段で対抗するロクでもない男を描いた、DCコミックス原作のオカルト・ハードボイルド映画について語りたいと思います。
監督はフランシス・ローレンスというお人。
吸血鬼モドキに変異するウィルスが蔓延した世界で、ただ一人生き残ったウィル・スミスが奮闘する映画『アイアムレジェンド』や、各地区より選出された十代の若者が、殺し合いゲームい強制参加させられる『ハンガーゲーム』シリーズの監督で有名なお方です。
その監督としての特色は、VFXを駆使して描かれたダークな世界を映像で表現し、そこで東奔西走するキャラのドラマをドッシリと描くところ(筆者調べ)。
本作でも、天使と悪魔、天国と地獄、そして人間界の様子をVFX技術などの映像テクニックで見事に映像化しつつ、超クセつよなコンスタンティンをはじめとするキャラ達のドラマを見事に描いております。
で、原作は前述したように『バットマン』や『スーパーマン』などを出版したDCコミックスから刊行されていた『ヘルブレイザー』というタイトルのアメコミです。
つまり本作は、バットマンやスーパーマンなど肩を並べるオカルト界でのアメコミヒーローなのです。
なお原作ではブロンドで刑事コロンボ的なトレンチコートがトレードマークなコンスタンティンですが、本作ではキアヌ・リーヴスのビジュアルに合わせてアレンジされております。
後年になってこの原作準拠版の『コンスタンティン』が、実写アメコミヒーローブームの波にのって実写ドラマ化され、一部のDCユニバースのアメコミヒーローとクロスオーバーして共闘したりしてます。
で、主演はご存知キアヌ・リーヴス。
本コーナーでいえば『マトリックス』や『ジョン・ウィック』の主演をした他、『スピード』や『ビルとテッド』シリーズで有名なTheハリウッド・スターの一人です。
本作では性格の捻くれたずる賢い悪魔祓いを、太々しく演じております。
共演は、死んだ双子の妹の真相を究明すべく、コンスタンティンと手を組む刑事アンジェラ役にレイチェル・ワイズ。
20世紀初頭を舞台に、エジプトで蘇ったミイラ〈イムホテップ〉の大騒動を描いた『ハムナプトラ』シリーズや、第二次大戦中の独ソ戦で行われた狙撃兵の戦いを描いた『スターリングラード』のヒロイン等で有名な女優さんです。
地上に降りてきているハーフブリードの天使ガブリエル役にはティルダ・スィントン。
イギリスの名家出身の年齢不詳の美魔女女優です。
色んな映画に出まくっていますが、『ドクター・ストレンジ』でのエンシェント・ワン役なんかが筆者的には印象深いお方。
ともかく浮世離れした雰囲気の女優さんで、人ならざる天使役にピッタリです。
さらにコンスタンティンが便利にこき使う助手のチャズ役にシャイア・ラブーフ。
本コーナーで言えば『トランスフォーマー』で主演した他、『アイ・ロボット』でも主人公に絡むチャラい若者を演じた子役出身俳優です。
本作での意外な活躍で、彼のキャラが好きになった人も多いと思います。
またコンスタンティンと同業者のヘネシー神父役に、先日本コーナーで紹介した『海の上のピアニスト』で好演したプルイット・テイラー・ヴィンス。
本作でもコンスタンティンを絶妙にアシストする良いキャラを好演しております。
そんなコンスタンティンが通う、天使と悪魔との中立地帯になっているクラブのオーナー、パパ・ミッドナイト役にジャイモン・フンスー。
本コーナーで言えば、MCU映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で出演した他、『アミスタッド』『ザ・グリード』『グラディエーター』『ブラッド・ダイヤモンド』『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』『キングスマン:ファースト・エージェント』
などなど、ここ30年のあらゆる大作・話題作に出演している名脇役俳優です。
そして忘れちゃならない本作の黒ラスボス(?)的ポジションの元天使な悪魔の親分ルシファー役にピーター・ストーメア。
ブルース・ウィリス主演マイケル・ベイ監督の隕石落下デザスター映画『アルマゲドン』でのロシア人宇宙飛行士や、『ジョン・ウィック2』の冒頭で、バカな甥っ子のせいで組織を半壊させられるロシアンマフィアのボス役の他、人気刑務所脱獄ドラマ『プリズン・ブレイク』での人気キャラ、ジョン・アブルッチ役などが有名な性格俳優です。
本作では最後に一番オイシイとこを持って行きます。
あと隠しキャラとして、トム・クルーズ主演『ミッションインポッシブル』シリーズで、一時期主人公の妻役だったブリジット・モナハンが出てます。
‥‥‥ってなわけで本作のキャスト、分かる人にはと~っても曲者揃い。
まぁ天使役と悪魔役が混ざってるんで、当然っちゃ当然なんですけどね!
そんなスタッフ・キャストでお送りする本作は、世間では特大ヒットというよりは、そこそこヒットはヒットしましたが、大いに儲かったとは言えない売り上げの様子。
しかし、本作はいわゆるカルト的な人気作として、キアヌ・リーヴス主演作品の代表作の一つとして、『マトリックス』や『ジョン・ウィック』と並んで数え上げられる作品なのです。
‥‥‥例によってその『コンスタンティン』の魅力を、筆者なりにあげるならば、それは三つ。
まず一つめは独特の世界観です。
あらすじ冒頭に説明したように、本作の世界では、天使と悪魔が人間を使って代理戦争をしているという設定です。
この時点ですでにロクでもない世界観ですが、他人事として見る分には興味深い世界です。
この映画では、天国と地獄の両陣営からやってきた天使と悪魔が、人間に囁いたり誘惑したりして、善行あるいは悪行をはたらかせ、世界の善と悪のバラスを傾けようとしているそうです。
その人間界に降りて活動しているハーフブリードと呼ばれる天使と悪魔は、霊感ある人にしか人間と見分けがつかないので、普通の人々は天使と悪魔の戦争に気づかないまま生きてるわけです。
そして悪魔側は、悪魔なだけに時々ルールを破って人間界で悪さをするため、そいつらを退治すべく、霊感をもった人間が悪魔祓いをして追っ払っている‥‥‥という世界観なのです。
それを上手いこと映像化しているところが、この映画の魅力の一つではないでしょうか。
ついでい言えば、キリスト教的な世界観なので、悪魔の親分がルシファーで天使がガブリエルだったり、自殺した人間は地獄行きといったルールがあります。
そして聖書にある黙示録的終末を阻止するのが本作のタスクとなるわけです。
う~ん筆者がこれまでやってきたアレもコレも‥‥‥全部悪魔の仕業だったんだな!
二つ目は、魅力的な悪魔祓いアイテムの数々です。
悪魔祓いの人間は、霊感があったり多少の魔法めいたことが出来るものの、基本的なフィジカルは人間なので、人ならざる悪魔には腕っぷしでは対抗できません。
そこで数々の悪魔祓いアイテムを駆使する分けですが、本作はそれらがユニークで良いのです。
いかにも悪魔に効果ありそうな十字架や聖水なんかは序の口で、〈ドラゴンの息〉なる謎の火炎放射器や、〈悪魔の棲む家のキ~キ~虫〉という悪魔が嫌いな鳴き声を出す虫の入った小箱、死刑執行に使われた電気椅子を利用した悪魔探知装置。
そしてなんといっても聖なる十字架を鋳溶かして作った聖なるメリケンサック! 様々な聖遺物を組み上げると完成する聖なるショットガン!
もう『聖なる‥‥‥』と付けとけば何でも許されるだろうと思ってそうです!
バットマンの〈バット○○〇〉みたいなノリを感じないこともありません。
しかしこの〈聖なる○○〉で悪い悪魔どもをぶっ飛ばす武闘派悪魔払いっぷりが清々しいのです。
そして三つ目の理由は‥‥‥。
ズバリ、キアヌ演じるコンスタンティンというキャラそのものの魅力ではないでしょうか?
今回キアヌ・リーヴスが演じるジョン・コンスタンティンは、たまたま霊感を持って生まれたが為に見えなくて良いものが見え、それが原因で自殺未遂した結果、ますます高まった霊感で天使と悪魔の人間を使った代理戦争を知ってしまった上に、自殺未遂したがために、将来死んだ後で地獄行きが決定してしまったという大変運の無い人。
なんとか地獄行きを避け、天国に行く為の点数稼ぎとして悪魔祓いという善行を行っているという‥‥‥なんというか凄く利己的な人です。
ですがそこが筆者は気に入っているのです。
世の中、正義の為と言いながら人に迷惑をかける人と、自分の為と言いながら人の助けとなる行いをする人がいたならば、後者の方が百倍マシですからね。
コンスタンティンの場合、単にツンデレ的に自分の為に悪魔祓いしてると言いそうですが‥‥‥。
そしてそんなコンスタンティンの悪魔との立ち向かい方が良いのです。
基本霊感があるだけのコンスタンティンは、前述した数々の悪魔祓いアイテムを駆使するわけですが、武器はそれだけではありません。
コンスタンティンには、人間ながらにして悪魔と渡り合えるだけの武器がまだあります。
それは〈経験値〉と〈ずる賢さ〉です。
本作が良い映画と言えるのは、その〈経験値〉と〈ずる賢さ〉で巨悪と立ち向かう別ジャンルの映画を踏襲しているからな気がします。
そのジャンルとは、いわゆる『ハードボイルド』系作品です。
(※ここで本コーナーで紹介してきた映画から『ハードボイルド』に該当する作品をあげたいところですが‥‥‥嗚呼『ビッグ・リボウスキ』しか無い!)
ここで言う『ハードボイルド』系作品とは、筆者なりに言うならば、それは時代において行かれ気味の私立探偵が、運の悪さと過去のしがらみから巨大な陰謀に巻き込まれてしまう系の作品です。
そういった作品で主人公の武器となるのもまた〈経験値〉と〈ずる賢さ〉であり、本作はその『ハードボイルド』系作品を天使と悪魔の代理戦争のただ中のオカルト作品として描いたところが魅力と思うのです。
そしてキアヌ・リーヴス演じるコンスタンティンの〈経験値〉と〈ずる賢さ〉は、時に人ならざる天使や悪魔を出し抜くレベルであり、それが痛快なのです。
はたしてコンスタンティンはいかにして、人間界を悪魔の企みから守るのでしょうか?
本作未見の方はどうかその目でご確認下さい!!
さてここでいつものトリビア。
本作では撮影こそされたものの、編集段階で登場シーンをまるっと削除されてしまったキャラがいます。
そのキャラこそが、前述したブリジット・モナハン演じるコンスタンティンのハーフブリードの(夜の)友人です。
編集段階でガン宣告されたコンスタンティンが、彼女と逢瀬を楽しんでいるのは緊張感を削ぐということでカットされてしまったそうです。
‥‥‥ですが映画内で彼女が映ったカットが一か所だけ残っています。
クライマックスで、ある事情でふりそそぐスプリンクラーを最初に浴びるキャラとして、その姿をアップで見ることができますよ。
‥‥‥ってなわけで『コンスタンティン』もし未見でしたらオススメですぜ!