やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

スパイダーマン=ピーター・パーカーの魅力は、自身の行動に自問自答する内省的な姿勢にある。今作もどの選択肢が最善なのか、自身の身体変化と並行して悩んでいく。そこに実態がわからぬ敵が彼に追い打ちをかける。この畳み掛ける前半部と、敵の正体が分かりさらに展開を深めていく後半部がスマートに繋がっていかない。このぶつ切り感は、おそらく長尺になりすぎて大幅なカット編集を余儀なくされた結果なのか。


ダメージコントロール局という官民連携組織の内部の横暴が露呈するところに現代社会の闇が垣間見られる。では何故権力側がギフテッドの人たちの人権を抑圧するのか、そこを深掘りしてこそ、今回の名台詞 "特別な力があるから愛されるのではない、その人自身だから愛されている" が活きてくる。これを "マイノリティの人びと" と変換すれば、今作がもっと面白くなる。


ヒーローや異端者は(マイノリティの人びとを含めて)注目と誹謗中傷の対象となる。でも後者は偏見から派生する差別であろう。人それぞれ違いはあるんだから、その個人を見つめてこそ平穏が訪れる。MJもスパイダーマンというヒーロー像ではなくピーター個人を見ようとする、だからまだ "あなたを知らない" と答える。これ、かなり良いテーマなので結末部がもう一息欲しい。それでもスパイダーマンは魅力ある。この力は偉大なり。

 

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在日コリアンの女の子ソヒは、朝鮮学校に通い、部活で朝鮮舞踊に邁進する日々を送る。ある日、公立学校との交流会で知り合った女学生とK-POPつながりで親しくなる。しかしその親密度ゆえに父親を裏切る行動を起こしてしまう。自身も在日コリアンである孫明雅(ソン ミョンア)の監督デビュー作。

 

在日コリアンの家族で繰り広げる騒動は、将軍様を信奉する親と日本人と共生できると自負する子の隔世が背景にある。そこに差別という言動は控えめなのだが、在日の人びとは差別されることを畏怖してどこかぎこちなさがあり、民族意識の濃淡は如実に現れてくる。ソヒはそんな時代錯誤に抗おうとするが、友人となった日本人の女学生との高揚感で父親が大切にしていた北朝鮮の勲章を無断でフリマサイトで売却する。その行為はソヒが忌み嫌っている差別に通底するのではないか。自身が嫌悪していた愚行に気づくのは、売却先の男性が見せるコレクションを目の当たりにした瞬間である。

 

うーむ、ここでもっとソヒを突き落とすような局面が欲しい。良い意味でも悪い意味でも "優しすぎる" のだ。もちろん世間で垣間見えるのは辛辣なヘイトばかりではない。孫明雅監督は無自覚な忌避や忖度、民族意識の無関心というソフトな日常を主軸に置いているのだろう。しかしここからソヒが父親に吐露するシーンにたどり着く。そこに至る彼女の心情を表出させる過程を明確にしないとカタルシスに届かない。

 

SNSで跋扈する分断ではなく、学校や甘味屋で触れ合う共生を主軸に置いた着眼点は、現代社会問題のステレオタイプに陥らない厳しさを訴えていて、その僅かなすれ違いを修復しようとする人びとを描く姿勢は好感持てる。父親が娘から授与したものは将軍様よりも誇らしいのだ。

 

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不動産ローン会社に全財産騙し取られたと怒り心頭のトニー(ビル・スカルスガルド)は当該ローン会社に押し入って社長の息子ディック(デイカー・モンゴメリー)を人質に立てこもる。トニーは謝罪と補償を要求するが、事態は一向に好転しない…

 

実話に基づく作品は数多あるが、今作は70年代当時の美術や衣装、楽曲センスがすこぶる良い。登場人物の造形に詰めの甘さを感じるも、犯人・トニーと人質・ディックの対峙に釘付けになる。そして事件の背景にあるのは世論を二分する資本主義の空虚さ、この騒動にメディア報道が加担する劇場型犯罪がそのまま作品の構成に繋がっている。ストップモーションを巧く使った場面が印象深い。最近パッとしなかったガス・ヴァン・サント監督、まだいけるよ。

 

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