やっぱり映画が好き -2ページ目

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

男女四人の無名俳優や元恋人が山小屋にこもって自主制作映画に取り組む。ホラー作品にする方針が決まって脚本に取り組む矢先、紙袋を被った不審人物に遭遇する。次第に奇怪な出来事が彼らを苛ませていく…2008年製作。U-NEXTにて配信中。

 

映画づくりにどのような熱量が派生するのか。それは趣向や妥協が交錯する集団作業が伴ってくる。そして虚構と現実の境界が曖昧になると、突発する言動が本来宿る物語のテーマへと向かう。途中、恋愛 or ホラー の選択肢で後者へと手綱を取って行き着いた先が前者へと転換する。この構成は見事。荒削りだが、ここに脚本・監督を担うジェイ&マーク・デュプラス兄弟の才覚を感じる。

 

虚構と現実。彼らが語る妄想は虚構を露わにする現実であり、虚構を構築する彼らは実存する。では虚構という範疇は、現実に付随するだけで限りなく狭小なのか、それとも無限に広がっていく幻想なのか。そのつかみどころの無さはそのまま人びとの営みに通じる。時間的にまだ語られない未来を指す言動は、当人にも分からないものだし、予知できないからこそ面白いのではないか。パーソナルな幻想とコモンな時空間、その結びつきがとても映画的表現に適している。

 

ホラー要素で進行する過程でその怖さが瓦解するとどうなるか。安心か、憤りか、その滑稽な状況に私たちは日常との密接な結びつきに気づく。感情の揺れ動きは微妙にセンシティブであり大胆。先述した恋愛要素への変化は、感情にホラー要素を含んでいるかもしれない。愛憎。という言葉は言い得て妙だと感じる。

 

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1990年代、独裁政権下のイラク。フセイン大統領の誕生日にケーキを作って祝うように各学校に通達がくる。主人公・ラミアが通う学校ではくじ引きによってその担当に自身が選ばれる。貧しい家庭で祖母とふたり暮らしのラミアは連れ立って買い出しに街へ向かうも祖母の思惑は厳しい現実を突きつけることになる。

 

政治が学校教育に介入すると、公権力のリーダーを無条件に崇める対象に仕立てあげてしまう。その権力者の誕生日を祝うケーキ作りの材料を求めて奔走するラミアの健気な表情に注目する。彼女は慎ましく生き抜こうとするのに、大人たちは彼女の真意を見つめようとしない。当時の政権は民から何を守ろうとしていたのか、そんな理念よりも自身の権力の座を守るために民を強いていたのではないか。時折天から聞こえるのは、神の声ではなく軍用機の爆音であることがその象徴となる。勇ましい言葉の陰で子どもたちは恐怖を覚え同調に与する。

 

政治の負の部分、怖さ、愚かさは日常に潜んでいて私たちが気づかないうちに生活へと侵食する。今作のテーマに通じるが、民が権力者を祝福するのは愚挙としか言いようがない。この間、ジュエリー〇〇賞を嬉々として受け取った日本の人がいるけどね。

 

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今年日本劇場公開された「決断するとき」のティム・ミーランツ監督とキリアン・マーフィー主演の作品。時系列的には今作が後になる。非行少年を更正に導く寄宿学校を舞台に校長スティーヴ(キリアン・マーフィー)や学校関係者たちの苦悩と奮闘の1日を描く。Netflixにて配信中。

 

絶え間ない生徒のトラブルに対処する教職者のメンタルヘルスは、職場の待遇や人手不足といった環境と密接に絡んでおり、学校運営がその課題に改善ではなく削減へ舵を切る無情が、スティーヴたちをさらに苛む。それでも生徒や職員に生きる希望が一縷でもあるならば、そこに身を寄せよう。明確な道標は提示しないが、笑顔に私たちは安堵する。怒りや悲しみよりもほんの少しでも優しさがあれば生きる価値はある。

 

この学舎は学力を伸ばす偏差値を重視するのではなく、育ってきた環境への振り返りや変化の模索を人間性の会得に繋げていく。そこに失敗や失望は伴うかもしれない。しかし生きる上で常に正しいことを歩むことは出来ない。どこかで間違っても素直に認める勇気が求められる。他人へ責任転嫁したりゴマカシや隠蔽は、不適切極まりない。不条理である。大人はその不条理を押し通そうとする。わきまえないで被害者ヅラする輩だっている。偉い人に多くいる。

 

私はここで奮闘する職員の "素直に認める勇気" "偽らない姿勢" に共感する。逃げない、隠さない、そして悩む、答えを模索する。結論は出なくても、その潔さは生徒にいつか伝わると信じる。言葉よりも何が大切なのか、スティーヴが追い求めるテーマは奥深い。

 

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