本棚を整理したら
こんなの出て来ましたので
ちょっと、お話しますね。
「スズキくん」の主人公は
小学5年生の海太君。
ざっくりお話。
日曜日の朝はやく
パパは東京湾に釣りに出かけた。
「晩ご飯は、お刺身とつみれ汁がいいわね」
ママがウキウキして言った。
この日、僕は野球の練習があり
家に帰って来たのは夕方だった。
するとキッチンの椅子に
パパがしょんぼり腰かけてた。
「パパね、お魚一匹も釣れなくて
それだけじゃないの、
海にケータイ落としちゃったんですって」
ママがまゆげをピクピクさせて言った。
「ひぇーっ」
その夜、僕は 海の底に沈んでる
パパのケータイのことばかり考えてた。
今あのケータイに電話をかけたら
どうなるのだろう・・・
そんなことを考えていたら
僕の頭の中は
東京湾の波の音でいっぱいになった。
僕は、勇気を出して
電話をかけてみることにした。
すると思った通り
「オ客様ハ電波ノ届カナイ場所に・・・」
というテープが流れてきて
やっぱりな、かかるはずないよ、海の中だもん、
と、受話器を置こうとした瞬間、
突然、「モシモシモシ」と 声がした。
「もしもし、もしもし!」
ドキドキしながら呼びかけると
「モシモシモシ・・・」
小さな子供の声だ。
「お、おまえは誰だ!」
するとむこうも真似して言った。
「オ、オマエハダレダ」
「オレは ノムラカイタだ、おまえは誰だ」
「オ、オレはセイゴだ」
「名字はなんだ」
「ミョージなんて知らないけど
大きくなったらスズキになるんだ」
「じゃあおまえは スズキセイゴだな」
「ウーン・・・ソウカナ」
なんだかヘンなチビだけど
僕はもっと話したくなった。
「セイゴはもう晩ご飯は食べたのか?」
「うん、貝とか小さな魚だよ」
「オレんちはアジのひらきさ、
ほんとは刺身のはずだったのに」
「ボク、アジのおじさんと仲良しなんだよ」
・・・やっぱりヘンテコなチビだ。
「あのね、ちょっと聞くけど、
セイゴのいるソコは どこなんだ?」
「ここは海ん中だよ」
「じゃあ、セイゴは・・・」
「あ、ボクもう行かなくっちゃ!」
「待てよ、セイゴ!」
「バイバイ、カイタ、ボクを忘れないでね!」
ザザン、ザザン・・・大きな波音がして
セイゴの声が かき消された。
「おーい、セイゴ!早く大きくなれよ!」
電話がプッツンと切れた。
僕はこのことを 誰かに話したくて
パパに話した。
パパなら
ちゃんと聞いてくれると思ったんだ。
「海太、これはロマンだぞ」
僕の話を真面目に聞いてくれたパパは
魚類大図鑑というやつを 持って来た。
「このスズキという魚は出世魚といって
成長する過程で名前が変わるんだ。
一番小さいのがセイゴ、少し大きくなるとフッコ
そして大人になるとスズキと呼ばれる」
小さなセイゴの体には
ぽちぽちと 黒い斑点がある。
その写真をじっとながめていたら
僕はなんだか 胸がいっぱいになった。
「でもこんな話、誰も信じないよね」
「パパが信じるさ。子供の世界には
不思議なことが起きるものさ。
パパは子供のころミミズと話したことがあるぞ」
「うわあ、ロマンだね、パパ!」
やっぱり僕は パパを尊敬する!
〇
まあ、お忙しいところ
長々と 読んでいただきましたが
このお話はね、
ジャスミンがはじめて 児童文学賞に挑戦して
最優秀賞をいただいた作品のあらすじです。
2000年のことだから もう26年も前になります。
そこで記念にと 自分で挿絵を描いて
10冊ほど小冊子を作ったら
知り合いの小学校の先生が
担任のクラスの児童に読ませ
全員に感想文を書いてもらったという
思い出の作品です。
「ぜんぜん面白くなかった」
「読んでソンした」
「魚が話せるわけないのに
これを書いた人はバカなのだと思う」
・・・・ストレートな感想もいっぱい💦
このお話のラストは
海太がママとスーパーに行ったとき
魚売り場に並んでいた
パックに入ったスズキを見て じ~んと来る・・
というところなのですが
感想の中に
ラストは涙が湧いてきました、
と、いう子が何人かいて
ここで、ジャスミンはじ~んと来ました。
先生が気を使って下さいました。
↓
おしまい





