ゆうべ見た映画

ゆうべ見た映画

懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

小学三年生だったと思うけど
お母さんに連れられて

歯医者さんに行くことになった。

家のすぐそばにも あるのに
お母さんは

駅の近くの歯医者さんに 私を連れて行った。

ちょっと待たされてから 

名前を呼ばれて
ふたりで診察室に入ろうとしたら

先生がふりむいて
「お母さんは外にいて」と言った。
それだけのことで 私は怖くなった。

診察台に腰かけると
「はい、うがいして」「口開けて」
それからいきなり 

機械でガリガリされて 半泣きになった。

私は丈夫だったので 
あまり病院に行った 経験もなく
歯医者さんも 

覚えている限り このときが初めてで
なにより、ひどい甘ったれだったので

お医者さんというのは みんな子供に優しくて
「はい、お口をアーンして」なんて
言ってくれるものだと 思っていた。

考えてみれば 三年生にもなって
お口をアーン、

なんて言ってくれるはずもない。

帰り際、先生に
「次からひとりで来なさい」
と言われて 私は涙がこぼれそうになった。

それからの毎日は お葬式のようだった。

歯はぜんぜん痛くないのに

何をしていても 

あの先生のむっつりした顔が浮かんだ。
 

あっという間に 次の診察日がやって来た。

診察券とお金を お母さんにもらって
家を出たけど
途中、空き地で遊んでる 子どもを眺めたり
本屋さんで立ち見をしたり してるうちに

私はどんどん、行きたくなくなって
とうとう行くのを止めて
もらったお金で 

駄菓子屋でお菓子を買って食べてしまった。

家へ帰って お母さんに訊かれて
もう、治ったと言ったら

本当に治ったような気がした。

それから、数日たって学校から帰ると
お母さんが鬼みたいな顔で
黙って私に 何かを差し出した。

私宛ての葉書きだった。
ひっくり返して読んだら

『前回の治療で

 あなたの削った歯にクスリを詰めたので
 そのままにしておくと

 クスリによって歯が腐ってしまいます。
 今度の月曜日にかならず来てください』

そんなようなことが 書いてあり
最後に
〇〇歯科・××先生より、とあって

その隣りに鉛筆で
可愛いネコの絵が 描いてあった。

 

あの怖い先生が描いた絵。


そのネコの絵を 見たとき

私は 

ほんとうに悪いことをしたと後悔した。

 

月曜日には もちろん行った。

 

はじめての時より 先生は優しかった・・・

なんてことはなかったけれど 

それから完治するまで ひとりで通った。

 

この医院には それからも何度か 

お世話になったかもしれない。

覚えてないけれど

私が結婚して この街を離れるときもあった。

 

治療に来ない子供に 葉書きをくれた先生。

 

この葉書きも 

ずっと本の間に挟んでおいたのに
いつのまにか 失くしてしまった。

 

私は今、家の近くの歯医者さんに 

歯石取りや 歯のチェックに 

40年来、ずっと通っている。

 

歯医者通いに 抵抗感なく通えるのは

あのときの 

ネコの葉書きのおかげかも・・と思ってる。

 

 

おしまい

 

この人、だあれだ ↓

 

 

 

ロッテンマイヤーさん