流離の翻訳者 青春のノスタルジア -41ページ目

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

日経新聞の1月3日朝刊のLOUIS VUITTONの広告ではないが、新年第一稿はカラフルにゆきたい。翻訳会社勤務時に送付していたメルマガから「色の名前を含む慣用句(イディオム)」を取り上げる。

 

日本語でも「赤っ恥」「青息吐息」など色を含む慣用句があるが、英語圏での「色」に対する感覚はやや異なるようだ。以下に例文を挙げて記載する。

 

 

 

1.・青

1) The company went into the red again.

「その会社はまた赤字になった

 

2) Let’s paint the town red tonight!

「今日は大いに飲もうじゃないか!」

 

3) While the police followed a red herring, they let the true criminal escape.

「警察が替え玉を追っている隙に、彼らは真犯人を逃がした。」

 

4) Official business is open to the charge of red tape.

「役所の事務は、とかく官僚的で面倒な手続きとなりがちである」

 

5) The boy was born with blue blood.

「その少年は名門の家に生まれた」

 

6) The news hit me like a bolt from the blue.

「その知らせは全くの寝耳に水だった」

 

7) She cried blue murder.

「彼女は金切り声をあげた」

 

8) That kind of chance comes once in a blue moon.

「そんなチャンスはめったに来るもんじゃないよ」

 

9) I am sorry for having said those things out of the blue last night.

「昨夜は突然にあんなことを言ってごめんね」

 

10) The president installed his true blue advisers to important posts.

「社長は自らの信頼できる側近を重要なポストに配置した」

 

 

2. 黄色・緑

1) That press is just a yellow journalism, don't believe what it says.

「あれはただの扇情的な雑誌に過ぎないから、何を言おうと信じることはないよ」

 

2) The suspect showed a yellow streak.

「その容疑者は臆病なところを見せた」

 

3) The students colored the excellent boy green with envy.

「生徒たちはその優秀な少年をとても羨ましがった

 

4) The grass is always greener on the other side of the fence.

隣の芝生は青い≪諺≫」

 

5) My grandmother had a green thumb (or had green fingers).

「私の祖母は園芸の才能があった」

 

 

3. ・黒

1) The politician had to make his name white about the bribery in the past.

「その政治家は過去の贈収賄について汚名を晴らさねばならなかった」

 

2) The event should be marked with a white stone.

「これは記念すべき出来事だ」

 

3) She told a white lie out of necessity.

「彼女は止むに止まれずたわいのない嘘をついた」

 

4) The hall became a white elephant although it cost the city a huge amount of money.

「市は莫大な費用を掛けてそのホールを建設したが、無用の長物となった」

 

5) The consultant blackmailed the director about his embezzlement.

「そのコンサルタントは横領をネタに部長を脅迫した

 

6) Those prisoners were transported to another jail in a Black Maria.

「あの囚人たちは護送車で別の刑務所に移送された」

 

7) The boy used to be a black sheep of the family.

「その少年はかつては家族の厄介者だった」

 

8) The bureaucrat proved that black was white.

「その官僚は黒を白と言いくるめた

 

9) The president succeeded in turning the company into the black.

「社長は会社の黒字転換に成功した」

 

 

4. 紫・ピンクグレー茶色

1) Finally, the youngest prince was raised to the purple.

「結局、最年少の王子が帝位に就いた

 

2) The poor girl married into the purple.

「その貧しい少女は玉の輿に乗った

 

3) Who goes a-mothering finds violets in the lane.

親をたずねて里帰りする者は、小径にすみれの花を見出す≪諺≫」

 

4) Then, my grandfather was quite in the pink of health.

「その時、祖父はとても元気だった」

 

5) He drank so much as to see pink elephants at the farewell party.

「彼は送別会で酩酊して幻覚を見るほどまで酒を飲んだ」

 

6) There was a gray area between personal and business expense in the report.

「その報告書には、個人支出か業務上の支出かはっきりしない曖昧な部分があった」

 

7) Reportedly, someone sent a graymail to the Press yesterday.

「報道によると、昨日何者かが政府機密を暴露するという脅迫文をマスコミに送ったとのことである」

 

8) That executive was surrounded by many brown nosers.

「あの取締役は多くのご機嫌取りたちに囲まれていた」

 

9) The hunter fired into the brown.

「その猟師は、鳥の群れに向かって手当たり次第に発砲した

 

昨年12月は来客も多く楽しい中で過ぎ去り、今日は晴天にも恵まれ穏やかな年明けとなりました。拙ブログの読者の皆様、2023年、新年明けましておめでとうございます。

 

昨年5月から「続・英語の散歩道」シリーズを掲載してまいりましたが、年頭からは「新・英語の散歩道」と題して引き続き英語・その他の記事を掲載していこうと考えております。本年も拙ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

 

また、本年が皆様にとって幸多き年となりますようお祈り申し上げます。

 

2023年1月1日

 

流離の翻訳者

 

 

「古書への旅」を始めて2か月。随分と心境が変わってきた。学生時代の不勉強を懺悔するかのような巡礼の旅である。

 

専門書の文章の中に心が浄化されてゆく心地がする。これからも果てしない旅路は続く。

 

 

今年最後の投稿は少し明るい曲で終わりたい。随分昔のCM曲だ。何故かしら心が癒される曲である。

 

今年は「地政学的リスク」という言葉をよく聞いた。米中の対立、ロシアのウクライナ侵攻によるリスクを指している。

 

本来「地政学」とは政治現象と地理的条件の関係を研究する学問のことで、主にドイツにおいて第一次大戦後の政治的関心と結びつき発展した。ナチスがこれを支持したらしい。

 

 

「地政学的リスク」とは、ある特定の地域が抱える政治的・軍事的な緊張の高まりが、地理的な位置関係により、その特定地域の経済、もしくは世界経済全体の先行きを不透明にするリスクのこと、をいう。

 

地政学的リスクが高まれば、地域紛争やテロへの懸念などにより、原油価格など商品市況の高騰、為替通貨の乱高下を招き、企業の投資活動や個人の消費者心理に悪影響を与える可能性がある、らしい。まさに現在の経済情勢に通じるものがある。

(以上、野村証券「証券用語解説集」より引用・一部改訂)

 

 

 

 

The geopolitical risk (GPR) index spiked around the Gulf War, after 9/11, during the 2003 Iraq invasion, during the 2014 Russia-Ukraine crisis, and after the Paris terrorist attacks. High geopolitical risk leads to a decline in real activity, lower stock returns, and movements in capital flows away from emerging economies and towards advanced economies. When we decompose the index into threats and acts components, the adverse effects of geopolitical risk are mostly driven by the threat of adverse geopolitical events. Extending our index back to 1900, geopolitical risk rose dramatically during the World War I and World War II, was elevated in the early 1980s, and has drifted upward since the beginning of the 21st century.

 

(拙・日本語訳)

地政学的リスク(GPR)指数は、湾岸戦争前後、9・11(アメリカ同時多発テロ)後、2003年のイラク侵攻中、2014年のロシア・ウクライナ危機中、およびパリ同時多発テロ後に急上昇した。高いGPRは、実質経済活動を低下させ、株式リターンを低下させ、また新興国から先進国への資本の移転を引き起こす。GPR指数を脅威と行動という構成要素に分解すると、GPRの悪影響が主に地政学上の好ましくない出来事の脅威により齎されることがわかる。本指数を1900年まで遡ると、GPRが第一次世界大戦と第二次世界大戦の間に劇的に上昇したこと、1980年代初頭にも上昇したこと、また21世紀初頭から上昇し続けていることがわかる。

 

 

クリスマス・イブの日に経済用語をまた一つ。

 

 

「グレートモデレーション(Great Moderation)」。世界経済の緩やかな成長とインフレ率の低位安定を背景に、株式や債券などの変動が小さく金融市場全体が安定していた時期のこと。一般的には、2000年代半ばから2008年のリーマン・ショック前までの数年間を指す。「大いなる安定」または「超安定化」とも呼ばれる。

(野村證券「証券用語解説集」より引用)

 

 

The Great Moderation is a period in the United States of America starting from the mid-1980s until at least 2007 characterized by the reduction in the volatility of business cycle fluctuations in developed nations compared with the decades before. It is believed to be caused by institutional and structural changes, particularly in central bank policies, in the second half of the twentieth century.

(Wikipediaより引用)

 

 

(拙・日本語訳)

グレートモデレーション」とはアメリカ合衆国における1980年代半ばから少なくとも2007年までの期間をいう。その期間は、先進国の景気変動のボラティリティが過去数十年と比べて低下したことに特徴づけられる。このボラティリティの低下は、20世紀後半の制度的および構造的な転換、特に中央銀行の政策の転換によって引き起こされたと考えられている。

 

 

 

 

日経新聞によれば、2022年、この「グレートモデレーション」が終焉を迎えたらしい。終焉の先には何が来るのか?

 

 

今年のクリスマスは寒波に見舞われるようで久々のホワイト・クリスマスが期待できそうである。

 

 

この時期、人は今年の訃報を振りかえり改めて故人の冥福を祈るらしい。俳優の古谷一行さんが亡くなったのが今年8月のことだった。

 

私の場合、古谷さんで記憶に残っているのは1977年から1978年にかけて放送されたテレビドラマの横溝正史「金田一耕助」シリーズである。古谷さんの渋い演技が印象深い。

 

 

また、このテレビドラマの主題歌が実に素晴らしかった。茶木みやこさんの「まぼろしの人」という曲である。淡々と歌う虚無的な暗いメロディが殺人事件にしっくり来ていた。

 

 

「まぼろしの人」 茶木みやこ

 

陽炎揺れる 名もない駅に

遠い汽笛の ゆらめきが

 

かすかな余韻を残す頃

見上げた空には

静けさが満ちていた

 

なのにこの同じ空の下

暗い思い出の残り火を

 

吹き消すように みじろいだ

あの人は幻だったのでしょうか

 

 

たわむれ遊ぶ 童の頬に

沈む夕陽の 輝きが

 

優しい翳りを映す頃

暮れなずむ街には

やすらぎが満ちていた

 

なのにこの同じ空の下

辛い出来事の結末を

 

呟くように ささやいた

あの人は幻だったのでしょうか

 

 

昔観た映画で強烈な印象に残っているものがありアマゾンでDVDを探して購入したのがもう数年前になる。

 

 

その映画は「追想」というものだ。1975年のフランス映画である。主演はフィリップ・ノワレとロミー・シュナイダー。

 

ナチスの兵隊に愛する娘を射殺され愛する妻(ロミー・シュナイダー)を凌辱され焼き殺された医師である夫(フィリップ・ノワレ)がナチスの兵隊を一人ずつ処刑してゆく。そんなストーリーである。

 

ナチスの兵隊に焼き殺された妻の死体のシーンがトラウマのように記憶に残っている。こんな時代だからこそ観ておくべき作品かも知れない。

 

 

 

 

 

 

「トラウマ映画館」(町田智浩著・集英社文庫)はそんな強烈な印象が残る映画を集めたものである。こちらも一読の価値がある。

 

今朝はこの冬一番の寒波に見舞われた。とにかく寒い!積もりそうな雪も降り始めた。そんな中また一つ歳を重ねた。

 

 

中野信子さんの「ペルソナ」を読み終えた。鋭い指摘に満ち溢れた書だった。断定的な文体が心に直接に響いてくる。現在の私の「古書への旅」にも通ずる印象的な一節を以下に記載する。

 

 

「学ぶことで損をすることはない。

あくせくと、誰かに勝つために、損をしないために必死で自分を追い立てるようにして勉強するのではなく、自分の世界を豊かにするために、もっと悠々と生きて、物事を楽しむために、余裕をつくるために学ぶのだ。

もし勝ち負けにこだわりたいというなら、学ぶことは誰かとの戦争などではなく、自分との戦いなのではないかと思う。

構造的に、受験戦争という形で学ぶことをやめたくなる自分を間接的に窘(たしな)めるような時代に生まれ、学ぶことを背中から支えてもらうような環境に居られたことは、私にとっては全くの僥倖(ぎょうこう)であったと思う。」

 

「ペルソナ」(中野信子著・講談社現代新書p.195)より引用

 

 

 

もう10年以上も昔のある冬の日。フリーランス翻訳の仕事に疲れ果てた私は車を走らせ気が付けば市内の商業施設「チャチャタウン」に来ていた。

 

平日の「チャチャタウン」は閑散としてた。ベンチに腰掛けてぼぉーっとしているとあるコンサートが始まった。その日男性ボーカルが歌った曲がブルー・コメッツの「マリアの泉」だった。聴いたことがある曲だったが歌詞も知らず随分懐かしく思えた。

 

「果てない旅は続くのか 幸せ求めて僕は行く マリアに祈りただ一人 ……」。当時のフリーランス翻訳者としての不安定な生活が思い起こされる。何かに救いを求めていたのか。翻訳者になって10年余りになるがどうにかここまでやって来られた。

 

 

 

 

懐かしい冬の日。以下はそんな冬の日を思い起こさせる曲である。

 

 

 

 

久しぶりに高速に乗って山口県の「一の俣温泉」へ向かった。途中初雪に遭遇した。12月の初雪は久しぶりのことだ。「一の俣温泉」のアルカリ性のヌルっとした泉質が好きだ。

 

 

露天風呂で打たせ湯に当たると肩の疲れが癒された。露天風呂に浸かっていると今日が赤穂浪士の「討入り」の日であることが思い起こされた。元禄15年(1702年)12月14日。320年も昔のことである。

 

 

2022年、今年の漢字は「戦」らしい。今年は「戦い」の年だったようだ。ロシア⇔ウクライナについても然り、ワールドカップについても然り。「来年こそ良い年に ……」と願わずにはおられない。

 

 

新春ワイド時代劇「大忠臣蔵」の放映は1989年1月2日。昭和64年という微妙なタイミングだった。あれからもう34年も経つのか。奥多摩の旅館で友人と観たことが思い起こされる。まさに光陰矢の如しである。