流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも

流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも

地方在住の翻訳者として9年目になりました。専門は法務・金融から工業技術・環境へと拡がりつつ気儘な英訳の独り旅を続けています。英語だけでなく漢詩・古典また音楽のことなど思うままに綴っています。どうぞお気軽にお越しください。

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梅雨になる前のほんの一瞬の初夏。今がまさにそんな時である。新緑に白い光が眩しい。昨日初蛍のニュースをやってたが、蓋し日本は美しい国である。

 

「春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」       持統天皇

 

(現代語訳)

いつの間にか春が過ぎて夏が来たようですね。あの天の香具山に白い衣が干されているのが見えていますよ。

 

(自作英訳紹介)

Spring seems to have passed and summer has come again, as white robes are spread to dry on Mt. Amano Kaguyama over there.

 

http://photonote.jp/images/20160524235415_24.jpg

 


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日差しは眩しいほどだが吹く風は強く冷たい。これが「青嵐(あおあらし)」と呼ばれるものだろう。GWの終わりを爽やかに吹き抜けてゆく。

 

誘われて「連句」というものを始めて半年程になる。歳時記を手許に置き風流を気取っている。俳句と短歌が混ざったようなものだが日本語の難しさを改めて知る機会となっている。

 

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そんな中「落花流水(らっかりゅうすい)」という熟語を知った。「落ちる花と流れる水」の意味だが、これが転じて以下の二つの異なる意味を持つようでなかなか奥深い。

 

①「落ちた花が水に従って流れる意で逝く春の景色。転じて、物事の衰えゆくことの譬え。時が空しく過ぎ去ることの譬え。」(「新明解四字熟語辞典」)

 

②「男女が互いに慕いあうことの譬え。落花は流水に身を任せ、流水は落花を浮べ流れたいと思うことから。」(「四字熟語図書館」)

 

ただ「落花流水」は中国語では③「人・事物が散々な目に遭う。こてんこてんに打ちのめされる。」という意味もあるようなので注意が必要である。

 

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今の季節は①がピッタリだが、個人的には②が趣深く最も好きだ。今度連句でも使ってみよう。

 

「落花情あれども流水意無し」

The love is one-sided.


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昨今国際情勢が何かと喧(かまびす)しい。新聞でも米・日・韓・朝・中・露に加えて英・仏も話題が豊富である。まるで世界大戦前夜のようである。

 

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かつて「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれた地域があった。バルカン半島である。「チャート式新世界史」(数研出版・第4刷1975年発行)の解説は以下の通りである。

 

「ヨーロッパの火薬庫」

バルカン半島は、ゲルマン系・スラブ系・アジア系の諸民族が入り混じって複雑な民族構成をとり、しかも19世紀後半からはトルコの弱体化によって、これら諸民族が独立運動を展開しており、それに列国の利害が結びついて国際対立の焦点となっていた。とくにロシアを中心とする汎スラブ主義とオーストリア・ドイツを中心とする汎ゲルマン主義とがここで激しい抗争を展開した。ベルリン会議(1878)でロシアの南下政策が一旦阻止されると、ロシアの主要な関心は極東に向けられ、バルカン問題も一時緩和された。しかし、日露戦争における敗北によって極東政策が挫折をきたすとロシアのバルカン方面への圧力が再び強まり事態は緊迫した。「ヨーロッパの火薬庫」と表現されたように、バルカン半島は今や民族主義と列強の帝国主義政策が入り乱れて一触即発の危機を孕む地域となり、やがて第一次世界大戦も、この地域における紛争を直接の発火点として勃発することになる。

 

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なお「一触即発」を英語では“touch-and-go”とか“tinderbox”などと表現するようである。

 

Relations between the two countries are strained to (the) breaking point.

「両国間の関係は一触即発の危機にある」

 

The whole Caribbean region was a tinderbox.

「カリブ海全域が一触即発の危険をはらんでいた」

 

これからも国際情勢から目が離せない。


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新聞を読んでいると今でも未知の熟語に出会う。今回は「弥縫(びほう)」という語である。これは東芝の第3四半期の決算発表に使用されていた。

 

監査意見「不表明」のまま提出したことを表現したもので、急場しのぎの「弥縫策」としか言いようがないと批判していた。

 

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「弥縫」とは「補い合わせること。失敗・欠点などを一時的に取り繕うこと。」(広辞苑)の意味である。60年近く生きてきて初めて知った語であった。

 

「弥縫」は和英辞典にも見出しがあり訳語には “patching up”, “temporizing”, “makeshift” 等が記載されていた。このうち “makeshift” のみ使用したことがあった。「間に合わせの」という意味の形容詞としてであった。

 

以下に定義・例文を記載しておく。

 

Makeshift:

Makeshift things are temporary and usually of poor quality, but they are used because there is nothing better available.

「間に合わせ品とは一時的なもので普通は品質が悪く、より良いものが入手できないために使用される。」

 

Temporize:

If you say that someone is temporizing, you mean that they keep doing unimportant things in order to delay something important such as making a decision or stating their real opinion.

「何かを決定する、または何かについて真の意見を表明する等重要なことの実施を遅らせる(時間稼ぎをする)ために、重要でないことを実施し続けること」

 

The government evacuated people from the disaster site to a makeshift shelter.

「政府は人々を災害現場から仮設避難所へ避難させた。」

 

The company disclosed the financial statement without a clean opinion as a temporizing measure.

「その会社は弥縫策として適正意見が付かない決算報告書を開示した。」


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昨今テレビで芸人などが「ディスる」という単語をよく口にしているが「ディスる」は英語の動詞 “disrespect” に由来するようである。

 

「ディスる」「侮辱する」の意味で使っているようだが英語の “disrespect” は普通は名詞で「軽視・軽蔑」の意味に使われあまり動詞としては使われないようである。

 

「侮辱する」であれば “insult” “feel contempt for” などの表現を使うのが普通である。英語を勉強されている方は覚えておいて欲しい。流行語は新語ではなく、いずれ使われなくなっていくものが殆どである。

 

He insulted me in public.

「彼は人前で私を侮辱した。」

 

I felt nothing but contempt for such behavior.

「そのような態度には軽蔑以外の何物も感じなかった。」

 

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これは新語ではないがケミストリー(“chemistry”「化学」以外の意味があることを先日の新聞で知った。『トランプ大統領と安倍首相にはケミストリーがある。』のように使う。

 

Chemistryの定義を確認してみる。英英辞典の3)にこんな定義があった。

 

Chemistry:

3) If you say that there is chemistry between two people, you mean that is obvious they are attracted to each other or like each other very much.

2人の人が互いにとても魅力を感じている、または互いにとても好きあっていることが明らかな場合に2人は相性が良い(ケミストリーがある)という。」

 

It seems difficult to establish a chemistry between those two famous musicians.

「あの有名な2人のミュージシャンの間に良好な関係を築くことは難しそうだ。」


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年度を越えてやっとコートを脱ぐことができたがまだまだ夜は冷える。所謂「花冷え」の時期になった。

 

今日が入社式のところが殆どだと思うが、入社式のことは今でも記憶に残っている。誂えたばかりのグレーのスーツにやや明るい紺のネクタイ。地元のデパートで両親が買ってくれた最後の衣服である。

 

我々の時代、リクルートは紺のスーツに赤のネクタイとほぼ決まっていたが、初めてのグレーのスーツはあまり私には似合ってはいなかったように思う。

 

あれから早や35年。今振り返れば長い道のりだったようにも、また一瞬だったようにも思う。人の人生とはそんなものである。

 

まあ、今日から社会人になった人もいるわけだから、あまりしんみりした話はやめてこんな歌は如何だろう。全ては今始まったばかりである。

 

https://www.youtube.com/watch?v=dEzgsHQ3N7E 


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2月から3月にかけて忙しい日々が続き全くブログに手がでなかった。その間、受験シーズンも酣(たけなわ)を越え、発表を控えもどかしい日々を送っている受験生も多いだろう。

 

今はネットで合格発表を行う大学も多く昔のような悲喜交々のシーンもあまり見られなくなったが、当時は私のような地方在住の受験生に対して合格電報というサービスを大概は志望校の大学生がアルバイトで行っていた。

 

この合格電報の合格・不合格の電文(当時は全てカタカナ)は大学によって特色があった。因みに以下のようなものがあったらしい。

 

北海道大学: 合→エルムは招く/否→津軽海峡波高し

秋田大学: 合→おばこ笑う・なまはげ歓迎する/否→おばこ一人寝飽きた

東北大学: 合→青葉萌ゆるおめでとう/否→陸奥(みちのく)の雪深し再起祈る

東京大学: 合→合格/否→桜散る

東京商船大学(現・東京海洋大学): 合→トラ・トラ・トラ/否→沈没

お茶の水女子大学: 合→お茶薫る/否→木の芽時待て

信州大学: 合→コマクサの花開く/否→信濃路は雪深し

金沢大学: 合→兼六園桜咲く/否→冬の能登の波高し再起期す

三重大学: 合→伊勢海老大漁/否→伊勢湾にて座礁

奈良教育大学: 合→天平の甍輝く・大仏喜ぶ/否→大仏の目に涙

京都大学: 合→合格おめでとう京大〇〇(学部名)/否→無念再起を期せ

九州大学: 合→合格おめでとう/否→玄海の波は荒かった

高知大学: 合→鯨が釣れた/否→竜馬の目に涙

長崎大学: 合→マリア微笑む・マリアの鐘が鳴る/否→雨の長崎・マリアの鐘鳴らず

鹿児島大学: 合→北辰輝く/否→桜島爆発せず

 

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もう40年ほど昔のことであるが、今でもこの時期になると当時の風物詩を思い出してノスタルジックな気分に浸る。

 

以下は私が大学に入学した年に流行った曲で今でも時々頭に浮かぶ。寮歌の旋律が哀しくも美しい。

 

https://www.youtube.com/watch?v=Xir6cC8m6qc&list=RDXir6cC8m6qc#t=14


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先週は冷え込んだが寒さも少し和らいだ。イベントの多かった一月は去り、今週末は早や立春である。

 

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「鼻白む」と書いてそのまま「はなじろむ」と読む。何度か見てきた語であるが読み方を調べずここまで来た。ありきたりの読み方にやや興ざめの感がある。

 

「鼻白む」「気おくれした顔つきをする」(広辞苑)という意味で、こんな状況に至った時に確かに鼻のあたりにむず痒さのような違和感を覚える。昔の人の観察力や表現力は実に鋭い。

 

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「鼻白む」を和英辞典で引いてみると“look embarrassed”, “be disappointed”と訳されていた。ネットで調べると“feel let down”, “feel ashamed”などの訳語もあるようである。

 

形容詞“embarrassed”の英英辞典の定義は以下の通りである。

 

Embarrassed:

A person who is embarrassed feels shy, ashamed, or guilty about something.

「人が何かについて尻込みする、恥ずかしいと思う、または罪の意識を感じること。」

 

以下に例文を掲載する。

 

The people present looked embarrassed at his risqué joke, which was quite inappropriate for the occasion.

「彼の場違いな品の悪い冗談に居合わせた人々は鼻白んだ。」

 

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“Embarrass”という語は以前から使い方が難しいと感じていたが「鼻白む」以外にも以下のように微妙な意味に使われるケースが多い。

 

I was deeply embarrassed to see my mother arrive at the hospital in a very short skirt.

「母親が超ミニスカートで病院に着いたのを見てとてもきまりが悪かった。」

 

I felt embarrassed by the excessive praise.

「大袈裟に褒められてくすぐったかった。」

 

It’s embarrassing to make a speech in public.

= I feel awkward when I make a speech in public.

「人前でスピーチするのは照れ臭い。」

 

He got embarrassed (= got flustered) when he attended a meeting where everyone else was a woman.

「彼は女性だけの会議に出て気後れした。」

 

There was a moment of embarrassed silence, then he laughed loudly.

「一瞬の気まずい沈黙の後、彼は高笑いした。」


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こちらは天候にも恵まれ穏やかな年越しとなりました。拙ブログの読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。

 

昨年もブログ更新の頻度は相変わらずの低調でしたが、漢詩の英訳など結構掲載できたかとも思っております。本年も拙ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

 

一方で仕事は波乱万丈の一年となり、変動する業績に一喜一憂する自分の弱さを思い知った年でもありました。そんな中、新しい分野の勉強を進めることができたことが唯一の収穫でした。

 

かかる情況を踏まえ、本年の書初めは以下の通りといたしました。

 

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「君子之学、非為通也、為窮而不困、憂而意不衰也、知禍福終始而心不惑也」 (『荀子』 宥坐編)

 

(書き下し文)

「君子の学は通ずるが為に非ず。窮(きゅう)するも困(くる)しまず、憂うるも意衰えず、禍福終始を知りて心惑わざるが為なり。」

 

(口語訳)

君子が勉強に励むのは、出世して高い地位を手に入れるためではない。困難にあってもたじろがず、逆境に陥ってもやる気を失わず、禍福の循環する道理をわきまえて心が惑わないようにするためである。

(【新訳】荀子/守屋 洋 編訳 より引用)

 

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本年が皆様にとって幸多き年となりますようお祈り申し上げます。

 

201712

 

流離の翻訳者


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今日は天気も良く穏やかな一日だった。そんな中また一つ歳を重ねた。

 

以前から英訳したいと思っていたものの初版ができたので公開する。悠久の時の流れと虚無感を感じる詩である。

 

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「黄鶴楼」      崔顥(さいこう)

 

昔人已乗黄鶴去    昔人(せきじん)已(すで)に黄鶴に乗りて去り

此地空餘黄鶴楼    此の地 空しく余(あま)す黄鶴楼

黄鶴一去不復返    黄鶴一たび去りて復(ま)た返らず

白雲千載空悠悠    白雲千載(はくうんせんざい)空しく悠悠

晴川歴歴漢陽樹    晴川歴歴(せいせんれきれき)たり漢陽の樹

芳草萋萋鸚鵡洲    芳草萋萋(ほうそうせいせい)たり鸚鵡(おうむ)洲

日暮郷関何處是    日暮郷関(にちぼきょうかん)何れの処か是なる

煙波江上使人愁    煙波江上(えんぱこうじょう)人をして愁えしむ

 

(口語訳)

昔々仙人がここから黄色い鶴に乗って去って行ったと聞くが、今はただ黄鶴楼が残されているだけである。

あの黄色い鶴は一度飛び去ったきり戻って来ることは無く、ただ白い雲だけが千年もの時を超えて悠々と浮かび続けている。

晴れ渡った川の向こうに漢陽の樹々がはっきりと見えて、鸚鵡洲と呼ばれる川の中洲には春の草花が青々と茂っている。

そんな日暮れ時、ふと私の故郷は何処だったのだろうか?という疑問が脳裏をよぎり、靄(もや)のかかる川面がさらに私に郷愁を募らせるのである。

 

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(自作英訳初版)

Yellow Crane Tower” by Cui Hao


A hermit had flown away on a yellow crane, leaving behind the Yellow Crane Tower alone on this site.

The yellow crane, once it has flown off, would never come back despite vacant white clouds floating for thousands of years.
Green trees stand out clearly across the river in Hanyang, while fragrant herbs are flourishing on the Parrot Shoal.
Wondering where my hometown really was in the twilight, I'm feeling a sense of nostalgia veiled in an evening haze covering the river surface.


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