新・英語の散歩道(その10)-「経済学の制度化」-”Winter into Spring” | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

年明け以来季節外れの暖かさが続いていたが、今週から天気は荒れ始め週末には寒波が来るという。とは言え寒いのもあと一か月余りだろう。

 

 

「古書への旅」中で、佐和隆光氏の著書を都合4冊読むことになった。彼の著書の中には経済学の制度化と言葉が再三出てくる。著書「経済学のすすめ」(2016年・岩波新書)にその定義について触れられていたので以下に記載しておく。

 

 

 

ここで「制度化」というのは institutionalization の訳である。…… institution というヨーロッパ語はもともと普通の言葉で、確立されたもの、とくに人々の政治的・社会的生活において法律、習慣、慣行をとおして定着した行動形態や組織などをさす。たとえば政党とか学校がそうである。科学も社会的に容認された組織体であり、それを維持する物質的基礎が社会に備わっており、それを専門的にになう職業集団が存在しているという意味で、明らかに一つの制度である。しかし科学ははじめから社会的制度として存在したのではない。科学が制度化するのは19世紀のことであった。(以上、広重徹『科学の社会史』から引用)

 

佐和氏は、上文(下線部)の「科学」「経済学」に、「19世紀」「1950年代」に置き換えれば、私が言う「経済学の制度化」を意味するところとなる、と言う。

 

さらに佐和氏は「経済学の制度化」ための以下の4つの必要十分条件を規定する。

①経済学の標準的な教科書が「易」から「難」へと秩序正しく整っていること。

②経済学の査読付き専門誌が存在しており、経済学者の業績評価が、同専門誌への掲載論文の量と質により定まること。

③経済学を専門的に担う職業集団(=学会)が存在し、経済学を修めた者(修士できれば博士)がプロとして働ける職場が存在していること。

経済学の有用性が社会的に認知されていること。

 

 

私が学生だった1970年代の終わりから1980年代初めの時期は、経済学部は、法学部や経営・商学部に比べて、学派(新古典派、マルクス主義、ケインズ派)の論争もあり上記①③④(②はよくわからない)すべてが中途半端であったように思われる。

 

 

最後に動詞 institutionalize について英英辞典の定義を記載しておく。

 

Institutionalize:

To institutionalize something means to establish it as a part of culture, social system, or organization.

「ある物を、文化、社会システム、または組織の一部として確立すること」