以前書いたかもしれないが、小学校3年くらいの頃「クレヨン画」を習ったことがあった。先生のアトリエはバス停で3つくらい離れたところにあった。毎週日曜日の午前中近所の子供たちと一緒にアトリエに通った。
コンクリートの壁に白いペンキを塗ったような幾何学的なアトリエだった。描くものは毎回花瓶に差した花。いつも静物ばかりで風景を描くことはなかった。
毎回1時間くらいで絵を仕上げ先生が10分くらいで手直しをした。あっという間に絵が生き生きとしてきた。花に少し色を加えたり花瓶の輪郭をはっきりさせたりしただけでこんなにも変わるのかといつも驚いた。まるで「プレバト」の夏井先生の俳句の添削みたいなものである。
英訳のチェックを主にやっていたころ一次翻訳者の英文(下訳)を一日中添削していた。語句や構文の手直しで済むものもあれば、リメークした方が早いくらい酷いものもあった。
そんなときいつもこのクレヨン画を習った頃を思い出していた。先生はどんな気持ちで私の絵を手直ししていたのだろうか …… と。
「英文表現法」に、そんな絵画の描き方に関する文章があったので、以下に英訳を作成してみたい。簡単そうに見えて語彙や構文の構造は難しそうである。
(問題)
自然の景色や、静物などを描こうとするとき、鉛筆で描くか、墨で描くか、絵の具を使うかは、描こうとする対象の美をどこに見出したかによるだろう。形の美しさに打たれたときには、それを強調した線画がよい。これに反して煙霧の中に見え隠れする樹木や山岳を描くには、墨絵に限る。といってあざやかな色彩の花の絵を墨で描いたのではつまらない。光琳の屏風を黒白の写真で見たのでは興味索然たるものであろう。(山内 恭彦)
(拙・和文英訳)
Which one do you use, a pencil, India ink or color paints, when drawing a picture of natural scenery or a still life, may depend upon where you have found the beauty in the object you are going to draw. If you are impressed by the beauty in the shape, it would be better to draw it as a line drawing emphasizing the shape. On the other hand, if you intend to draw trees and mountains appearing on and off in a misty rain, the best thing to do is to draw it as an India-ink drawing. However, it must be disappointing if you draw a picture of flowers blooming in brilliant colors with India ink. It is nothing less than devoid of interest if you look at a folding screen drawn by Korin OGATA in a black and white picture.