『龍三と七人の子分たち』 | やりすぎ限界映画入門

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■『龍三と七人の子分たち』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2014年/日本映画/111分
監督:北野武
出演:藤竜也/近藤正臣/中尾彬/品川徹/樋浦勉/伊藤幸純/吉澤健/小野寺昭/安田顕/矢島健一/下條アトム/勝村政信/萬田久子/ビートたけし

2015年 第31回 やりすぎ限界映画祭
2015年 ベスト10 第35位:『龍三と七人の子分たち』
やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界監督賞:『龍三と七人の子分たち』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界男優賞:藤竜也


やりすぎ限界男優賞:ビートたけし


■第2稿 2018年 9月15日 版

[北野武監督第17作目]



ど派手な「バイオレンス映画」が「2本連続」だったからか、第17作目『龍三と七人の子分たち』は「コメディ映画」となったのかもしれない。「爺さん」達が集まって「ヤクザ」の「組」を作るなど「こんなバカな」と思うが、「ありえなくなさそう」なのが「怖い」。『ビリギャル』『KANO 1931海の向こうの甲子園』『クリード チャンプを継ぐ男』『シンデレラ』の時代。「高齢化社会」が本格化して「4人に1人」が「老人」になったら、現実化しそうな可能性もある。ただのコメディ映画として素直に笑えなくなってしまった。

[「高齢化社会」]



医学が発達して「長生き」できるようになり、『楢山節考』のようなことがなくなった現代の「高齢化社会」。「100歳」で「健康」な老人が珍しくなくなってきた。となると「年金」を支払う若者の支払いが追いつかなくなる。若者は「果てがなく増え続ける税金」を支払わねばならなくなり、「結婚」して「子供を育てる」ことが難しくなる。さらに21世紀になり、「資本主義」が行き着く「格差社会」の貧富の差がもの凄い領域で拡がる現代、僕自身もそうだが、「非正規雇用」など「もう結婚できない」。



今、親の「年金」で食わせてもらってる、実家を出れない若者が増えてるのは、「一人暮らし」ができるほどの「給料」をもらってる若者が少ないから。無理に「一人暮らし」をしたら「結婚資金」など貯まらない。なぜ給料が安いのかと言えば「格差社会」で「税金」を多く支払ってるから。その親の「年金」は、若者が支払ってる「果てがなく増え続ける税金」「年金」。「永遠に追いつかない」。日本はもう「負のスパイラル」から抜け出すことができないのか?

[「赤ん坊」=「この世で最も値打ちのある存在」]



これ以上若者の「結婚」が減ると、いよいよもって日本は危ない。「老人だけの国」となって滅んでしまう可能性もある。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ではないが、これ以上子供が減れば、「赤ん坊」が「健康体」「Aランク」「カンペキ」である「この世で最も値打ちのある存在」になりかねない。


■『マッドマックス 怒りのデス・ロード』より


■『最愛の子』より

もはや『最愛の子』は、中国で起きた「他人事」ではなくなるかもしれない。次はもう「日本の番」かもしれない。

[「地球温暖化」]



2006年の『不都合な真実』で「エベレストの雪の減少」「南極の氷の融解」の真実を知った。「地球温暖化」の現実は2018年の日本にももの凄い影響を及ぼした。過去最大数の「台風」での「岡山県の浸水」「大阪府の被害」。「高齢化社会」と合わせ、「地球滅亡」の危機は確実に近づいてる。この状況で、「僕達はこの先どう生きるべきなのか?」となると、『龍三と七人の子分たち』を見て笑えなくなる。極限のくそリアリズムから目を背けられなくなってしまう。

[「若者」をやっつける「年寄り」]



『ロッキー・ザ・ファイナル』『ダイ・ハード4.0』『ランボー 最後の戦場』『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』『グラン・トリノ』『エクスペンダブルズ』……。「高齢化社会」の影響でここ数年間、「若者」をやっつける「年寄り」の現実感が増してきた。『龍三と七人の子分たち』の極限のくそリアリズムを喜んでいいのだろうか?

[「元気」な「年寄り」]



だが「元気」な「年寄り」は素直に微笑ましいことでもある。「自分もいずれこうなる」と考えれば、「他人事」にも見えない。僕も『龍三と七人の子分たち』のような年寄りを目指したくなるのは、人情かもしれない。



「バスジャック」の迫力は『レッドブル』を思い出す壮絶さ。「やったらやれる」と言っていいのか? だが「素直」に「面白かった」。「地球滅亡」の危機を示唆しながらも、それでも人間は生きねばならない。「お前も詐欺で逮捕だ」と「若者」をやっつける「たけし」の「勧善懲悪」に、「共感」している自分を思い知った。




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『TAKESHIS'』
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『アキレスと亀』
『アウトレイジ』
『アウトレイジ ビヨンド』
『龍三と七人の子分たち』

画像 2018年 9月