『アウトレイジ』 | やりすぎ限界映画入門

やりすぎ限界映画入門

ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」


■『アウトレイジ』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2010年/日本映画/109分
監督:北野武
出演:ビートたけし/椎名桔平/加瀬亮/小日向文世/北村総一朗/中野英雄/杉本哲太/石橋蓮司/國村隼/三浦友和/坂田聡/塚本高史/しいなえいひ/板谷由夏/渡辺奈緒子

2010年 第26回 やりすぎ限界映画祭
2010年 ベスト10 第11位:『アウトレイジ』
やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『アウトレイジ』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界男優賞:ビートたけし


やりすぎ限界男優賞:中野英雄


やりすぎ限界男優賞:椎名桔平


やりすぎ限界男優賞:加瀬亮


■第3稿 2018年 6月6日 版

[北野武監督第15作目]



「難解」と言われる「3部作」の後、「二度と撮らない」と宣言した「ギャング映画」を撮ったのは、北野監督の観客へのサービスなのかもしれない。作風が一転し「みんなが見たいもの」の「娯楽映画」を撮った。『クロッシング』『エクリプス トワイライト・サーガ』『第9地区』『渇き』の時代。『アウトレイジ』はど派手な「バイオレンス映画」の復活となった。

[「人間が絶対してはいけないこと」]



とはいえ「暴力団を賛美した表現をしたことはなく、拳銃を使った人間は幸せになれないようなシナリオにしている」と言う北野監督だけに、映画に登場したヤクザ達の殆ど全員が「死ぬ」。



『アウトレイジ』で死んだヤクザ達「全員」の共通点は「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」だった。見事なくらい全員同じ理由。それは「人間が絶対してはいけないこと」だからだろう。『アウトレイジ』は徹底的に「人間が絶対してはいけないこと」を見せた映画。人にこんなことしたら絶対「死ぬ」ことを徹底的に見せた。

[「コノ野郎」]



『アウトレイジ』で話題になった台詞「コノ野郎」。登場人物の殆ど全員が「コノ野郎」と連呼する。『アウトレイジ』の中で「コノ野郎」「バカ野郎」と、ヤクザ達が何回叫ぶのか数えきれない。壮絶なまでに繰り返される品のない罵倒に驚愕する。



「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」ことを、道徳の説教のように見せても面白くない。「おまえより俺の方が強い」と、カッコよく「コノ野郎」と叫びまくったヤクザ達が、叫べば叫ぶだけ「もの凄い死に方」をする最期は滑稽にも見える。「コノ野郎」なんて叫んでたら「死ぬ」ということなのかもしれない。

[「偉い人」は「善人」が多いか「悪人」が多いか]



「人より少しでもいい暮らしがしたい」。「いい車」に乗って「いい服」を着るにはお金がいる。お金を稼ぐには頭を使う。「偉い人」が偉くなったのは頭を使ったから。逆に人間は、「欲がないと頭を使わない」のかもしれない。「欲の皮が突っ張った人間だけが偉くなれる」のかもしれない。



だが「欲があるとろくなことを考えない」のが人間。もしこの世が、ろくなこと考えない奴しか権力を握れない世界だったら、悪に突き進む世界を誰も止められなくなる。これが資本主義の仕組みなら、真面目な人間は打ちのめされて絶望するしかない。



関内会長は半端じゃない「悪人」。関内会長こそが資本主義の現実なら、この世に仏様などいない。『アウトレイジ』を見て絶望した観客は多いかもしれない。だが『ガンジー』や『ブレイブハート』の「善人」を思い出してほしい。人に尊敬されて「偉い人」になった人間も現実にいること。「偉い人」は「善人」が多いか「悪人」が多いか、冷静に判断しなければならない。

[「もの凄い死に方」]



「コノ野郎」の連呼と同じくらい、『アウトレイジ』で「もの凄い死に方」をしたヤクザ達が何人いたか数えきれない。数えきれないほど死んだ登場人物の中でも、特に「もの凄い死に方」をした人間達が、どのように「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」ことになったかを見る。

[「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」ヤクザに見えねぇ(坂田聡)]



ブロックで頭を殴られた後、金属バットで頭を殴られ「死ぬ」。

[「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」ポン引き(塚本高史)]



指をつめた後、電車内で撃たれて「死ぬ」。

[「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」村瀬(石橋蓮司)]



引退させられた後、サウナで撃たれて「死ぬ」。

[「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」池元(國村隼)]



舌を切られた後、撃たれて「死ぬ」。

[「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」水野(椎名桔平)]



誘拐された後、ほとんど首とれて「死ぬ」。

[「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」小沢(杉本哲太)]



利用された後、撃たれて「死ぬ」。

[「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」関内会長(北村総一朗)]



加藤に裏切られた後、撃たれて「死ぬ」。

[「自分が他人にしたことは、いずれ全部自分に返ってくる」大友(ビートたけし)]



逮捕された後、刑務所で刺されて「死ぬ」。




[Previous]
『座頭市』
『TAKESHIS'』
『監督・ばんざい!』[前][後]
『アキレスと亀』
『アウトレイジ』

画像 2018年 6月