『監督・ばんざい!』[後編] | やりすぎ限界映画入門

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ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」


■『監督・ばんざい!』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2007年/日本映画/104分
監督:北野武
出演:ビートたけし/江守徹/岸本加世子/鈴木杏/内田有紀/渡辺哲/井手らっきょ/モロ師岡/蝶野正洋/天山広吉

2007年 第23回 やりすぎ限界映画祭
2007年 ベスト10 第4位:『監督・ばんざい!』
やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界女優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞/やりすぎ限界審査員特別賞:『監督・ばんざい!』

2007年 第64回 ベネチア国際映画祭
監督・ばんざい!賞


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。


『監督・ばんざい!』[前編]のつづき

[「映画監督」の「不安」極限のくそリアリズム]



■「しかし なんとこのバカ監督は
  内外のインタビューにおいて
  “ギャング映画は
  二度と撮らない” と
  宣言してしまったのだ」


北野監督が「誰も見たことがない」「新しいもの」を生み出す「想像力」に行きづまり、壊れ始める姿を、『定年』から『約束の日』の「7本のオムニバス映画」で見せる。『レイダース 失われた聖櫃』『スター・ウォーズ』『ターミネーター2』のような映画を、「仕事」で撮らねばならない現実の「どろどろのギャグ」が描かれる。



■「一般の人々に受けるなら
  やはりラブストーリーだろう」


僕自身にも思い当たる「苦悩」にもはや「大笑い三十年の馬鹿さわぎ」状態。『マッドマックス2』の子供がタンクローリーで「銃をぶっ放す」のを見て「大興奮」したのと同じ心境となった。全く関係ないが、 “極限ダイナマイト・ボンバー・ギャル” 「内田有紀」の「極限の美」には目が行ってしまった。



興業的成功を強いられる「映画監督」の「不安」極限のくそリアリズム。ヴィム・ヴェンダース監督が尊敬する小津安二郎監督の「リスペクト」から「座頭市2」の「本当にそう見える」「オチ」まで、おしっこ垂れ流しで涙が出た。

[『コールタールの力道山』「これが日本だ」]



■「拾ったんだよ」

“本物の30年代を見せてやる”。「拾ったんだよ」から「貧困と差別 意味のない暴力…」の時代のセックスまで、極限のくそリアリズムに大笑いで涙が出た。エクスタシーに到達した。徹底的な人間の「美点」「欠点」「悲劇性」。俺は子供の頃「駄菓子屋のおばちゃん」に、「どうせ10円か20円のものしか買わないんだろ! 早くしてよ! ラーメンのびちゃうじゃないの!」と言われる近所の子供を「本当に見た」。



■「テメエら みんな殺す!」

俺が「パンツについた」のは「ギターを背負った少年」。「これが日本だ」。子供の頃「こういう子供を見た」。いや、俺自身が「ギターを背負った少年」と同じくらい「間抜け」だった記憶が甦る。「テメエら みんな殺す!」と言って、ナイフで「自分の指を切り泣く」。この「間抜け」さ、極限のくそリアリズム。「バイオレンスは撮らないと 言っていたのに もっとひどい話に なってしまった」「どろどろのギャグ」に震撼せよ!

[『約束の日』「これが日本だ」]



■「あの このスープ
  何でダシ取ってるんですか?
  おいしいから…」


「ゴキブリ」。この「どろどろのギャグ」を外国人は思いつけない。「これが日本だ」。この感性は全世界で「日本人」だけのもの。「外国に類を見ない」感性。どれほど「壮絶」な「お笑い」か? もはや俺は笑いながら「号泣」だった。



■「え?」
 「クァ~ク」


……「鈴木杏のアヒル」。同じ「マペット」でも「ジム・ヘンソン」との「決定的」な「違い」。恐るべき「日本文化」。これを見た「アラン・ドロン」はどう思ったのだろうか!

「他のどの国でも見れない日本でしか見れないもの」。「鈴木杏のアヒル」が鳴く「クァ~ク」の “恐るべき間”。「歌舞伎」の「間」もぶっ飛ぶ「完璧」な「間」が、『みんな~やってるか!』の「歌舞伎のスピード」を超える。……「あんたに殺されたくねえ」。もはや俺は「スコフィールド・キッド」と化す意外なす術がなかった。「クァ~ク」の “恐るべき間” が「ベネチア全土」を「震撼」「驚愕」「圧倒」した。



■「あ
  何だ この灯り?
  灯り点いちゃったよ?」


「アルツハイマー」という病気は人種を問わず誰でも理解できる。「尿瓶のおしっこを飲む」。この「どろどろのギャグ」を外国人は思いつけない。吉祥寺太(ビートたけし)の「父ちゃん」はやりすぎ限界男優賞だが名前を調べることができなかった。



「尿瓶のおしっこを飲む」。これこそ子供の頃から見てきた「ドリフ」や「及川ヒロオ」等の「日本のバラエティ番組」、「日本文化」の誇り。また「ズッコケる」ギャグを僕は「外国映画」で「一度も見たことがない」。そして「寝たきり」の父ちゃんが高円寺喜美子(鈴木杏)の「お風呂」を覗きたい「助平心」、……「布団のスライド」。もはや俺は北野監督の前に、『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』の「アナキン・スカイウォーカー」の心境で跪いた。「全世界」を震撼させた「鈴木杏のアヒル」「尿瓶のおしっこを飲む」「布団のスライド」。恐るべき「日本文化」を思い知れ!

[「映画監督、ばんざい!」]



■「映画監督、ばんざい!」

『監督・ばんざい!』の全てが、「他のどの国でも見れない日本でしか見れないもの」。「どろどろのギャグ」「日本文化」。「世界の北野」の「真実」、「監督・ばんざい!賞」 “Jaeger-LeCoultre Glory to the Filmmaker Award” に震撼せよ!




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『アキレスと亀』

画像 2017年 9月