『みんな~やってるか!』 | やりすぎ限界映画入門

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ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」


■『みんな~やってるか!』
☆☆☆☆★★[90]

1994年/日本映画/110分
監督:北野武
出演:ビートたけし/ダンカン/白竜/ガダルカナル・タカ/寺島進/芦川誠/宮路年雄/立野しのぶ


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界男優賞:ガダルカナル・タカ


やりすぎ限界女優賞:立野しのぶ


■第2稿 2015年 2月19日 版

[北野武監督第5作目]



『ソナチネ』の恐怖が止まない間に『みんな~やってるか!』が公開された。『エリザ』『エド・ウッド』『ブレイブハート』で自分が何をすべきかが見え始めた時代。「カンヌはこの映画について行けない!」という壮絶批評に度肝を抜かれた。

だが『みんな~やってるか!』の「極限恐怖」の真実はたった一人褒めた淀川先生の壮絶評価だ。『ソナチネ』も『みんな~やってるか!』も「本当に映画を知ってる」だった。「あんたに殺されたくねえ」。もはや僕はウィリアム・マニーの前のスコフィールド・キッドだ。大きい方が出るギリギリ。僕の精神状態もギリギリだった。

[北野武と淀川長治]



■「昔々、サイレントの時代にニコニコ大会いうのがあった。スラップスティック・コメディ大会なの。一巻もの、二巻もの、短編コメディがうんとあったんですよ、その頃。面白かったんだ、とっても。
たけしの今度の映画、そのタイプとそっくりなの」

(『淀川長治のシネマトーク』より)

■「短い話がどんどん出てくる、アイディア、アイディア、アイディア。たけし君のアイディア、ワンシーンごとに面白いよ。
一つの面白さがあって、次、場面変ったら、また面白いの。このワンシーン、ワンシーンが全部ニコニコ大会の一巻ものの感じなのね。そっくりだ。
で、どうしてこんなこと、あの人知ってるんだろうか。それとも、この人は、持って生まれてきているんだろうか、面白いギャグを。と思って、すごく感心して、僕はこの映画、ギャグ芸術、ギャグの芸術集だと思ったの。思わず私はこの人を尊敬しちゃうの」

(『淀川長治のシネマトーク』より)

この褒め方。「真実」は淀川先生がどれほど北野監督が好きかということ。ここまで淀川先生に好かれた北野監督が僕の「この世で一番怖い人間」と化してた。チャップリンやベルトルッチと「友達」の人間にここまで「愛される」人間。「僕もこうなりたい…」と憧れた。

[「もしも…」]



■「もしも、飛行機の中でスチュワーデスが裸になってくれたらどんなにいいだろうかとか、いろいろ出てくるんですね。それが面白くて面白くてしょうがない。けれども、昔の、活動写真にはロイドでも、チャップリンでも、それからキートンでも、そういう場面があるんですね。もしもの時に、ことにロイドなんかそれがあるんですね。それがこの人の場合は、エロで、エロティックで出てきたんですね」
(『淀川長治、北野映画を語る』『みんな~やってる…』より)

『酔拳』のジャッキー・チェンが「何仙姑」を「やってられるか」とサボったように、不真面目な僕は「ニコニコ大会」を知らない。幼馴染のTがドリフのコントの原点がサイレントのスラップスティック・コメディだと僕に教えたが、その真実を淀川先生から学んだ。『みんな~やってるか!』はスラップスティック・コメディを現代日本でやってのけた映画だ。

[極限のくそリアリズム「煩悩」]



■「映画なんか壊してやろうと思って作った作品だけど、結局何も壊せずに終わってしまった」
(Wikipedia『みんな~やってるか!』より)

『みんな~やってるか!』の「もしも…」という短編全部が「人間」の極限のくそリアリズムに到達した「煩悩」だ。「カーセックスができる車がほしいんですけど」から「透明人間だったら覗けるのになぁ」まで人間の「煩悩」を「これでもか」と見せる。「これは映画だ! これが映画だ!」淀川先生の叫びが聞こえてきそうだった。

[極限のくそリアリズム「朝男がセックスしたい女」達]



裸の女「ポルシェ」。裸の女「スチュワーデス」。裸の女「セスナ」。3人はやりすぎ限界女優賞だが立野しのぶ以外名前がわからない。朝男(ダンカン)が描いた妄想の「セックスしたい女」達に「男の哀しさ」の極限のくそリアリズムを見た。数分しかないたくさんの妄想シーンだが、この3人の美しさには僕も朝男の心境となった。

[極限のくそリアリズム「楽して得しない」ギャグ]



人間は絶対「楽して得しない」。朝男の妄想が絶対実現できない「こうしたら」→「こうなる」という「楽して得しない」ギャグにも極限のくそリアリズムがある。壮絶だったのは「セスナに乗ったら」→「マンボになる」と「俳優になったら」→「肥柄杓になる」だった。北野監督の「毒」に震撼した。

[宮路社長と「歌舞伎のスピード」]



北野監督の「瞬間の感覚」。常に数千万円の現金をアタッシュケースに入れて持ち歩く「城南電機の宮路社長」出演シーンで魂が震えた。全然関係ないドロドロのギャグ「歌舞伎のスピード」で大きい方が出そうだった。

この切れるような「歌舞伎のスピード」。このシーンにやりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]を贈りたい。『監督・ばんざい!』の鈴木杏の「アヒル」に匹敵する「瞬間の感覚」。観客は切れるような「歌舞伎のスピード」におしっこを漏らして震撼する以外もはやなす術はない。




『その男、凶暴につき』
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画像 2015年 2月