105円読書 -29ページ目

苦い娘 著:打海文三

苦い娘

打海文三:著
中央公論新社 ISBN:4-12-204513-4
2005年4月発行 定価760円(税込)









いまのところ読む作品、全てハズレなしな打海文三…最近になってハマリはじめた作家なので、あまり読んでないんだよなぁとか思っていたんだけど…著者の作品リストをみると、そんなに数多くの作品が出ているわけでもなく、3分の1程度はもう読んだのかな?この作品は1997年に発刊された「ピリオド」という作品を文庫化のため、加筆・修正・改題したものだそうだ。

倒産寸前の印刷会社に勤める永井万里子、経営者と組合が断交の最中に、債権回収の暴力団が乗り込んできた。さらに、その騒動に紛れて、整理屋まで乗り込んできたのだが…その陣頭指揮をとっていたのは万里子の叔父だった。会社を救ってほしいと叔父に直訴するものの…全く相手にされなかったのだが、その直後に、叔父は万里子の前で爆死してしまった。事件性を感じた万里子は、かつて叔父と共に仕事をしていた真船亨を訪ね、事件の調査を依頼するのだが…。

お馴染みのアーバンリサーチシリーズ…「されど修羅ゆく君は」「愛と悔恨のカーニバル」の姫子ちゃんもチラリと出てくるが、映画でいうところの友情出演程度で、事件には関わらず。元詐欺師のウネ子ばーさんも名前だけの登場となったが…佐竹や寺西はちょっぴり活躍していたね。

今回のヒロインは姫子ちゃんに匹敵する、活発な女の子…そして相変わらず、魅力的なくたびれ中年オヤジがハードボイルドしてくれる。親と子供、大人と子供…そして男と女の関係というのが魅力的に描かれているのが打海文三らしくていいですよね。母親や叔父、さらに2人の旧友なんかとも、タメの友達と話しているように接する万里子が、なんだか羨ましくも思います。読んでる最中は、万里子の存在なんて、まったく19歳の未成年に思えないくらい、達観した印象を受ける。

下手に描くと、某フランスのアクション映画のようにただのロリコン話になりそうなもんだが、そういうのを感じさせないのは、やっぱり打海文三のセンスでしょうね。人間関係はやたらとドロドロしていたものの(笑)…事件の背景などは、今までの作品よりもスッキリとしていたようにも思えたかな?






個人的採点:70点






メモリアノイズの流転現象 ソウルドロップ奇音録 著:上遠野浩平

メモリアノイズの流転現象
ソウルドロップ奇音録

上遠野浩平:著
祥伝社 ISBN:4-396-20805-7
2005年10月発行 定価880円(税込)








昨日に引き続き上遠野浩平のソウルドロップシリーズを読んだ。この人のシリーズ作品は、設定が奇抜なので、最初はとっつきにくいんだけど…慣れると、その世界観にけっこうハマってしまう。このシリーズも、ようやく2巻目で方向性が確認できて、物語を楽しめるようになってきましたね。

私立探偵・早見壬敦は、ある筋からの依頼で、資産家・杜名賀家の娘が遭遇している離婚の調停役を任せられ、はるばるやってきたのだが…その道すがら、アメヤと名乗る奇妙な男に遭遇した。そして、いざ杜名賀家を訪れた早見は、21年前に杜名賀家が巻き込まれた殺人事件の真相を探り始めることに…。それと同時期に、杜名賀家で爆破事件が発生。現場から、神出鬼没の怪盗ペイパーカットからの予告状も見つかったことから、サーカム保険の調査員、伊佐俊一と千条雅人も参上するのだが…。

神出鬼没の謎の怪盗ペイパーカットを追いかけながら(SF&ファンタジー的要素)、偶然遭遇してしまった別の事件を(論理的に)解いていくというのが、パターンのようですね。今回は、地方の資産家が20年以上前に巻き込まれた殺人事件の真相を解く。シリーズを通した全体的な物語の中ではまるで8マンのような設定のロボット探偵が出てきたり、超能力もどきな怪しげな能力を使う輩が出てきたりするんだけれども…とってつけたような別の事件の方は、意外と地に足のついた物語なんだよね。

設定に慣れてしまったからなのか、それとも事件の内容が古風だったからなのか…1作目よりも普通に物語に入り込めましたね。

早見とい新キャラも登場…実は前作から登場している東澱久既雄の関係者だったりして、色々とシリーズ全体の謎に満ちた設定や物語は、まだまだ全貌が見えてこない状態。意味深な発言や行動をするキャラとかも出てきてね…今後どうなることやら。

今回は続けて2冊読んだから、こういうややこしい設定も覚えていられたが、時間があいちゃったら、ちょっとテンションが下がりそうだなぁ。あまり長引くシリーズにして欲しくないっていうのが正直な気持ち。既にこのシリーズの3冊目も出ているらしいので、さっそくブックオフの100円コーナーをチェックしなければ!






個人的採点:65点






ソウルドロップの幽体研究 著:上遠野浩平

ソウルドロップの幽体研究

上遠野浩平:著
祥伝社 ISBN:4-396-20785-9
2004年8月発行 定価880円(税込)









このブログを書き始めたころに読んだ「あなたは虚人と星に舞う」以来、久々の上遠野浩平。久々といっても前述の作品が含まれる徳間デュアル文庫で出ているシリーズもののSF三部作を読んだことしかないんだけどね…。今回は新伝奇と呼ばれるジャンルで…SFやらファンタジーやらもひっくるめたなんでもありなミステリーエンターティメント。

“生命と同等の価値のある物を盗む”…ペイパーカットと呼ばれる謎の怪盗は、傍目にはどうでもいいものなのだが、狙いをつけたターゲットが大事にしているものを盗み、その直後にターゲットの命も奪い去る!今回もホテルの一室で、日本の政財界にも密かに幅を利かせる、権力者…東澱久既雄の影武者とされる男が殺され、そこからキャンディがひとつ無くなっていた…。ペイパーカットの仕業と認定したサーカム保険の調査員、伊佐俊一と千条雅人はペイパーカットの行方を追う。そして新たに、同じような予告状が、ある女性歌手の追悼ライブ宛てに届いたと知り、たたちに調査を開始!ペイパーカットはいったい何を狙っているのか?

ライノベ系作家さんだけど…普通の推理小説マニアが読んでもギリギリ、セーフかな?今後展開されていくだろうシリーズのためとか、上遠野作品のコアなファン向けの他作品とのリンク、類似など、キャラ設定や相関図にややとっつきにくい箇所なんかもあるのだが…独特なストーリー展開は謎に満ちていて、なかなか面白く、テンポも良い。

作品に登場する謎の解盗ペイパーカットの特技のごとく、アクションやSF要素で上手に読者を目くらまし…ミステリ的に、そこそこ驚けるオチがしかっりと用意されているのが嬉しい。

続編の「メモリアノイズの流転現象」も入手したので、続けて読んでいる最中。






個人的採点:65点






首切り坂 著:相原大輔

首切り坂

相原大輔:著
光文社 ISBN:4-334-07519-3
2003年5月発行 定価820円(税込)









光文社の“KAPPA-ONE登龍門”から出てきた新人作家のデビュー作。けっこう前に買ったんだけど、積読の山の中に隠れてた(笑)明治四十四年を舞台に、怪奇極まる、陰惨な事件に遭遇する小説家の話なのだが…カバーの折り返し部分にある、若竹七海の推薦文や、先に読んでしまった巻末に載っているミステリ評論家がバカミス系と言い放つ作品評を読むと…かなりズッコケなトリックが待ち構えているらしいということだったのだが…。

明治四十四年の初夏…小説家として生計を立てる鳥部は、怪談として世間に伝わる「首切り地蔵の呪い」に、ひょんなかたちで昔からの旧友たちと関わる羽目に…。さらに、その場所で首なし死体が発見されたことにより事件は一変…呪いを本気で信じ始めた鳥部は、事件を調べるため、神秘的な事象を信じる大島という知り合いを頼ることにするのだが…。

確かに、推理小説とすると笑っちゃいそうな真相、奇抜なトリックであり、それを隠すために…筋道がかなり回りくどかったりもするのだけれど、そういったテンポの悪さをカバーするかのように、ミステリを忘れて、明治末期を舞台にした文学小説でも読んでいるような、妙な心地よさを感じる、語り口がなかなか味があってよろしいかと。

雰囲気を楽しむには、いいんだけど…肝心のミステリとしては、本当にズッコケ系のバカミス。それを大真面目にやってるからね…なんか気分的には、京極夏彦とかにも近いんじゃない?(一緒にしたら、京極ファンに怒られてしまいそうだが)






個人的採点:65点






ちぇりあい ちぇりーぼーいあいでんてぃてぃ 著:戸梶圭太

ちぇりあい 
ちぇりーぼーいあいでんてぃてぃ


戸梶圭太:著
祥伝社 ISBN:4-396-63262-2
2006年3月発行 定価1,575円(税込)








久しぶりに戸梶圭太を読む。相変わらずの戸梶節炸裂で、まぎれもなく戸梶な馬鹿小説。戸梶初心者には薦められない。戸梶流の真実の“電車男”か、“アキハバラ@DEEP”か?オタク&ひっきー撲滅のための、戸梶センセの愛の鞭が炸裂しすぎで、ちょっとでもオタクを自覚している人にはイタすぎて、読んでる最中にグサってきますよ。

駿河医科大学の亀山田教授は、成人の童貞男性から抽出できる脳内部質が老化抑止に繋がるのを発見したが、それが莫大な利益に繋がるのを知ったライバル、鳴滝教授は亀山田の成果を盗んで自分の手柄としようとする。かくして、二人は実験を成功させるため、お互いに童貞男性の確保に奔走するのだが…。

ハチャメチャ、不条理、放送禁止用語満載のお下品ギャグエロバイオレンスSF巨編(笑)…最後の1ページまで戸梶の暴走とまらず…。映画好きの戸梶センセらしく、パロディ?パクリ?オマージュ?な展開も満載。

オタク目線で、世間への批判を読んでいるときは、そうそうってうなずいて読んでるんだけれども、そこで共感しちゃうと…つまり自分もオタクの仲間と認めちゃうわけであり(笑)、後で崖っぷちに立たされ、奈落の底へ突き落とされるんだから…読み終わった後は、間違いなくブルーになり、自分の将来が不安になってきます。この小説、最後まで笑って読める人は、人生での成功者ってことでしょうね…って、ちょっと自虐的になってみたり(笑)


笑えるようで、笑えない…とにかく疲れました。かなり濃い内容です。






個人的採点:60点






天の前庭 著:ほしおさなえ

天の前庭 

ほしおさなえ:著
東京創元社 ISBN:4-488-01717-7
2005年7月発行 定価1,785円(税込)









東京創元社のミステリ・フロンティアで配本された1冊…自分は初めて読む作家だったが、このシリーズで出てる本はけっこう面白い本が多いので期待が高かった。

高校の工事現場から見つかった白骨死体と、日付が刻印された特殊なボールペンが発見された。手がかりになると思われた、そのボールペンの持ち主と思われる人物は、自動車事故で昏睡状態に陥り長い間眠り続けている。事故から9年目にしてようやく目覚めた中里柚乃は、なんと記憶喪失に陥っていた…。家族がいない柚乃は、生前の父親の知人だというツグミという女性に引き取られ、同居を始めるのだが…そこで高校生の時に自分がパソコンで書いたらしい日記を目にするのだが…。

発見された白骨死体を発端に…様々な事件が絡み合う。高校生の時に交通事故で昏睡状態に陥った少女は、9年間も眠り続け、目覚めた時は記憶喪失だった。ドッペルゲンガーに、タイムトラベル…さらに、巷ではテロによる爆破事件が横行中。神戸の震災直後のに、宗教教団が化学兵器を撒き散らして東京でテロを起こしたなんて、まるで某教団の事件にソックリな話まで飛び出し…気になってページをめくってしまう。

「時をかける少女」か?はたまた、島田荘司の「異邦の騎士」なのか?いったいどっちなんだ?(笑)

もしかしてSF・ファンタジー系の小説なんじゃないかとも疑いたくもなったのだけれども、まぁ、当ブログのジャンルわけで“推理小説”にしていますので、SFっぽさを微妙に残しながらも、それなりにまともな着地点。意外と、真相にたどりつく伏線もあったりするんですよ途中でね。読んでいる最中は…青春ミステリーっぽくもあり、テーマはやっぱり家族・血縁。

真相のひねりがもう一歩という印象だが…興味を持続させる構成は上手いなって思った。エンターテイメントとして太っ腹で、面白い。






個人的採点:70点






ST 警視庁科学特捜班 為朝伝説殺人ファイル 著:今野敏

ST 警視庁科学特捜班 
為朝伝説殺人ファイル

今野敏:著
講談社 ISBN:4-06-182490-2
2006年7月発行 定価840円(税込)








昨日に引き続き、今野敏のSTシリーズを読む。今現在のシリーズ最新刊であり、今度は“伝説”という内田康夫チックなトラベル・旅情ミステリー風な題材でSTメンバーが大暴れか?

伊豆大島、奄美大島とダイビングのスポットで相次いでダイバーが事故死した。このニュースに、着目したのが東京テレビジョン、「14時ワイド」の番組スタッフとキャスターたち。両方とも源為朝にまつわる伝説が残る土地だったことから、二つの事故を結びつけたのだ。そして為朝伝説にまつわる土地へ飛んだ取材班の前に新たな事件が…。他のマスコミが騒ぎ出したことによりSTメンバーが真相を求め、事故の再調査をかねて、為朝伝説を調べ始めた…。

STのメンバーは、過去にもいくつかTV局絡みの事件を解決してるけど、このネタ、よっぽど作者が好きなんだろうなぁ(笑)視聴率稼ぎ、話題つくりに過剰演出やヤラセを示唆するプロデューサーなど、今読むと、けっこうタイムリーなネタもチラホラ。

伝説だ、呪いだとやたらと煽ったわりに、お行儀よく着地させちゃう事件の真相なんかも、本当にありがちなトラベルミステリー風でしたね。法医学担当の赤城と、プロファイリングの青山が適度に推理、活躍し、紅一点の翠は、捜査というよりは…飛行機が嫌いだと駄々をこねまくっていたという印象の方が強い(笑)山吹と黒崎に至っては…いるだけで、目立つ活躍なし。

シリーズものの安定した面白さは感じられるが、昨日読んだ「黒の調査ファイル」ほど、はじけていない。ミステリーとしては、オーソドックスな感じだった。






個人的採点:65点






ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル 著:今野敏

ST 警視庁科学特捜班 
黒の調査ファイル

今野敏:著
講談社 ISBN:4-06-182449-X
2005年8月発行 定価840円(税込)








久しぶりにSTシリーズを読む。しばらく続いたSTメンバー、一人一人にスポットをあてた色シリーズの完結編で、人間ガスクロこと、驚異的な臭覚の持ち主で、武道の達人でもある黒崎がメインとして大活躍!

役者志望の内藤茂太は、悪質なワンクリック詐欺にひっかかってしまった。なんとか、詐欺グループに復讐してやりたいと思った茂太は、仲間を集めて、逆に金を巻き上げる計画を立てる。そこに腕力を買われて、STの黒崎が加わることに…。一方、歌舞伎町で続発する密室発火事件…発火原因の究明のためSTのメンバーが新宿署の刑事課強行犯係の調査に加わる。事件の背景に中国マフィア同士の抗争が関わっているらしいのだが…捜査の主導権を競って、警察内部でも刑事課と組織対策課の対立が起きていた…。

ページ数は185ページと、少な目ながら…携帯電話のワンクリック詐欺から始まって、怪奇現象まがいの発火事件、中国マフィアの縄張り争い、警察内の組織対立と、広げた風呂敷は大きく、それらをテンポ良く一気に読ませる。黒崎が主人公ということで、著者お得意の格闘描写もいつも以上に冴えていた印象。

前回読んだ、緑の調査ファイルあたりは、けっこうベタな推理小説的要素がけっこう強く感じられ、STにしては異質な印象も受けたんだけれど、この作品はいかにもSTらしい雰囲気。怪奇現象のような放火事件を、物理学的に解き明かしていくあたりは、作中の菊川刑事たちのように、その手の話題が苦手な自分はチンプンカンプンだったりもするが(笑)、このあたりもSTらしくて、いいんじゃないでしょうかね?

無口な黒崎が、意外とお茶目で、ちゃっかりした性格なのがよく描かれてましたね。ボソボソっとしか喋らないくせに、頭の中には事件解決までの道筋が描けてるんだろうなぁって感じで、侮れない。






個人的採点:70点






ストーンエイジCOP 顔を盗まれた少年 著:藤崎慎吾

ストーンエイジCOP 顔を盗まれた少年

藤崎慎吾:著
光文社 ISBN:4-334-07479-0
2002年8月発行 定価890円(税込)









近未来の日本を舞台にしたSFアクションサスペンス。警察業務の一部を民間に委託させた、コンビニの警備員兼警察官、通称コンビニCOPが、ストリートチルドレンと共に、この時代の社会を牛耳るハイテク企業の陰謀に迫る。

大手コンビニチェーン“4U”の警備員兼警察官…通称コンビニCOPの滝田治が勤務するコンビニがストリートチルドレンに襲撃された。その時に、捕まえた一人の少年が漏らした奇妙な話が事件の発端だった…。家に帰ったら、自分の偽者がいて、母親が本物の少年を追い出したのだという。事件性を感じた滝田は独自に調査を開始するのだが…思わぬところから圧力が!

近未来の警察が民営化って設定あたりは、映画の「ロボコップ」をちょっと思い出すね。しかも、コンビニ業務と警察を組み合わせちゃうってあたりの発想は、今風でなかなか面白い。それだけじゃなくて、この時代はテクノロジーの発達により、整形手術や臓器移植まで、コンビニで手軽に出来ちゃうのだ。ただ、一般市民の知らないところで…なにやら非合法、きな臭い陰謀が進行している。

ハードSFを得意とする作家さんなので、特有の小難しい専門的な描写なども出てくるのだが、ほとんどはエンターテイメントなノリで、普通にアクション小説とサスペンス小説として読めちゃうあたりがミソかもしれませんね。ハイテク企業がなにやら怪しげなことしてるってあたりの真相は…なかなか不気味。現代劇でいうと、有名企業が内緒で軍事産業に手を染めて、細菌兵器を作ってましたみたいなパターンかな?

ネットワークなどの技術・管理面でもかなり進んだ未来社会なんだけれども、日本的な古風な赴きも色濃く残ってる印象を受けるあたりは、TVアニメ版の「攻殻機動隊」シリーズなんかにも雰囲気が似ているかなと。アノ手の作品が好きな人なら単純に楽しめるのでは?


それと…密かに人間のすり替え工作が行われているなんてお話は、特撮ものとか見ると、宇宙人や怪人がよく使う手段だしね(笑)SFなのに、ちょっとホラーっぽさも出ていたかな?

主人公が昔の記憶を欠如しており、その謎がまだ解明されていないなど、気になる箇所も多々有り。既に続編も出版されており、自分も105円で入手してあるので、また近いうちに読んでみようと思っているところ。けっこう面白かった。






個人的採点:65点






亡者の家 著:福澤徹三

亡者の家

福澤徹三:著
光文社 ISBN:4-334-73895-8
2005年6月発行 定価500円(税込)









福澤徹三の作品を読むのはハードカバーで読んだ「壊れるもの」に続いて2冊目となる。日常的な恐怖を徐々に描きながら、ある部分で一瞬に、もっと背筋が凍る物語へと昇華させるホラー。

長年続けたフリーターから足を洗い、中堅消費者金融アイルファイナンスに入社した諸星雄太…先輩社員たちのような厳しい取立てがなかなかできない新米社員だ。そんな時、融資した客の一人が延滞。約定日になっても連絡がとれず、行方不明になってしまったことから…自宅へ集金に行く羽目になるのだが、実際に目にしたその家に、ただならぬものを感じる。ありふれた木造家屋であり、特徴のない家のはずなのに…禍々しい雰囲気を発していた。そして対応に出てきた妻の妙な色気…。それ以降…諸星の周囲で変死事件が相次ぐ。

消費者金融の実態をリアルに描いているのだけど、主人公がお人好しの新米というあたりで、読者がうまく作品の中に入り込みやすい設定になっている。さらに、このご時世の庶民の不景気な雰囲気も、嫌になるくらい伝わってきて、貧乏フリーターとしては共感なんかしたくなくても、仕方なしに共感してしまうところが、悲しい。

いかにもな、ゾっとするホラーを感じる前に、金というものが人を狂わせる姿がけっこう怖い。自分はローンだとか、キャッシングだとかいう言葉にもけっこう過剰に反応し、嫌煙するたちなので、貧乏なくせして、そういったモノにはお世話になっていないのだが、こういった消費者金融でなくても、むやみやたらに金の貸し借りはしたくないなぁって恐ろしく感じたりもする。絶対に友人・知人、肉親だって…保証人のハンコなんてつきたくないぞってね(爆)そういったトラブルを回避する小話なんかも、ちょこっと出てきたりして、けっこう面白く読んだ。

で、そういうものから入っていて…自殺や殺人事件というミステリ的な演出で話がきな臭い方向へ進んでいき、気持ちがいいくらいにピースが嵌まり真相が解明されていくんだけれども…そう簡単には終らないのが、この作家。一気に、ホラー小説というのを思い出させる内容となる。

主人公が恋人と…“難病に罹った若い女が、恋人である男の努力もむなしく死んでしまう…それだけの話”って映画を見に行って、内容を馬鹿にしてたけど、これってセカ○ー?確かに、この原作本がベストセラーになったこと、そしてこれで泣いてる奴らが、一番のホラーかもしれんと思ってしまった(爆)






個人的採点:70点