ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル 著:今野敏
ST 警視庁科学特捜班
黒の調査ファイル
今野敏:著
講談社 ISBN:4-06-182449-X
2005年8月発行 定価840円(税込)
久しぶりにSTシリーズを読む。しばらく続いたSTメンバー、一人一人にスポットをあてた色シリーズの完結編で、人間ガスクロこと、驚異的な臭覚の持ち主で、武道の達人でもある黒崎がメインとして大活躍!
役者志望の内藤茂太は、悪質なワンクリック詐欺にひっかかってしまった。なんとか、詐欺グループに復讐してやりたいと思った茂太は、仲間を集めて、逆に金を巻き上げる計画を立てる。そこに腕力を買われて、STの黒崎が加わることに…。一方、歌舞伎町で続発する密室発火事件…発火原因の究明のためSTのメンバーが新宿署の刑事課強行犯係の調査に加わる。事件の背景に中国マフィア同士の抗争が関わっているらしいのだが…捜査の主導権を競って、警察内部でも刑事課と組織対策課の対立が起きていた…。
ページ数は185ページと、少な目ながら…携帯電話のワンクリック詐欺から始まって、怪奇現象まがいの発火事件、中国マフィアの縄張り争い、警察内の組織対立と、広げた風呂敷は大きく、それらをテンポ良く一気に読ませる。黒崎が主人公ということで、著者お得意の格闘描写もいつも以上に冴えていた印象。
前回読んだ、緑の調査ファイルあたりは、けっこうベタな推理小説的要素がけっこう強く感じられ、STにしては異質な印象も受けたんだけれど、この作品はいかにもSTらしい雰囲気。怪奇現象のような放火事件を、物理学的に解き明かしていくあたりは、作中の菊川刑事たちのように、その手の話題が苦手な自分はチンプンカンプンだったりもするが(笑)、このあたりもSTらしくて、いいんじゃないでしょうかね?
無口な黒崎が、意外とお茶目で、ちゃっかりした性格なのがよく描かれてましたね。ボソボソっとしか喋らないくせに、頭の中には事件解決までの道筋が描けてるんだろうなぁって感じで、侮れない。
個人的採点:70点