亡者の家 著:福澤徹三 | 105円読書

亡者の家 著:福澤徹三

亡者の家

福澤徹三:著
光文社 ISBN:4-334-73895-8
2005年6月発行 定価500円(税込)









福澤徹三の作品を読むのはハードカバーで読んだ「壊れるもの」に続いて2冊目となる。日常的な恐怖を徐々に描きながら、ある部分で一瞬に、もっと背筋が凍る物語へと昇華させるホラー。

長年続けたフリーターから足を洗い、中堅消費者金融アイルファイナンスに入社した諸星雄太…先輩社員たちのような厳しい取立てがなかなかできない新米社員だ。そんな時、融資した客の一人が延滞。約定日になっても連絡がとれず、行方不明になってしまったことから…自宅へ集金に行く羽目になるのだが、実際に目にしたその家に、ただならぬものを感じる。ありふれた木造家屋であり、特徴のない家のはずなのに…禍々しい雰囲気を発していた。そして対応に出てきた妻の妙な色気…。それ以降…諸星の周囲で変死事件が相次ぐ。

消費者金融の実態をリアルに描いているのだけど、主人公がお人好しの新米というあたりで、読者がうまく作品の中に入り込みやすい設定になっている。さらに、このご時世の庶民の不景気な雰囲気も、嫌になるくらい伝わってきて、貧乏フリーターとしては共感なんかしたくなくても、仕方なしに共感してしまうところが、悲しい。

いかにもな、ゾっとするホラーを感じる前に、金というものが人を狂わせる姿がけっこう怖い。自分はローンだとか、キャッシングだとかいう言葉にもけっこう過剰に反応し、嫌煙するたちなので、貧乏なくせして、そういったモノにはお世話になっていないのだが、こういった消費者金融でなくても、むやみやたらに金の貸し借りはしたくないなぁって恐ろしく感じたりもする。絶対に友人・知人、肉親だって…保証人のハンコなんてつきたくないぞってね(爆)そういったトラブルを回避する小話なんかも、ちょこっと出てきたりして、けっこう面白く読んだ。

で、そういうものから入っていて…自殺や殺人事件というミステリ的な演出で話がきな臭い方向へ進んでいき、気持ちがいいくらいにピースが嵌まり真相が解明されていくんだけれども…そう簡単には終らないのが、この作家。一気に、ホラー小説というのを思い出させる内容となる。

主人公が恋人と…“難病に罹った若い女が、恋人である男の努力もむなしく死んでしまう…それだけの話”って映画を見に行って、内容を馬鹿にしてたけど、これってセカ○ー?確かに、この原作本がベストセラーになったこと、そしてこれで泣いてる奴らが、一番のホラーかもしれんと思ってしまった(爆)






個人的採点:70点