雄鹿戸隧道 (岩手県宮古市和井内~下閉伊郡岩泉町大川平井) | 穴と橋とあれやらこれやら

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初めまして。ヤフーブログ出身、隧道や橋といった土木構造物などを訪ねた記録を、時系列無視で記事にしています。古い情報にご注意を。その他、雑多なネタを展開中。

 

2013年4月19日、最初で最後の岩手県探索。
 
この日のネタは、かなりたくさん記事にしている。時系列で落合の吊り橋区界トンネル第9閉伊川橋梁平津戸橋川井橋桐内橋追憶の岩手県北バス川井第10地割の流れ橋第25閉伊川橋梁鹿内沢橋梁押角駅松野隧道。マジ多い(笑)。

 

 

 

 

今宵ご紹介するのは、押角駅を後にして峠を登ること10分。

国道340号の宮古市/岩泉町境に穿たれた隧道である。現在地コチラ

 

 

 

 

 

 

 

手前にあるのはもちろん

隧道竣功碑なのだが…

 

 

 

 

 

 

 

残念なことに

激しく損壊してしまっている(泣)。

 

何らかの事故によるものか、あるいは人為的なものかは不明だが、いずれにせよ悲しい状態に変わりない。大きめのサイズで貼ったので、興味ある方はご覧あれ。

 

ちなみに最上部には「隧道竣功碑」ではなく、篆書で「記念碑」(もちろん右書き)と刻まれている。

 

 

 

 

 

 

改めて、隧道に正対。

石積みポータルと、切石のアーチ環。

 

不思議と重厚さよりも軽やかさを感じる。それは笠石のリズミカルさが素敵だからかも。まあ、個人の意見である(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

扁額。そういえばちゃんと名前を出してなかったが、

雄鹿戸隧道。左端には揮毫者として「英彦」と刻まれている。

 

誰も見てないだろうが(笑)、先ほどの記念碑左端にもあったその名。

「昭和十年三月十六日 岩手縣知事従四位勲三等 石黒英彦」

 

つうわけでこの隧道、昭和十年建造の古洞だった。ちなみに土木学会選近代土木遺産のCランク物件である。

 

 

ところで先ほど訪ねた押角駅とこの隧道、いずれも読みは「おしかど」。この峠の名前も「押角峠」なので、「雄鹿戸」は何か意味を込めて字を当てた表記なのかも。

 

 

 

 

 

洞内の様子。

そのスペックは、延長580m、幅員5.1m、有効高4.5m。昭和十年製にしてはひたすらに立派だ。

 

 

 

 

 

 

 

では、反対側へと向かおう…と振り返って、

なんかこの景にグッときた。「峠」ってこうだよね、みたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、抜けて岩泉側へ。

ポータルデザインは宮古側と共通のようだ。扁額も然り。

 

 

 

 

 

 

 

岩泉側には記念碑はないものの、

違うものが二つあった。

 

 

 

 

 

 

 

まずはこれ。

山神さんに捧ぐ(笑)。いやいや。

 

昭和十年とあるので、隧道竣功直後に建立されたものだ。建立したのは…工定組。

 

 

 

 

 

 

 

工定組ってなんぞ?という疑問が、こちらで解ける。

この隧道の工事を請け負ったのが、岩泉の「工定組」だったということで、この安全祈念碑が当時のものとは思えないが、こうしてちゃんとモニュメント的に残されているのは印象的だ。

 

先ほどの山神碑は、隧道工事一人の死者も出さずに完了(当時の大規模土木工事としては珍しいことだったのだろう)できたことを山の神に感謝して建立されたものだという。いい話だ。

 

ちなみに工定組は、横屋建設株式会社と名を変えて、現在も存続しているという。

 

 

 

 

 

2014年4月(わたくしが訪ねた1年後だ)にJR岩泉線が廃止された際、この峠を貫く押角トンネルは岩手県に無償譲渡された。これを拡幅して国道340号の新トンネルとすることになっていたが、廃止から五年後となる2019年6月5日、この「国道340号押角トンネル(仮称)」も貫通式が開催された。

2020年度内の開通を目指すという新トンネルが供用開始されれば、この雄鹿戸隧道は旧道の隧道となるわけで、その後の処遇が気になるところではある。

 

 

紆余曲折を経て、道路は快適に便利になっていくが、ここ雄鹿戸峠の場合は役目を終えた(終えさせられた)鉄路の遺志も継いだ、新しく生まれ変わったトンネルが誕生しようとしている。岩泉線にも思い入れのあるわたくしとしては、ちょっと胸アツな展開。いつか叶うなら、ここに再訪してみたい。

 

 

 

 

 

 

この岩泉側もまた、

なんかグッときた。

 

 

 

 

 

 

どうってことないと言えばそうなのかもしれないが。

…あー、遠くへ行きたくなってきた(笑)。

 

 

 

 

以上。