【作品#0982】フォールガイ(2024) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

フォールガイ(原題:The Fall Guy)

 

【Podcast】

 

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。

 

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【概要】

 

2024年のアメリカ/オーストラリア/カナダ合作映画

上映時間は126分

 

【あらすじ】

 

映画スターであるトム・ライダーのスタントマンとして活躍していたコルト・シーバースはある日の撮影で腰の大怪我を負ってしまう。それから18か月後。傷は癒えてもスタントマンとして働けなくなっていたコルトの元へ、プロデューサーのゲイルがスタントの仕事を持ち掛けてくる。コルトはその申し出を断るのだが、その映画の監督が元カノのジョディだと聞いてオーストラリアに駆け付ける。

 

【スタッフ】

 

監督はデヴィッド・リーチ

音楽はドミニク・ルイス

撮影はジョナサン・セラ

 

【キャスト】

 

ライアン・ゴズリング(コルト・シーバース)

エミリー・ブラント(ジョディ・モレノ)

アーロン・テイラー=ジョンソン(トム・ライダー)

ハンナ・ワディンガム(ゲイル)

ウィンストン・デューク(ダン・タッカー)

 

【感想】

 

テレビシリーズ「俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ(1981-1985)」を元にしていたアクションコメディは、批評家からは好評を得たが興行的には振るわず、1億3千万ドル前後の製作費に対して、1億7千万ドル程度のヒットにとどまった。

 

また、冒頭のアクションシーンでスタントドライバーのローガン・ホラデイによる車の8回転半はギネス記録であり、「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」の7回転を破った。

 

いかにもデヴィッド・リーチ監督らしい作品。特に「デッドプール2(2018)」以降、アクションコメディを作り続けたデヴィッド・リーチ監督の真骨頂。そして、スタントマンからキャリアを築いてきたデヴィッド・リーチ監督がスタントマン主演の映画を撮るんだからその意味は十分に理解できる。さらに、そのスタントマンを演じたライアン・ゴズリングは「ドライヴ(2011)」でスタントドライバーを、「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命(2012)」でスタントショーを演じる男を演じていた。まさにうってつけの二人が組み合わさった格好だ。

 

映画の冒頭からかつてデヴィッド・リーチがスタントマン時代に携わった「ボーン・アルティメイタム(2007)」の映像(もしかしてあの爆風に吹き飛ばされたのはデヴィッド・リーチ本人⁉)を皮切りに、自身が監督した「アトミック・ブロンド(2017)」や「ワイルド・スピード/スーパーコンボ(2019)」なんかの映像が使用されている。

 

また、近年のスタントマン映画と言えば、クエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)」であろう。この映画ではレオナルド・ディカプリオ演じるリック・ダルトンの専属スタントをブラッド・ピット演じるクリフ・ブースが務めるというものであった。そのブラッド・ピットのスタントをかつてデヴィッド・リーチは務めており、前作「ブレット・トレイン(2022)」ではそのブラッド・ピットを主演にしたアクションコメディを監督していた。

 

スタントマンを取り上げた映画と言えばハル・ニーダム監督、バート・レイノルズ主演の「グレートスタントマン(1978)」という映画がある。ちなみに、ハル・ニーダム監督もデヴィッド・リーチと同様にスタントマンから映画監督になった映画人であり、スタンツ・アンリミテッドという会社を設立している。そして、ラストに道のない場所を飛び越える危険なカースタントがあるのも本作と同じであるので、ハル・ニーダムやバート・レイノルズ、ならにび「グレートスタントマン(1978)」へのオマージュも捧げられていることだろう。

 

他にも、ピーター・オトゥールがスタントマンを演じた「スタントマン(1980)」という映画なんかもあるが、スタントマンをフィーチャーした映画は少ない。ちなみに、ドキュメンタリー映画であれば、「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち(2021)」という、スタントをする女性を取り上げた作品がある。

 

トム・クルーズ(トム・ライダーのトムはこの人からの引用だろう)にジェイソン・ボーン、ジャン・クロードという名前の犬、主人公と犬という組み合わせでかつ犬が股間に噛みつくというのは、デヴィッド・リーチがノンクレジットながら共同監督として携わった「ジョン・ウィック(2014)」シリーズへのオマージュならびに言及、さらにラストで主人公を受け止める救命マットにはデヴィッド・リーチが立ち上げて本作の製作にも携わっている製作会社87ノース・プロダクションズの文字が。とにかくかつてのアクション映画や映画人に関するあれこれが登場する。

 

物語は特に凝っておらず、非常にシンプル。SFアクション映画の監督を務める元カノと、スタントでの事故を機に姿を消したスタントマン。そのスタントを務めていた俳優の不祥事の火消し役とは知らずにプロデューサーによって撮影現場に呼び寄せられたスタントマンがその事件に巻き込まれていくというものである。その解決と共に別れた男女が愛を取り戻していく。

 

アクションも映画の撮影として出てくるカークラッシュ、格闘、火だるまがあり、さらに自分を悪人に仕立て上げようとする人間たちとの格闘、カーチェイス、銃撃戦、大規模な爆破、ジャンプなどなどバラエティに富んでいる。また、ドラッグを盛られた際のアクションも他とは異なる撮り方をしている。

 

さらに、他の映画への異常なまでの言及は映画ファンを喜ばせるところだ。ドラッグを盛られてハイになった状態になると、コルトのそばにずっとユニコーンがいるのは「ブレードランナー(1982)」からの引用だろう。また、コルトとジョディが電話するシーンでスプリットスクリーンになるのも今ではあまり使われなくなった演出への言及であり、この演出は「ワイルド・スピード/スーパーコンボ(2019)」の序盤でドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサムで使われている。

 

デヴィッド・リーチ監督らしく、現実から少し離れたアクションをコミカルに包み込むというほぼ一貫したスタイルである。シャーリーズ・セロンと現実的なアクションを構築した監督デビュー作の「アトミック・ブロンド(2017)」を除けば、以降の「デッドプール2(2018)」以降はずっと同じスタイルを貫いている。なので、そのスタイルが合えば本作だって楽しめるはず。

 

ラストで落ちるコルトを受け止めるのはデヴィッド・リーチが立ち上げた87ノース・プロダクションズがプリントされた救命マットである。まるでスタントマン自体をこのプロダクションが受け止めているかのようだ。

 

エンドクレジットに入ると予想通り本作のスタントマンの頑張りを見せる映像が次々に流れていく。当然本作のライアン・ゴズリング演じるコルト・シーバースにも実際に演じたスタントマンがいるわけで、この辺は「カメラを止めるな!(2017)」なんかと共通する終わらせ方である。

 

また、タイトルクレジットが出るところはライアン・ゴズリング演じるコルトの周囲をカメラがぐるっと回るところであった。そこでスキャンしたコルトの顔を、犯罪現場を映した映像内のトム・ライダーに移し替えることになるわけだ。顔をスキャンしてしまえばあとはどうにでもなってしまうという時代を反映しているわけで、それはアクション映画やSF映画におけるCGにも繋がる話である。

 

さらに、映画製作にAIを使う話では昨年ハリウッドでは大規模なストが敢行されたばかりである。まさに、映画は常に時代との闘いである。テレビが登場し、CGが登場し、動画配信サービスが登場し、そしてAI。それに打ち勝つには「人」しかないのだ。それはトム・クルーズが常にやっていることと大きく違うことはない。もちろん本作にだってCGやポスプロでの調整なんて山ほど行われているだろうが、それでもちゃんと「人」がやっていることに意義がある。

 

デヴィッド・リーチ監督らしいアクションコメディであり、スタントマン上がりの監督としてできる最大限のスタントマン愛ならびに映画愛に溢れた作品。まさにポップコーンムービー。これからも上質なアクションコメディを撮り続けてほしい。

 

【関連作品】

 

「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン(2003)」…本作の冒頭でこの映画の一場面が使用される。

ボーン・アルティメイタム(2007)」…デヴィッド・リーチがスタントマンとして携わった作品で、本作の冒頭でこの映画の一場面が使用される。

ワイルド・スピード/MEGA MAX(2011)」…本作の冒頭でこの映画の一場面が使用される。

「アトミック・ブロンド(2017)」…デヴィッド・リーチが監督した作品で、本作の冒頭でこの映画の一場面が使用される。

ワイルド・スピード/スーパーコンボ(2019)」…デヴィッド・リーチが監督した作品で、本作の冒頭でこの映画の一場面が使用される。

「Mr.ノーバディ(2021)」…デヴィッド・リーチがプロデューサーを務めた作品で、本作の冒頭でこの映画の一場面が使用される。

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(2022)」…本作の冒頭でこの映画の一場面が使用される。

 

「フランケンシュタイン(1931)」…コミコンの参加者にこの映画のキャラクターに扮した人物がいる。

「ダンボ(1941)」…本作の中で言及される。

「真昼の決闘(1952)」…本作でジョディが作っているのはSF版「真昼の決闘」と言われている。

「ベン・ハー(1959)」…エンドクレジットで言及される、アカデミー賞作品賞を受賞した映画の中でスタントに依存した映画の一つ。

ロッキー(1976)」…エンドクレジットで言及される、アカデミー賞作品賞を受賞した映画の中でスタントに依存した映画の一つ。

「ブルース・ブラザース(1980)」…コミコンの参加者にこの映画のキャラクターに扮した人物がいる。

「プリティ・ウーマン(1990)」…コルトがジョディと議論する際に、同じジュリア・ロバーツが出演した「ノッティングヒルの恋人(1999)」と設定を混同する場面がある。

「テルマ&ルイーズ(1991)」…コルトが危険なカースタントをする前にライダーと話す場面で言及される。

ラスト・オブ・モヒカン(1992)」…ダンがこの映画のセリフを言ってコルトが映画名を当てる場面がある。

逃亡者(1993)」…ライダーのペントハウス内で敵が攻撃する前に、ダンが「もし逃亡者のハリソン・フォードだったら…」と言う場面がある。

ブレイブハート(1995)」…エンドクレジットで言及される、アカデミー賞作品賞を受賞した映画の中でスタントに依存した映画の一つ。

「タイタニック(1997)」…エンドクレジットで言及される、アカデミー賞作品賞を受賞した映画の中でスタントに依存した映画の一つ。

「メメント(2000)」…ジョディがライダーの記憶力について言及される場面で引用される。

ワイルド・スピード(2001)」…ダンがこの映画のセリフを引用する。

「シュレック(2001)」…コミコンの参加者にこの映画のキャラクターに扮した人物がいる。

「ラブ・アクチュアリー(2003)」…ジョディが毎年クリスマスに見る映画。

ロッキー・ザ・ファイナル(2006)」…ダンがこの映画のセリフを引用する。

「アトミック・ブロンド(2017)」……コミコンの参加者にこの映画のキャラクターに扮した人物がいる。

 

 

 

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【予告編】