【作品#0588】ワイルド・スピード/MEGA MAX(2011) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ワイルド・スピード/MEGA MAX(原題:Fast Five)


【概要】

2011年のアメリカ映画
上映時間は130分

【あらすじ】

刑務所へ護送されるドミニクを救い出したブライアンらは国際指名手配されることになり、ブラジルに身を寄せる。そこでかつてのドミニクの仲間ヴィンスと再会したブライアンは、彼から持ち掛けられた仕事をすることになるが…。

【スタッフ】

監督はジャスティン・リン
音楽はブライアン・タイラー
撮影はスティーヴン・F・ウィンドン

【キャスト】

ヴィン・ディーゼル(ドミニク)
ポール・ウォーカー(ブライアン)
ジョーダナ・ブリュースター(ミア)
タイリース・ギブソン(ローマン)
ガル・ガドット(ジゼル)
サン・カン(ハン)
ドウェイン・ジョンソン(ルーク)
ヨアキム・デ・アルメイダ(レイエス)
エヴァ・メンデス(モニカ)※ノンクレジット

【感想】

「ワイルド・スピード」シリーズ5作目となる本作は、シリーズ最高の売り上げを記録した前作を更に2億ドル以上も上回る6億2千万ドルの大ヒットを記録した。ヴィンスを演じたマット・シュルツは「ワイルド・スピード(2001)」以来、ローマンを演じたタイリース・ギブソンとモニカを演じたエヴァ・メンデスは「ワイルド・スピードX2(2003)」以来のシリーズ出演となった。また、ポール・ウォーカーとヨアキム・デ・アルメイダは「ボビーZ(2007)」でも共演している。

前作の副題が「MAX」だからってその次回作が「MEGA MAX」とは何とも頭の悪そうなタイトルである。

本作の冒頭は前作のラストの続きである。「俺は逃げない」と言って裁判にかけられ懲役25年を喰らい刑務所へ護送されるドミニクのもとへ、ブライアンや妹のミアが助けにやってくるところである。観客を掴む冒頭のアクションとしては手短で良いと思うが、バスが何回転も横転させるのはやり過ぎだろう。もはやドミニクを助ける気はないとすら思える行為である(実際なら乗客全員死んでいるだろうな)。本シリーズは基本的に何でもありなのでこんなところにツッコミを入れるのは野暮だともちろん承知しているが、それでもこれはやり過ぎだわ。

ブライアンは、1作目で刑事だったが、ドミニクを逃がしたことで2作目ではクビになっており、その2作目の活躍が認められて4作目ではFBIにリクルートされている。そして、ドミニクを捕まえるためにFBIを辞めているというのが現在の5作目である。異色の経歴で、あっちにもこっちにも留まらないところに彼の信条のなさが表れているとは思うが、所詮は犯罪者なんだと思う。

すると、舞台はブラジルに移行して、シリーズ1作目以来の登場となるヴィンスの手ほどきで貨物列車に乗る車を奪う仕事をブライアンは請け負うことになる。ここのアクションシーンもツッコミどころは山ほどあるが(列車は止まらないし、捜査官はかなり後まで気付いてすらいない…)、シリーズでも屈指のアクションシーンだったと言える。ただ、迫力はあるのに、音楽がいまいち。特にこのシリーズはオリジナル楽曲の音楽が弱いのが難点でもある。

また、本シリーズは基本的に犯罪者と彼らを捕まえる側(警察やFBI)が登場したのだが、もうブライアンにその捕まえる側の役目を担わせるのは無理だろう。そこで登場したのがアメリカ外交保安部の捜査官ルーク・ホブスである。「何が何でも捕まえる」が信条の彼も最終的にドミニクらを逃がすことになり、ブライアンにしてもホブスにしても犯罪者に対して甘々すぎる。彼らはドミニクの人間性に惹かれてそういう判断をしたという筋書きだが、ドミニクってそんなに魅力的かな。ドミニクを追ってブラジルまでやって来たホブスは、捜査の途中で敵の襲撃により部下を何人も亡くしている。その現場でドミニクが自分を助けてくれたからと言って逃がすかな。ホブスの信条なら「それはそれ、これはこれ」だろう。元はと言えばドミニクやブライアンのせいで彼の部下が死んだんじゃないか。その後彼らは殴り合いの喧嘩もするのだが、彼らの年齢設定を考えるとあまりにも稚拙すぎる。共通の敵レイエスを打倒するためとはいえ、ホブスはドミニクらに対してもっと厳しく接するべきだった。

また、ホブスは通訳に地元警察のエレナ・ネベスを指名している。彼女は警察官の夫を亡くしながらも警察官を続け、地元警察では唯一買収されていない警察官という設定である(いくら何でも都合の良すぎる設定だ)。そんな彼女もドミニクに助けられる場面があり、その後のやり取りでエレナはドミニクを信頼するようになるという流れもどうも説明的である。また、ここでエレナが犯罪者のドミニクの肩を持つことになれば、彼女が誠実だった警察官の夫を亡くしたという設定も、地元警察で唯一買収されていない警察官であるという設定もすべてぶち壊すになる。脚本家が考えた設定を次の展開で丸ごとぶち壊しにするのはどうかと。

中盤手前まではテンポよく進んだ本作も、いざレイエスの金を盗み出すことになるまでは急にテンポダウンする。中でも彼らがパトカーを使って夜のブラジルの道でレースする場面は全く必要性を感じない。レースシーンが売りの本シリーズが徐々にそのレースシーンの要素を削いでいき、本作でもそんなシリーズファン向けの目配せなら尚更だわ。そんなことをしていると、ホブスに見つかってしまう(お前らアホか)。

あと、本作で描かれるハンのキャラクターを鑑みると、時系列的には後になるシリーズ3作目「ワイルド・スピードX3/TOKYO DRIFT(2006)」でヤクザのあがりをくすねてカーチェイスの末に自滅するというのはどうも理解しがたい(ただ、このハンも後のシリーズで覆ることになる…)。

終盤は巨大な金庫を2台の車で街中引きづり回すというとんでもアクションシーンになる。ここもツッコミを入れるのは野暮だが、もし仮にあの巨大な金庫を車で引っ張るなら装甲車くらいじゃないと無理じゃないか。あと、ここまでやりたい放題やるならやっぱりベースはコメディでないとな。このぶっ飛んだ感じと、本作のシリアスさ加減(顔と名前の一致するキャラクターがちょっと死に過ぎな気はする)がアンマッチだと感じる。

最終的にレイエスの金をすべて奪ったドミニクらは、亡くなった仲間のヴィンスの奥さんにお金を残した以外はどうやら自分たちで使っているようだ。汚職にまみれたお金をブラジルからほぼすべて持ち出したことになる。やっぱり自分や自分の仲間さえ良ければそれで良しというところに欺瞞を感じる。彼らが良い奴として描きたい本シリーズなら、地元の市民に配るとかそれくらいの事をしてくれないと割に合わないぞ。ブラジルの地元警察は汚職まみれで、唯一買収されていなかったエレナはドミニクの彼女になってついてきた(亡くなった夫が悲しむぞ!!)。町は散々破壊され、多大な損害を被り、街から多額のお金も消え去った。彼らが逃げる先として選ばれたブラジルが不埒でならない。

また、ミッドクレジットでホブスが登場し、彼に新たな資料を持って来るのが「ワイルド・スピードX2(2001)」以来の出演となるエヴァ・メンデス演じるモニカである。彼女が持ってきた資料には死んだはずのレティの写真がある。前作で死んだはずのレティが次回作で「実は死んでいなかった」として再登場する。これはさすがに本シリーズのファンですら辟易したのではないだろうか。

何でもありのシリーズとはいえ、所詮は犯罪者の主人公たちが自分たちよりももっと悪い奴をやっつけたからと言ってすべて解決という終わり方はどうもスッキリしない。その悪党の肥溜めをそいつらよりは悪くない犯罪者がくすねたのならあんまりやっていることはレイエスと変わらないと思うぞ。破壊されたブラジル市民からすれば、レイエスの金が小悪党のドミニクに移行しただけ。

チーム感を出していくのは、本作と同年の「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル(2011)」と同様なのでその方向性は間違っていないと思う。

 

【関連作品】

ワイルド・スピード(2001)」…シリーズ1作目
ワイルド・スピードX2(2003)」…シリーズ2作目
ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT(2006)」…シリーズ3作目
ワイルド・スピード MAX(2009)」…シリーズ4作目
「ワイルド・スピード MEGA MAX(2011)」…シリーズ5作目
ワイルド・スピード EURO MISSION(2013)」…シリーズ6作目
ワイルド・スピード SKY MISSION(2015)」…シリーズ7作目
ワイルド・スピード ICE BREAK(2017)」…シリーズ8作目
ワイルド・スピード / ジェット・ブレイク(2021)」…シリーズ9作目
ワイルド・スピード / ファイヤーブースト(2023)」…シリーズ10作目
ワイルド・スピード / スーパーコンボ(2019)」…スピンオフ

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

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【配信関連】

 

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├オリジナル(英語/ポルトガル語/スペイン語/フランス語/イタリア語)

 

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【ソフト関連】

 

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音声特典

├ジャスティン・リン(監督)による音声解説

映像特典

├未公開シーン

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├魅力的なカーラインナップ

 

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大列車強盗

チーム再集結

ドムの変遷

ブライアン・オコナー:FBI捜査官から逃亡犯へ

ホブスの登場

ドム対ホブス

撮影現場での監督ジャスティン・リン

金庫チェイス・シーンの舞台裏

タイリースTV

U-CONTROL

マイ・シーンズ

 ※下線部は上記DVDに収録されていないもの

 

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収録内容

├上記BDと同様