【作品#0583】ワイルド・スピードX2（2003）

【タイトル】

ワイルド・スピードX2（原題:2 Fast 2 Furious）

【概要】

2003年のアメリカ/ドイツ合作映画
上映時間は108分

【スタッフ】

監督はジョン・シングルトン
音楽はデヴィッド・アーノルド
撮影はマシュー・F・レオネッティ

【キャスト】

ポール・ウォーカー（ブライアン）
タイリース・ギブソン（ローマン）
エヴァ・メンデス（モニカ）
コール・ハウザー（ベローン）

【感想】

大ヒットした「ワイルド・スピード（2001）」の続編だが、続投したのは主演のポール・ウォーカーとビルキンス捜査官を演じたトム・バリーのみとなった。ヴィン・ディーゼルは前作の監督ロブ・コーエンが監督する「トリプルX（2003）」の撮影のために本作出演を断念したとされている。そんな本作は前作を上回る2億3千万ドルのヒットを飛ばした。

前作からの続投組が2人だが、1人は主人公なので辛うじて続編と認識できるレベルは担保できている。しかも、前作の焼き直しのような物語であり、いくら監督を変えたからと言ってその成果も出ているとは感じない（ジョン・シングルトンのフィルモグラフィーを見ると、本作のような作品を監督するようには思えない）。前作のヴィン・ディーゼルは特に魅力に感じなかったのだが、本作の主人公の相棒ローマンを演じたタイリース・ギブソンはもっと魅力を感じない。80年代以降のハリウッド映画によく出てくる黒人という印象しか残らない。

警官だったブライアンは前作のラストの一件が原因で警官をクビになっており、ロスからマイアミにやってきたという設定だ。そのブライアンが捕まり、過去の容疑を取り消す代わりにFBIに協力するように言われ、女性警官がおとり捜査をしている男の仕事を手伝い、犯行現場を押さえたいとして協力させられることになる。一度警察を裏切った男に同じような仕事を再び託すとはなんとも生温い世界だと感じてしまう。前作ではFBIや警察から目の敵にされたブライアンなんだから、それでも協力せざるを得ない状況を作るべきだったと思う。

そして、相棒となるブライアンとローマンは再会するやいなや殴り合いの喧嘩をおっ始める。「勘弁してくれ」と言いたくなる展開である。以降はただの仲の良い友達という状態のまま映画終了までいってしまう。彼らが喧嘩したり意見が食い違ったりする場面は基本的になく、まだ前作のブライアンとドミニクの関係の方が遥かにマシだと感じるレベルである。

また、女癖の悪いという設定のブライアンは、悪玉ベローンにおとり捜査をしているモニカに惚れているようだが、彼らの距離が縮まることもなく、モニカのラストカットに匂わせがある程度であり、こちらも噛みごたえがあまりない。だったらセクシーなモニカという女性を配したのは単なる飾りだったんだろうなと言わざるを得ない。

結局、ブライアンはおとなしく指示に従い、最後は騙されて、思いを寄せるおとり捜査をしているモニカを助けるために無茶をする程度である。車ごとジャンプして川を下る船に突っ込むという無茶はあまりに非現実的すぎるし、船に車が飛び乗った時点でほぼ終わっている。どう考えても不利な状況の2人が銃であっさり敵をやっつける流れはグダグダである（本来なら船の中でもうひと展開ありそうだが、予算不足で以降のシーンを削ったのか）。

1作目は警官と悪党という対立構造が辛うじてあったのだが、本作は元警官の犯罪者と現役の犯罪者がタッグを組み、最終的に金を横取りして映画が終わる。ブライアンとローマンのような笑顔に観客がなれるとは到底思えない。おとり捜査をしているモニカという存在が現実に引き戻す存在であるべきなのに、主人公が思いを寄せる存在でかつあまりに警官っぽくないところが本作をよりチャラくしているのだろう。日本車もたくさん登場するし、車好きには楽しめる要素もあるだろうが、なかなか出来の酷かった1作目より出来は遥かに落ちる。