【作品#0621】ワイルド・スピード/ジェットブレイク(2021) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ワイルド・スピード/ジェットブレイク(原題:F9)

【概要】

2021年のアメリカ映画
上映時間は143分

※ディレクターズ・カット版は150分

【あらすじ】

レティと息子のブライアンと平穏な生活を送っていたドムのところへ、ミスター・ノーバディが襲撃を受けたという知らせが届く。

【スタッフ】

監督はジャスティン・リン
音楽はブライアン・タイラー
撮影はスティーヴン・F・ウィンドン

【キャスト】

ヴィン・ディーゼル(ドミニク)
ミシェル・ロドリゲス(レティ)
ジョーダナ・ブリュースター(ミア)
タイリース・ギブソン(ローマン)
ジョン・シナ(ジェイコブ)
サン・カン(ハン)
シャーリーズ・セロン(サイファー)
ヘレン・ミレン(クイーニー)
カート・ラッセル(ミスター・ノーバディ)

【感想】

「ワイルド・スピード」シリーズの9作目には、ジャスティン・リンが「ワイルド・スピード/EURO MISSION(2013)」以来の監督に復帰した。コロナ禍前には撮影も完了していたが、公開予定は1年以上遅れることになった。また、2億ドル以上の予算が投じられたが、コロナ禍の影響もあってか7億2千万ドルとやや期待外れの成績に終わった。

本作はシリーズ屈指の退屈な作品と言えるのではないだろうか。話をあれもこれも創作しまくり、更には過去にあった出来事を改変し、それを登場人物に説明ばかりさせている。とにかく説明のための場面が多い。

また、登場人物はいくら何でも多すぎる。ドミニクの弟ジェイコブという新キャラクターに加え、「ワイルド・スピードX3/TOKYO DRIFT(2006)」で死んだはずのハンが「実は生きていた」としてシリーズ復帰し、そのハンが面倒を見ていたエルという新キャラクターが登場。さらには、ドミニクの兄弟に関わるとして妹ミアも再登場する。その全員を同じ場所に集めるわけにも行かず、何組かに分かれて行動するため、話があちこちに飛びまくって特に前半から中盤は話が進んでいる感じはしない。

 

しかも、その兄弟ネタも、以前にショウ兄弟でやったばかりじゃないか。さらに地球上ではやることがなくなったのか、ついに車で宇宙にまで行ってしまう。このシークエンスも別に必要ないだろう。ギャグにすらなっていない。

そして、このシリーズで「死んだはずのキャラクターが実は生きていました」というのは、レティ、デッカードに続いて(数え間違いがなければ)3度目である。このハンが死を偽装したことにミスター・ノーバディが関与しているというのも無理がある。ここまでやりたい放題にすると逆にキャラクターへの興味が薄れることになるぞ。

また、ローマンがテズとラムジーに対して、「数々の危険なことをしてきたが俺は無傷だから特別だ」と言っているが、過去作においてジゼルやエレナは死んでしまっているわけで、こんな不謹慎なことをギャグ混じりに言わせるなよと思う。基本的に人の生き死にに関しては割と無神経なシリーズなのでやむなしか。

そして、本作はドミニクが弟のジェイコブと対立しているが、最終的に和解するというドラマを用意している。冒頭の彼らの親がレース中に死んでしまい、その死に弟のジェイコブが携わったとドミニクは決めつけて、彼らは対立することになる。その顛末は映画の中で度々フラッシュバックしたり、真相が語られたりして明らかになっていくのだが、何ともくだらない話である。そのフラッシュバックの度に話が停滞するため、これも話がなかなか進まない要因である。しかも、彼らが和解するのも、ジェイコブが親玉から裏切られたからである。この兄弟のドラマも全く描けていない。

さらには、前作「ワイルド・スピード/ICE BREAK(2017)」で悪役として登場したシャーリーズ・セロン演じるサイファーは最後に逃げるという、どう考えても続編ありきの展開であった。本作でも画面に度々顔を出すが、終盤近くまでほとんど何もしておらず、最後の最後にようやく動き出す。ただ、戦闘機に乗ってドミニクをミサイルで攻撃したは良いが、被弾したドミニクの乗る車が吹き飛んでそこにサイファーの乗る戦闘機が激突するという、何とも間抜けな結末が用意されている。前作にしても本作にしてもサイファーってただの間抜けじゃない!?シャーリーズ・セロンを起用した意味が分からん。

それから、冒頭にドミニクは平穏な生活を求めていたが、ミスター・ノーバディが襲撃を受けたとの報告を受けてやっぱり家を出ることにする。殺されたエレナとの間に生まれた息子ブライアンを置いて、レティもドミニクも家を出ることになる。後に説明が入るのだが、「あのブライアン」が預かっているという設定のようだ。だったら最初からそう言えば良いものを、両親ともに息子を放ったらかしにして家を出てきたように見えてしまう。結局、このリトルブライアンは映画の冒頭に登場して以降ラストまで出てこない。一度は愛したエレナを殺したサイファーへの復讐という観点があるなら、ドミニクはせめてエレナのことを思い出すとか、ブライアンに電話をしてリトルブライアンの状態を気にするとかそういった描写を入れるべきじゃないか(別に電話ならドミニク視点だけでも成立するはず)。本作でこそ言っていなかったが、ドミニクは毎作品のように「ファミリーを大事にしている」と言っていたじゃないか。結局、兄弟のドラマを優先しちゃったもんだから、何のために家を出てきたのかという当初の出発点が完全に忘れ去られてしまっている。

磁力を使ったカーアクションに関しては、ジャスティン・リンっぽいなというのは感じる。「ワイルド・スピード/MEGA MAX(2011)」でも大きな金庫を振り回しながらカーチェイスしていたのを思い出す。ただ、本作では磁力を使ったカーアクションに頼りすぎており、何かを吹き飛ばすと敵に命中し、味方が吹き飛ばされたら落下地点に車を向かわせるの繰り返しになっている。磁力を使ったアクションシーンは一度に留めるべきだった。

結局のところ、これほどグダグダになったのは登場人物を増やしすぎたのが要因。どう考えても多すぎ。別にヘレン・ミレン演じるクイーニーの出番なんて必要なかっただろう。完全に風呂敷を広げすぎて収拾がついていない。たとえ猛スピードで車が走ろうが、映画全体が停滞してしまっている。

 

【関連作品】

ワイルド・スピード(2001)」…シリーズ1作目
ワイルド・スピードX2(2003)」…シリーズ2作目
ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT(2006)」…シリーズ3作目
ワイルド・スピード MAX(2009)」…シリーズ4作目
ワイルド・スピード MEGA MAX(2011)」…シリーズ5作目
ワイルド・スピード EURO MISSION(2013)」…シリーズ6作目
ワイルド・スピード SKY MISSION(2015)」…シリーズ7作目
ワイルド・スピード ICE BREAK(2017)」…シリーズ8作目
「ワイルド・スピード / ジェット・ブレイク(2021)」…シリーズ9作目
ワイルド・スピード / ファイヤーブースト(2023)」…シリーズ10作目
ワイルド・スピード / スーパーコンボ(2019)」…スピンオフ

 

 

 

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【予告編】

 

 

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【ソフト関連】

 

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音声特典

├ジャスティン・リン(監督)による音声解説

映像特典

├NGシーン集
├ジェットブレイクのすべて
├カーアクションへのこだわり
├家族の絆
├ハンの復活
├ジャスティン・リンの一日
├ジョン・シナが紹介 スーパーカーの世界

 

<4K ULTRA HD+BD>

 

収録内容

├上記BDと同様