【作品#0589】ワイルド・スピード/EURO MISSION(2013) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ワイルド・スピード/EURO MISSION(原題:Fast & Furious 6)


【概要】

2013年のアメリカ/日本/スペイン/イギリス合作映画
上映時間は130分

【あらすじ】

モスクワで何億円もの価値のあるチップがオーウェン・ショウ率いる犯罪組織に奪われる事件が発生した。その組織にはかつてドミニクの恋人で死んだはずのレティが所属していたことが判明し、ドミニクは仲間と共に彼女を救い出そうとするが…。

【スタッフ】

監督はジャスティン・リン
音楽はルーカス・ビダル
撮影はスティーヴン・F・ウィンドン

【キャスト】

ヴィン・ディーゼル(ドミニク)
ポール・ウォーカー(ブライアン)
ドウェイン・ジョンソン(ホブス)
ミシェル・ロドリゲス(レティ)
ジョーダナ・ブリュースター(ミア)
タイリース・ギブソン(ローマン)
サン・カン(ハン)
ガル・ガドット(ジゼル)
ジーナ・カラーノ(ヒックス)
ルーク・エヴァンズ(オーウェン・ショウ)
ジェイソン・ステイサム(デッカード・ショウ)※ノンクレジット

【感想】

シリーズ6作目となる本作は、シリーズ最高のヒットを記録した前作「ワイルド・スピード/MEGA MAX(2011)」を1億6千万ドル以上も上回る7億8千万ドルを記録する大ヒットを記録した。また、ポール・ウォーカーは次回作「ワイルド・スピード/SKY MISSION(2015)」の撮影終了前の2013年11月に友人の運転する車の事故で亡くなり、彼が映画の最後まで撮影に参加したシリーズは本作が最後となった。

前作のミッドクレジットでレティが生きていることが判明し、その事情が本作で明かされることになっていく。「ワイルド・スピード/MAX(2009)」でレティは死んで葬儀まで行われていたが、実は本作の悪役ショウによって生かされて、記憶喪失になっていることを利用されていたのだった。シリーズ作品において一度は死んだとされるキャラクターが後の作品で生き返るのは御法度だと思う。何でもありの「ワイルド・スピード」シリーズだからOKという訳でもない。「ワイルド・スピード/MAX(2009)」の項でも記載したが、作品を遡って評価を下げざるを得なくなるからだ。たとえその作品を楽しんだとしても、もし次回作以降に「実は生きていました」となれば、「じゃあ前作は何だったんだ」という話になる。これは観客だけでなく、シリーズ通して描いてきたキャラクターたちに対しても失礼だと思う。

本作は前作で終結した仲間と共にショウを捕まえることとレティを取り戻すことを軸に進んでいく。敵を脅したり痛めつけたりすると情報が得られ、その情報をもとにまた敵を脅したり痛めつけたりするというのを繰り返していくので、かなり早い段階から飽きてくる。その程度で情報が得られるなら警察で十分じゃないかという話になるので、ここは犯罪者である彼ららしさが求められるところだが、どうも脚本的には楽をした展開に感じる。

そして、「ワイルド・スピード/MAX(2009)」の悪役ブラガまでもが登場する。ブラガから情報を聞き出すためにブライアンは自ら刑務所に入ることにする。そこでもブラガはブライアンに対してあれもこれもすべて丁寧に話してくれる。レティに潜入捜査をさせたことで後ろめたさのあるブライアンがドミニクに協力する動機付けという意味合いが強いのだが、あまりにも不自然なシークエンスになっている。

それから、メインキャラクターが次々に増えたために彼らへの見せ場を用意するためのシーンが多すぎる印象もある。特に終盤の滑走路でのアクションシーンが顕著である。滑走路を走る車、滑走路から飛び立とうとする飛行機内をあっちこっち映しながらアクションシーンが展開していくのは決してスマートとは言い難い。IMDBによると、そのシーンは13分間に及び、そこから計算すると滑走路は30キロ近くあることになるという。あと、終盤になってホブスの相棒ヒックスがショウのスパイであることが判明する。そんなことも見抜けなかったとなるとホブスというキャラクターも崩壊しかねないぞ。

ショウが狙う軍事部品は輸送トラックで移動させられることになるのだが、その輸送トラックをショウに狙われることになる。あのバカでかいトラックで輸送すればすぐにバレルだろうし、案の定護衛の車はたったの2台しかいない(アホか…)。そこでハイウェイを使ったアクションが展開するのだが、CG満載であろう映像とはいえ迫力は十分。

そして、「ワイルド・スピード/MAX(2009)」より出演していたハンの恋人ジゼルは、ラストのアクションシーンの最中、ハンを守るために命を犠牲にする。別にジゼルが死ぬ必要はないと感じるのだが、時系列的には本作の後を描く「ワイルド・スピードX3/TOKYO DRIFT(2006)」でジゼルが登場しないので止む無くジゼルを死なせるという脚本にしたのだろう。辻褄合わせのためにキャラクターを殺すなんてまあ人名を軽んじすぎ。それぞれが別の道を歩むという結末でも良かったはず。そして次回作の撮影中に本シリーズの主役の1人ブライアンを演じたポール・ウォーカーが実際に死んでしまうのだから製作陣も映画だからと言って軽々しくキャラクターを殺したり生き返らせたりすべきではないな。

それから前作「ワイルド・スピード/MEGA MAX(2011)」で警察官だったエレナはドミニクに付いて来て恋人になっていた。そんなエレナもドミニクがレティを取り戻すと「私の家族は警察」だと言ってドミニクのもとを立ち去ることになる。誠実な警察官の夫を亡くしながらも警察官を続け、唯一買収されていない警察官として働いてきたエレナはドミニクの人柄に惹かれてブラジルを後にした。レティが戻って来たからと言ってエレナは理解が良すぎる。結局、一度死んだキャラクターを復活させたことで、前作新登場したキャラクターを事実上死なせていることになる(一応エレナも次回作以降も登場するが)。しかも、「私の家族は警察」と言っていたが、エレネの所属していた警察はエレナ以外全員が買収を受けていたという設定だった。それが家族なの!?ドミニクやらレティに振り回されて、エレナというキャラクターも軸がブレブレ(このキャラクターはシリーズ屈指の可愛そうなキャラ)。

製作陣も細かいことは気にしていないシリーズだとは思うが、ドミニクがファミリーを大事にするという信念を持っている以上、製作陣にとって本作に登場するキャラクターがファミリー同然の存在であるはずだ。なのに、死んだキャラクターを生きていたことにして利用し、そのキャラクターが再登場したことで後に登場したキャラクターには退場してもらう。製作陣がそのファミリーを自分たちの都合に応じて死なせたり生き返らせたりするのはファミリーを大切にしているとは言い難いぞ。これだけ大ヒットして儲かるんだからしょうがないのかもしれないが、せめて主人公が大切にしているというものくらい製作陣も胸を張って大切と言えるくらいに製作すべきだろうに。

 

【関連作品】

ワイルド・スピード(2001)」…シリーズ1作目
ワイルド・スピードX2(2003)」…シリーズ2作目
ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT(2006)」…シリーズ3作目
ワイルド・スピード MAX(2009)」…シリーズ4作目
ワイルド・スピード MEGA MAX(2011)」…シリーズ5作目
「ワイルド・スピード EURO MISSION(2013)」…シリーズ6作目
ワイルド・スピード SKY MISSION(2015)」…シリーズ7作目
ワイルド・スピード ICE BREAK(2017)」…シリーズ8作目
ワイルド・スピード / ジェット・ブレイク(2021)」…シリーズ9作目
ワイルド・スピード / ファイヤーブースト(2023)」…シリーズ10作目
ワイルド・スピード / スーパーコンボ(2019)」…スピンオフ

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

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【配信関連】

 

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【ソフト関連】

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映像特典

├未公開シーン

├シーン解説

├メイキング

├カー・アクションの撮影

├作品を盛り上げる車たち

 

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収録内容

├上記BDと同様