【作品#0581】ワイルド・スピード(2001) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ワイルド・スピード(原題:The Fast and the Furious)


【概要】

2001年のアメリカ/ドイツ合作映画
上映時間は107分

【あらすじ】

警官のブライアンは、車を使ったトラックを狙う犯罪を調査するために、ストリートカーレースを仕切るドミニクという男の店におとり捜査で潜入することになる。

【スタッフ】

監督はロブ・コーエン
音楽はBT
撮影はエリクソン・コア

【キャスト】

ポール・ウォーカー(ブライアン)
ヴィン・ディーゼル(ドミニク)
ミシェル・ロドリゲス(レッティ)
ジョーダナ・ブリュースター(ミア)

【感想】

20年以上も継続する人気シリーズの記念すべき1作目は全世界で2億ドルを稼ぐヒットとなった。ちなみに、本作で交際中という設定のキャラクターを演じたヴィン・ディーゼルとミシェル・ロドリゲスは当時私生活でも交際中であった。

シリーズが始まり20年以上も経過すると、その1作目はこんなにも違ったものだったかと驚かされる。2001年の映画とあり、フロッピーディスクが現役であるところに時代を感じる(もうCD-ROMはあったと思うんだが)。

警官の男が犯罪組織に潜入し、次第にその組織に魅了されていく様子はやはり、キャスリン・ビグローが監督し、パトリック・スウェイジとキアヌ・リーヴスが主演した「ハートブルー(1991)」を連想せずにいられない。ただ、本作は「ハートブルー(1991)」で匂わされたホモソーシャルな関係は感じないし、何ならお互いがお互いを認めていく過程はかなり弱い。特に追われるドミニクをブライアンが助けることでブライアンはドミニクらの仲間入りを果たすのだが、ドミニクが警察から追われ、ドミニクの仲間が誰も助けに来ず、ブライアンがあの場に居なければ成立しないという、かなり不安定なプロットである。潜入捜査という割にはどうも行きあたりばったりな印象は拭えない。また突然、自身のつらい過去を話し始めるところはどうも説明的な印象を受けたし、所詮は犯罪者であるという部分は全く拭いきれていない。

また、そのブライアンがおとり捜査でドミニクの店に潜り込んだという設定は、映画が始まって35分ほど経過してから初めて観客に明かされる。別にここまで引っ張る必然性は感じない。おそらく車に詳しい、車が好きだという理由でこのおとり捜査を担当することになったのだろうが、にしては喧嘩っ早くてとてもおとり捜査が務まりそうな感じはしない。案の定、ライバルのジョニー・トランの車を調べるためにこっそり忍び込んだところをレオンとドミニクに見つかってしまうというミスを犯している。「レースに勝つためにライバルの車を調べていた」という言い訳をしていたが、自分の店で彼らが買った部品は知っているのだからそのうえで何をしに来たのかというツッコミをされたらどうしたんだろうか。

彼らの関係が深まっていく合間に、ブライアンが警察とFBIに報告する場面が挿入される。ブライアンはなぜかFBIの男から目の敵にされており、ここでも喧嘩を始めてしまう。忍び込んだジョニー・トランの工場内から、トラックを狙った犯罪で押収されたであろうDVDプレイヤーなどが大量にあったことを報告すると、状況証拠だけで警察とFBIはジョニー・トランの工場内を捜査することになる。ただ、ここで発見されたDVDプレイヤーはすべて正規で購入したものだと判明し、目論見が外れてしまう。観客もドミニクが主犯格であることは分かっているだろうし、ここでジョニー・トランという中途半端なキャラクターが犯人であるはずもないし、そしたらなぜ大量のDVDプレイヤーを所持しているのかという話になる。どうも脚本が荒削りである。

さらに、ブライアンはFBIの男から主犯格の男を逮捕できなかったことを自分のせいだと言われてしまう。その後、ブライアンは思いを寄せるドミニクの妹ミアに自分がおとり捜査をしている警官であることを白状し、ドミニクが行う犯罪を止めようと説得する。ブライアンはミアから得た情報を頼りにドミニクが行う犯行現場に向かい、負傷したヴィンスを救急搬送するように手配する。一度は信頼を得たドミニクを裏切る形になったが、最終的にブライアンはドミニクを逃がすことにする。この流れで見ると、ブライアンは身内であるはずの警察やFBIから信頼されず、何なら自分たちのミスをなすりつけてきたことに腹を立て、ドミニクらを助けるという選択を取っているように見える。できれば、警察やFBIはブライアンに対して親切で信頼できる存在であり、それでもブライアンが悪党のドミニクを助けるという筋書きにすべきだと感じる(ただ、この設定で生じる感情の機微をポール・ウォーカーが演じられたとは思えない)。こんな警察なら同じ警官のブライアンから裏切られてもしょうがない存在として描くのはある意味簡単である。

それから、ドミニクというキャラクターが異性同性問わず人を引き付ける魅力があるかと言われるとそうとも感じない。もし彼が周囲から一目置かれる存在なら、警察から追われる身となった時に、真っ先に仲間が助けに来て然るべきだ。なのにヴィンスを始めドミニクの仲間は誰一人ドミニクを助けに来ず、ドミニクが家に戻ってくると酒を飲んで楽しんでおり、誰一人としてドミニクを心配している様子はない。「あいつならどうせ大丈夫だ」とか「自分さえ助かればそれで良い」とでも思われていたのだろうか。そう考えると、ドミニクのピンチに仲間が助けに来ず、ブライアンだけが助けに来るという展開はドミニクがあまりにも情けなく見えてしまうから良くなかったと感じる。さらに他の場面でもドミニクがどこか優れている感じもあまりない。ストリートカーレースでドミニクが勝利する理屈もあまりなく、ブライアンが焦って自滅しただけにしか見えない。そして、終盤のトラックを襲撃する場面では、トラックの運転手がショットガンを持っていたことで事態は急変し、襲撃は失敗に終わってしまう。3ヶ月も練った計画だと言っていた割には運転手がショットガンを持っていれば頓挫するというのはただの賭けでしかない。これのどこに3ヶ月も練った箇所があるのだろうか。トラックが立て続けに襲われれば、当然トラックの運送会社や運転手も警戒し、銃を携帯するくらいの対策を打たれるのは目に見えているはずだ。しかもトラック相手なわけだから捨て身の衝突をされたらひとたまりもないないわけで、所詮はただのギャンブラーでしかない。

あと、最後にブライアンはドミニクに自分の車のキーを手渡すのだが、車が横転したドミニクを助けに行くときにわざわざ車のキーを抜くかな。キーを手渡すカットを入れることを優先したのだろうが、どうも不自然(ドミニクがほぼ無傷なのも含めてね)。

警官と犯罪者という男たちのドラマとしても、日本車が数多く登場するカーアクション映画としても微妙と言わざるを得ない。映画の内容的にとても好スタートを切ったとは思えないが、これが手を変え品を変え20年以上も続くんだから映画ってわからないものだと思うわ。

【関連作品】


「ワイルド・スピード(2001)」…シリーズ1作目
ワイルド・スピードX2(2003)」…シリーズ2作目
ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT(2006)」…シリーズ3作目
ワイルド・スピード MAX(2009)」…シリーズ4作目
ワイルド・スピード MEGA MAX(2011)」…シリーズ5作目
ワイルド・スピード EURO MISSION(2013)」…シリーズ6作目
ワイルド・スピード SKY MISSION(2015)」…シリーズ7作目
ワイルド・スピード ICE BREAK(2017)」…シリーズ8作目
ワイルド・スピード / ジェット・ブレイク(2021)」…シリーズ9作目
ワイルド・スピード / ファイヤーブースト(2023)」…シリーズ10作目
ワイルド・スピード / スーパーコンボ(2019)」…スピンオフ

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

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音声特典

├ロブ・コーエン(監督)による音声解説

映像特典

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├レーサーX:製作原案記事

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├マルチ・カメラ・アングルで見るスタントシーン

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├チューンナップ

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├「ワイルド・スピードX2」へのイントロダクション

 

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収録内容

├上記BDと同様