【作品#0708】ジョン・ウィック(2014) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ジョン・ウィック(原題:John Wick)

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。

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【概要】

2014年のアメリカ/イギリス/中国合作映画
上映時間は101分

【あらすじ】

凄腕の殺し屋だったジョン・ウィックは最愛の女性ヘレンと平穏な生活を送るために殺し屋稼業から足を洗っていた。ところが、ヘレンは病気で亡くなり、亡くなる前にヘレンが手配した犬は暴漢に殺され、愛車のマスタングも奪われてしまった。その強盗はジョンがかつて仕事を請け負っていたヴィゴの息子ヨセフであり、ジョンは復讐のために立ち上がる。

【スタッフ】

監督はチャド・スタエルスキ
製作はデヴィッド・リーチ
音楽はタイラー・ベイツ
撮影はジョナサン・セラ

【キャスト】

キアヌ・リーヴス(ジョン・ウィック)
ミカエル・ニクヴィスト(ヴィゴ)
イアン・マクシェーン(ウィンストン)
ウィレム・デフォー(マーカス)
ジョン・レグイザモ(オーレリオ)
アルフィー・アレン(ヨセフ)
ランス・レディック(シャロン)

【感想】

かつて「マトリックス(1999)」でキアヌ・リーヴスのスタントを務めていたチャド・スタエルスキにとっての監督デビュー作は、2,000万ドルという比較的低予算に対し全世界で8,600万ドルを売り上げ、以降のシリーズ化に繋がった。

冒頭から15分くらいかけて本作の基本情報がある程度提示されることになる。主人公のジョン・ウィックは病気で妻を亡くし、後日その妻から「愛すべき存在が必要だ」として犬をプレゼントされる。その犬を連れて立ち寄ったガソリンスタンドで運転する車を欲しがる若者がその夜に車を奪いにやってきて、ジョン・ウィックは負傷し、妻から贈られた犬は殺されてしまう。その車を奪いにやってきた若者はかつてジョン・ウィックのボスだったヴィゴの息子ヨセフである。

ちなみに、ヴィゴの名前の由来を調べると、「戦い/決闘/一騎打ち」の意味があるようで、その意味はラストのジョン・ウィックとの一騎打ちに集約されるだろう。また、ヴィゴの息子ヨセフに関してはキリスト教の聖書にも登場するマリア様の夫であろう。さらに本シリーズでジョン・ウィックがシャワーを浴びる際に背中の大きな刺青が露になり、背中上部には「Fortis Fortuna Adiuvat」という「幸運は勇者を好む」という文字が書かれ、真ん中には十字架を握って祈る両手の刺青が掘られている。また、終盤近く教会へ行く場面がある。その教会の地下にはヴィゴが秘密に隠していた資産があり、教会で銃をぶっ放し、地下にある資産はすべて燃やしてしまう。

タイトルクレジットが表示されると目覚まし時計のアラームが鳴り響く。これはキアヌ・リーヴス主演では「マトリックス(1999)」「フェイク シティ ある男のルール(2007)」と同じである。

この冒頭のシークエンスはキアヌ・リーヴスの一人演技ばかりであるが、グイグイ引き込まれていく。また、キアヌ・リーヴス自身もかつて恋人を事故で亡くしていることもあり、真に迫るものを感じる。そして、このキアヌ・リーヴスはなぜこうも孤高の人が似合うのだろうか。そして、この冒頭のシークエンスはほとんどセリフなく、でも確実に伝わる演出になっている。やはり映像だけでどれだけ分からせるか。それは次の2作品でもバスター・キートンがチラッと映る辺りにリスペクトを感じる。

ジョン・ウィックは亡くした妻の贈りものの犬がヨセフらに殺され、その犬を庭に埋めて家の中に戻ると時計のアラームが鳴っており、時間は6時19分になっている。いつも6時に起きていたジョン・ウィックの生活が乱されていく。19分間もアラームが鳴りっぱなしだったのだろう。

裏社会に生きた人間が引退したとしても再び元居た場所に引きずり戻される。本作が影響を受けたという日本のヤクザ映画や香港映画で散々描かれてきたところである。

血の付いたカットソーを着替えもせずにジャケットだけ羽織ってオーレリオのもとへ向かう。次回作でも同じく白のカットソーを着たままコンチネンタルホテルへ向かう場面もある。また、服に血のついたまま、顔や体に傷が残ったまま話が進んでいく。顔に傷をつける演出を嫌がる俳優は多いらしいが、キアヌ・リーヴスは乗り気だったらしい。

ヴィゴの顧問弁護士のアヴィはヴィゴが時折話すロシア語を理解できず「英語で話してくれ」と言う場面がある。一方で、ジョン・ウィックはガソリンスタンドでヴィゴの息子ヨセフがロシア語で話すとロシア語で返している。ジョン・ウィックがいかにボスに忠実だったかを引き立てる設定になっている。また、彼が仕事で覚えた言葉を5年経った今でも話せるわけだから、腕が落ちていないという彼のアクションの説得力に一役買っているとも言える。

最初の格闘シーンは、夜中のジョン・ウィックの家で行われる。ただでさえ暗い中、ジョン・ウィックは全身黒、ヴィゴの手下連中も黒。さらにはヴィゴの手下連中は黒い顔マスクをしている(もしかしたらスタントマンを使いまわすための工夫かもしれないが)。もちろん照明の調整により見えづらいこともなく、ジョン・ウィックの凄さを表現している。そのシーンがひと段落すると、サイレンの光が家の中に差し込んだことで警察がやって来たことが分かる。ここでようやくモノトーンの世界が色づき始める。また、この警官がジョンの知人であり、家の中の遺体を見ても何の捜査もせずに立ち去るところに彼らの関係性が垣間見える。

次の大掛かりなアクションシーンは、ヨセフがいるナイトクラブで行われる。ここではナイトクラブらしく、暗いところは暗いのだが、様々な色の照明がアクションシーンを彩り、時に赤く、青く演出していく。中でもナイトクラブ正面のスクリーンに投影されている幾何学模様をバックにジョン・ウィックがヨセフを追う場面では、その幾何学模様がジョン・ウィックの迫り来る感じを演出していて最高にカッコいい。また、クラブという音楽を使える場面でその音楽の鼓動やきらびやかな照明がジョン・ウィックの心のうちを表現していたのではないかと思う。

他にもジョン・ウィックが捕らえられて、マーカスが向かいのビルから狙撃で援護しヴィゴの手下と格闘シーンになる際の地面に置かれた照明も良い味を出していた。基本的には昼間でもどんよりとした空模様で画面内もカラッと明るい印象はない。そんな中で照明が果たした役割は大きい。ちなみに、次回作以降でも照明の果たす役割は大きいし、共同監督のデヴィッド・リーチの監督作にも通づるところはある。

そして、敵が近くにいそうなら銃は短く構え、敵が少し離れたところにいれば銃は手を伸ばして構える。移動する際は腰を低くしている。基本はヘッドショット。必要に応じて敵の体を撃って動きを制御してからヘッドショット。また、格闘シーンになると空手や柔道を組み合わせた演出になっている。

また、この格闘シーンの最初のジョン・ウィックのカットでは髪を整えている。これは本作でコンチネンタルホテルにやってくる時や、以降のシーンでも統一されており、「これからやるぞ」という合図みたいで好きな演出なんだが、シリーズ通して使われたという印象はそこまでない。

それから、コンチネンタルホテルという舞台。特殊な金貨がサービスの対価となっており、会員向けに用意された空間としてこのシリーズならではの雰囲気を醸し出している。また、このコンチネンタルホテル内では仕事をしてはならないという規則もシリーズ通して物語を進める上での良い口実になっている。

そのコンチネンタルホテル内で仕事をしてしまったパーキンズがホテルの支配人ウィンストンの指示によって処刑されるシーン。4人のガンマンが対角線上にパーキンズを囲み、一斉に銃を撃つ。これだと向かい合う者同士が相撃ちになる可能性がある。たとえどれほどの腕前があろうとも、もしものことを考えて相撃ちになる可能性のある状況にあえて持ち込むとは思えない。

ラストは、ジョン・ウィックとヴィゴによる戦いとなる。ヴィゴの車を出た男たちはいくら何でもジョン・ウィックの車に轢かれ過ぎ。最後は雨の降る中、ジョン・ウィックとヴィゴによる一騎打ちとなる。クラブでのアクションシーンの派手さ、躍動感などに比べると、やや地味なクライマックスである印象は否めない。

ただ、愛する人の贈りものだった犬を殺されたジョン・ウィックが動物保護施設で応急処置をして、目の合った犬を連れて帰る。そのラストカットが、回想シーンで妻が倒れた場所と同じであり、またこの場面も美しい。

【音声解説】

参加者
├チャド・スタエルスキ(監督)
├デヴィッド・リーチ(共同監督/製作)

上記2名による対話形式の音声解説。スタントマンの育成や格闘シーンの演出を手掛ける87ELEVENを立ち上げた二人が語ってくれる。どのようにジョン・ウィック、ならびにアクションシーンを作り上げていったかを聞くことができる。

【関連作品】


「ジョン・ウィック(2014)」…シリーズ1作目
ジョン・ウィック:チャプター2(2017)」…シリーズ2作目
ジョン・ウィック:パラベラム(2019)」…シリーズ3作目
ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023)」…シリーズ4作目



取り上げた作品の一覧はこちら



【予告編】

 


【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/ロシア語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/ロシア語)

├日本語吹き替え

音声特典

├チャド・スタエルスキ(監督)、デヴィッド・リーチ(製作)
映像特典

├最強部隊の招集
├運命共同体
├ジョン・ウィックを怒らせるな
├ニューヨーク市の裏の顔
├殺し屋の暗号
├レッド・サークル
├予告編/TV-SPOT

 

<4K Ultra HD+BD>

 

収録内容

├上記BDと同様