【作品#0657】フェイク シティ ある男のルール(2008) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

フェイク シティ ある男のルール(原題:Street Kings)

【概要】

2008年のアメリカ映画
上映時間は109分

【あらすじ】

ロス市警のトム・ラドローは手段を選ばぬ捜査の度にワンダー警部がその世話をしていた。ある日、トムとかつて相棒だったワシントンが内務調査課と接触している情報を得たトムはワシントンを尾行すると、コンビニにいたワシントンは二人組の強盗に殺されてしまう。

【スタッフ】

監督はデヴィッド・エアー
音楽はグレーム・レヴェル
撮影はガブリエル・ベリスタイン

【キャスト】

キアヌ・リーヴス(トム・ラドロー)
フォレスト・ウィテカー(ワンダー)
ヒュー・ローリー(ビッグス)
クリス・エヴァンス(ディスカウント)

【感想】

デヴィッド・エアーにとって監督2作目となった本作は、彼が脚本を担当した「トレーニング デイ(2001)」と同様に警察汚職ものとなった。ちなみに、本作でキアヌ・リーヴスはスタント無しで全てのアクションシーンを撮影している。

ロサンゼルスの警察汚職ものと言えば、本作の監督デヴィッド・エアーが脚本を務めた「トレーニング デイ(2001)」を想起させる。その「トレーニング デイ(2001)」でデンゼル・ワシントンが演じた主人公と同様に本作の主人公トム・ラドローも「グレー」ではなく明らかに「黒」の捜査をやりまくっている。ところが、「腕は確かだ」という理由で上司のワンダーからは寵愛を受けているようだ。

また、終盤にかけて内務調査課のビッグスに付きまとわれるトム・ラドローが彼に「超法規的なことは誰がやるのか」と問う場面がある。その超法規的なことは冒頭のシークエンスで見せている。わざわざ韓国人に絡まれ、車を盗ませたことで彼らの拠点を見つけることに成功し、単身乗り込んで銃撃戦の末に敵を全員殺して監禁された双子の姉妹を救出する流れになる。わざわざこんなことしなくても普通に見つかりそうな犯人たちだったので、この場面でトム・ラドローが超法規的な捜査をしていることを示すにはあまりにも説得力に欠ける。また、この観点から映画を観終えても納得できるものはあまりない。

ネタバレになるが、本作はトム・ラドローが所属する警察署は汚職にまみれており、黒幕はワンダーであることが判明する。さらにワンダーに弱みを握られた上層部は彼に手出しできない状況になっていることが終盤に明らかになる。その汚職にまみれていることも、黒幕がワンダーであることもトム・ラドローは終盤まで気付いてすらいない。この「腕は確か」なトム・ラドローだけが事情を知らないとなると、それはそれでこの設定がやや破綻しているようにも思えてしまう。犯罪に目を瞑ることをしていたようだが、これほどの汚職には気付けていないという設定である。

そして、この事実に気付かれたくないワンダーだが、飼いならしているはずのトム・ラドローをあまりにも放置しすぎではないか。ワシントンが死んだ現場に居合わせたことで内勤に異動させられたトム・ラドローだが、そんなことはお構いなしに単独で捜査をしまくっている。ほとぼりが冷めるまでは内勤をしているようにというお達しだったが、そもそもワシントンが殺されてトム・ラドローが内勤に異動したら逆に怪しまれないか。

あと、いくら何でもLAの警察内は汚職にまみれ過ぎだ。上述のようにこれだけ汚職にまみれているのにトムがその事実に何も気付いていないのなら、凄腕という設定はなしで進めていくべきだったんじゃないかと思う。もしくは気付いているが手出しできない事情があるとかそういう方向でも良かったと思う。

また、トムがコンビニに入るワシントンを尾行すると、コンビニに強盗が入る直前であり、トムはワシントンにそれを知らせるも強盗2人組にワシントンが撃ち殺される場面がある。直前にトムとワシントンにいざこざがあったことから、もし検事局が防犯カメラの映像を見れば、トムがチンピラを雇ってワシントンを殺させたと判断することになるとワンダーらは言う。もし仮にトムがチンピラを雇ってワシントンを殺そうとしていたのなら防犯カメラのある現場に来るはずがないだろう。何かしらの疑いを掛けられるかもしれないにしてもちょっと違和感を覚える展開である。

結局というか案の定、黒幕はワンダーである。また、当初はトムの敵として描かれた内務調査課のビッグスが最後にトムに事情を明かす。あの話ぶりだとほとんどすべての事情を知っていたようだが、だとしたらこれほど死者が出るまでにどうにかできただろうという話である。クリス・エヴァンス演じる若手のディスカウントまで死ぬ羽目になっている。これは内務調査課のビッグスを調査する人間が必要になってくるぞ。

本作の主人公トムは、汚職の事情もそれほど理解しておらず、ある意味ビッグスに踊らされていたことになる。たとえ主人公のトムが汚職にまみれた刑事たちを次々に処刑していったところで何かが解決した印象は全くない。ラストカットはカッコいいし、それなりに雰囲気の出ている場面もあるにはあるが、凡作と言わざるを得ない。

【音声解説】


参加者
├デヴィッド・エアー(監督)

監督のデヴィッド・エアーによる単独の音声解説。映画化までの流れ、キャスティングやキャストの魅力、撮影手法、監督のお気に入りのシーン、俳優の受けた訓練、過密スケジュールによる撮影などについて話してくれる。

【関連作品】

 

「フェイク シティ ある男のルール(2008)」…シリーズ1作目

「フェイク シティ2(2011)」…シリーズ2作目だが、前作からはクリフトン・パウエルしか続投していない。


取り上げた作品の一覧はこちら



【予告編】

 


【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├デヴィッド・エアー(監督)による音声解説

映像特典

├未公開シーン集(監督による音声解説付き)
├脚本について
├ストリートの顔
├別テイク集
├メイキング映像集
├撮影の舞台裏
├オリジナル劇場予告編

 

<BD>

 

収録内容

├上記DVDと同様