【作品#0710】ジョン・ウィック:パラベラム(2019) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ジョン・ウィック:パラベラム(原題:John Wick: Chapter 3 - Parabellum)

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。

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【概要】

2019年のアメリカ映画
上映時間は130分

【あらすじ】

世界中の殺し屋から命を狙われることになったジョン・ウィックは、かつて自分を暗殺者に育て上げた組織「ルスカ・ロマ」に助けを求める。

【スタッフ】

監督はチャド・スタエルスキ
製作総指揮はデヴィッド・リーチ
音楽はタイラー・ベイツ
撮影はダン・ローストセン

【キャスト】

キアヌ・リーヴス(ジョン・ウィック)
イアン・マクシェーン(ウィンストン)
ランス・レディック(シャロン)
ハル・ベリー(ソフィア)
ローレンス・フィッシュバーン(バワリー・キング)
アンジェリカ・ヒューストン(ディレクター)
マーク・ダカスコス(ゼロ)
エイジア・ケイト・ディロン(裁定人)

【感想】

7,500万ドルの予算に対し、全世界で3億2千万ドルと予算も売り上げも右肩上がりに伸ばしていった。

冒頭の映像はニューヨークにある「自由の女神像」から始まる。ジョン・ウィックは殺しの世界から引退したのにふとした事件から元いた世界に引きずり込まれ、解決しようとすればするほど泥沼にハマっていき、まさに自由を失った状態である。

本作でも前作同様に冒頭近くにバスター・キートンの映像が彼の出演した2つの映画でチラッと映る。1つ目は「キートンのセブン・チャンス(1925)」である。亡くなった父親の遺産を相続するには期限までに妻が必要なキートンは、知り合いの女性にプロポーズするがことごとく断られる。期限が迫る中、友人が出した花嫁募集の広告を見た街中の女性たちが花嫁姿になり、キートンを追いかけ回すという映画である。まさに前作の終わりから本作にかけて、ジョン・ウィックが街中の殺し屋たちから追いかけられるところと重なるわけである。

その次に映っている映像は「キートンの大列車追跡(1926)」である。後の多くのアクション映画にも影響を与えた「行って帰ってくる話」である。本作でも一度はニューヨークを出たジョン・ウィックがニューヨークに戻ってくる話でもあるし、細かい点でいえば、閉鎖中の橋をバイクで走り途中で折り返して戻ってくるというところも出てくる。

前作同様の色合いで統一されており、特に赤いネオンライトは際立っている。たとえば、劇場の赤いシートとアンジェリカ・ヒューストンの衣装、車のバックライト、ハル・ベリーの家のソファに置いてあるクッションなどなど、その色が使われているものを探すのも楽しめる。また、それ以外にもオレンジがかった黄色や、映画終盤には緑色もキーカラーとして機能していると感じる。当然「マトリックス(1999)」を連想させるものであるし、そこで言ったのと同じ「Guns, lots of guns」と言っている場面がある。

画的な美しさは、ジョン・ウィックとソフィアが向かい合って話す場面を横から捕らえたショット。この場面の二人の距離感、カメラからの距離感、各所に置かれたキャラクター、犬、家具の配置、そして照明の具合が見事であり、本作で一番美しい場面であると感じる。

シリーズを追うごとに異なる武器や舞台を演出している。まず、冒頭のアクションシーンでは骨董品屋で行われる。どうやら南北戦争時に使用された銃器が登場し、どの銃にどの弾が合うかを調べなければならない。さらには向かい合ったジョンと敵が背後のガラスの中に武器があるのを確認すると、すぐさま振り返ってガラスを破りナイフを投げつけ合う場面は笑える。

ナイフを使ったアクションは過去の2作品にも登場したがジョンも敵もナイフをこれでもかと投げ合うほど登場しなかった。過去の作品とは異なる武器を出す、あるいはそれ以上に出す。これによって作品ごとにアクションのインフレを起こしている。そして、最後は刃物としては最もデカい斧をジョンが両手で振りかぶって放り投げると画面前方にいる敵の頭に命中する。

車に轢かれたジョン・ウィックが立ち上がって馬小屋に逃げ始めてから殺し屋たちは車を降りて来る。本気でジョン・ウィックを殺す気があるのかと思ってしまうくらいに遅い。これなら車を降りるのに時間がかかる理詰めをするか、ジョン・ウィックが車に轢かれそうで避けたという展開にすべきだったと思う。

馬小屋を出るとジョンは現代の街中を馬で疾走する。原題の街中を馬で疾走するといえば「トゥルーライズ(1994)」や「ニューヨークの恋人(2000)」などを思い出す。

なぜ馬を乗るジョン・ウィック相手に殺し屋たちは銃を持っているのになぜ真っ先に素手で戦おうとするのか。もし素手で戦うという展開にするのなら、最初から銃を持っていない殺し屋という設定にするか、直前の戦いで銃を弾き飛ばされたとか、色々考えられたと思う。

これは後半のバイクチェイスシーンにも同様のことが言える。なぜバイクに乗った殺し屋が銃ではなく刀を振り回しているのか。新たなバイクチェイスシーンを作り上げようという気概こそ感じるが、だったら銃を持っていないことが不自然にならないような設定を直前に入れることができなかったものか。別に敵がどの武器で戦おうが、それはアクションシーンのバリエーションという観点である意味気にならない。ただ、殺すことが目的ながら銃を持っているのに使わないとなるのなら、それがある程度理詰めされるべきだったと思う(ある程度で良いと思う)。

前作に「主席連合」の人間こそ登場したが、ジョン側を裁く人間として裁定人が登場する。ただの敵ではないジョンを裁く確かな理由のある人間が登場し、ジョンだけでなくウィンストンやバワリー・キングまでもが被害を受けることになり、ある意味「堕ちた」者同士が結集しての戦いの様相を呈していく。特にラストでジョンとバワリー・キングが地下社会で共に戦う決意をするところはやはり「男たちの挽歌(1986)」的ではある。ただ、次回作で彼らが力を合わせて戦う展開にならないのはやや残念。

舞台はモロッコのカサブランカに映る。映画なら当然「カサブランカ(1943)」を想起させる。ジョンとここで登場するソフィアにかつて恋愛関係があったとは思わないが、誓印を押した間柄ではある。「カサブランカ(1943)」はかつての恋人が偶然カサブランカの酒場で再会する話だった。

男性キャラクターが久しぶりに女性に会いに行ってその女性からぞんざいに扱われるなんていうのもかつての映画で山ほど描かれてきたところだ。ただ、このシリーズにおけるジョンのかつての知り合いは皆がジョンのことを認めていた。なので、このソフィアからだけ「ダメな男」として見られているのは違和感であり同時に新鮮でもある。

シリーズ3作目にしてようやく、ジョンは初めて誰かと協力してのアクションとなっている。両者のアクションを交互に描くことが演出上の遅滞に繋がっておらず、ソフィアを演じたハル・ベリーも見事な身のこなしだった(ただ、若干相手役が倒されるのを待っているように見える場面もあった)。また、訓練を受けた犬がことごとく男たちの股間に噛みつくところもおかしい。

女性キャラクターが中盤に登場して仕事をしてその後登場しないというのは、後の「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」でアナ・デ・アルマスが演じたパロマを連想する。ちなみに、アナ・デ・アルマスは本作のスピンオフ「バレリーナ」に主演予定であり、キアヌ・リーヴスもジョン・ウィック役で共演予定である(公開は2024年夏)。

ゼロから何とか逃げたジョンは、コンチネンタルホテルの前で倒れ込み、何とかその敷地内にある階段に手を置く。まるで小学生のようだ。「はい、ホテルの敷地に手を置いたからお前は攻撃できない〜」って、お前ら子供か。

ゼロがジョンを目の前にして、ファンを公言する。「ジョン・ウィックさん、俺マジでファンです。あれ、ジョンさんって犬派っすか。俺は猫派なんすけどね。でも、俺とジョンさんは一緒です」と饒舌に語ると、ジョンから「お前とは違う」と一蹴される。ちなみに、ゼロを演じたマーク・ダカスコスはシリーズのファンであり、オファーを貰った際は脚本を読まずに承諾したそうである。

そして、聖域だったコンチネンタルホテルは聖域解除をされ、裁定人が送り込んだ刺客との対決になり、コンチネンタルホテルのフロントマンだったシャロンも戦いに参加する。ここでは敵の防護が進化したことで銃を撃った程度ではなかなか死なないという展開になる。ここも前2作品との違いを出そうとした場面であり、ジョンが苦戦しながらも確実なヘッドショットで倒していく。ただ、それでは埒が明かないということでその防護を破れる銃器に切り替えていく。

前作は鏡を使った場所での戦いだったが、本作はガラスである。ジョンも敵も何度となくガラスに向けて突き飛ばされてガラスごとぶっ飛んでいく。これはジャッキー・チェンが監督・主演した「ポリス・ストーリー/香港国際警察(1985)」へのオマージュだろう。何と言ってもこの作品はスタッフの間で「ガラス・ストーリー」とまで言われていたのだから。

ただ、ゼロとのラストの戦いは若干ながら盛り上がりに欠ける。ボルテージが最高潮に達する感じではない。画的にはたくさんの敵をやっつけるシーンの方が迫力も見応えもあるかな。その前の二人相手に戦っていた方がまだ良かったかな。なかなかエンジンのかからないジョンに対して「こいつ、本当にあのジョン・ウィックか。動きが遅いぞ」とか文句を言われて本気を出すジョン・ウィックというのも面白かった。

コンチネンタルホテルの屋上で、裁定人が見る前でウィンストンはジョンを撃ち、ジョンはホテルの屋上から地上へ落下する。なのに当たり前のように生きている。「Yeah」というキアヌ・リーヴスの低い声で発せられるたったの一言が決まって映画が終わる。

部分的には前作よりもパワーアップしているところはいくつもある。ただ、映画全体として見れば前作の方がコンパクトでかつ凝縮されていたように思う。

【関連作品】


ジョン・ウィック(2014)」…シリーズ1作目
ジョン・ウィック:チャプター2(2017)」…シリーズ2作目
「ジョン・ウィック:パラベラム(2019)」…シリーズ3作目
ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023)」…シリーズ4作目



取り上げた作品の一覧はこちら



【予告編】
 

 

【配信関連】

 

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映像特典(本編Disc)

├パラべラム:主席連合の遺産
├予告編集
映像特典(特典Disc)
├追放処分
├極限のトレーニング
├ウィックの騎乗
├橋上のバイクチェイス
├砂漠の中のコンチネンタル
├ドッグ・フー
├ガラスの部屋
├「ジョン・ウィック」の編集術
├「John Wick Hex」トレーラー
├「John Wick Hex」制作の裏側
├来日インタビュー(キアヌ・リーブス×チャド・スタエルスキ)
├来日プレミアレッドカーペット&舞台挨拶