【作品#0711】チャーリー(1992) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

チャーリー(原題:Chaplin)

【概要】

1992年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は145分

【あらすじ】

世界三大喜劇王の一人でもあるチャールズ・チャップリンの生涯を描く。

【スタッフ】

監督はリチャード・アッテンボロー
音楽はジョン・バリー
撮影はスヴェン・ニクヴィスト

【キャスト】

ロバート・ダウニー・Jr(チャーリー・チャップリン)
ジェラルディン・チャップリン(ハンナ・チャップリン)
アンソニー・ホプキンス(ジョージ・ヘイデン)
モイラ・ケリー(ウーナ/ヘティ)
ケヴィン・クライン(ダグラス・フェアバンクス)

【感想】

伝記映画の名手リチャード・アッテンボローによるチャールズ・チャップリンの伝記映画。チャールズ・チャップリンの実の娘ジェラルディン・チャップリンが彼の母親ジェラルディン・チャップリンを演じた。チャールズ・チャップリンを演じたロバート・ダウニーJrの演技は評価を受け、アカデミー賞では主演男優賞にノミネートされ、英国アカデミー賞では主演男優賞を受賞した。

伝記映画にありがちな、ダイジェスト風映画になってしまったように思う。これは特にチャップリンの自伝を読んだ人なら尚更そう感じたのではないだろうか。当初の編集では4時間あり、撮影された映像は200時間もあったそうである。また、リチャード・アッテンボローが公開を望んだのは157分のバージョンで、劇場公開版よりも約12分長いことになる。リチャード・アッテンボロー監督はこの12分カットしたことが映画に大きなダメージを与えたとコメントしているが、このバージョンは後に発売されたソフトなどでも見ることは出来ない。

ただ、この偉大な偉大な映画人であるチャールズ・チャップリンを145分で描き切るのは到底無理な話であり、それは映画化する前から分かっていたはずである。それでも「ガンジー(1982)」「遠い夜明け(1987)」といった伝記映画で着実に実績を重ねてきたリチャード・アテンボローはチャップリンの自伝の権利を購入して映画化にこぎつけたのだ。それで作りたかったのが本作だったのだろうか。仮にカットされた12分が追加されたディレクターズ・カット版があったとしてもそれほど評価は変わらなかったんではないかと思う。

チャップリンの自伝を読んだ人なら分かると思うが、幼少時代から想像を掻き立てる描写の連続で、たとえ当時のイギリスの内情を知らずともどんな生活をしていたのかが分かるようになっていた(翻訳のおかげもあったとは思うが)。ただ、幼少期の描写は映画では数場面しか使われておらず、チャップリンの自伝で言うと、2冊のうち1冊目はほとんど映画に使用されていないことになる。

かといって、自伝の2作目をみっちり描いているかと言うとそうでもなく、上述のようにやはりダイジェストになっている。ちなみに、チャップリンの自伝は文庫本で上下巻合わせて1,100ページもあるので、当然これをすべて描き切れるわけがない。例えば後の「ヒッチコック(2012)」で「サイコ(1960)」の製作時に絞って映画化した成功例がある。そんな感じで、チャップリンの中でも重要な部分によりフォーカスした作品に仕上げた方が成功したのではないかと思う。チャップリンの自伝を読んでいれば、興味深い箇所は山ほどある。

そんなチャップリンの自伝に倣っている箇所は、映画製作の裏側の描写である。チャップリンの自伝には映画製作時の細かい話はほとんど語られていなかった。本作はその部分には妙に忠実ではある。

一方で、基本的にはチャップリンの自伝に沿いながらも、「あれ、こんな描写あったっけ」という場面もあるのですべてが伝記通りではない(アンソニー・ホプキンス演じる記者は架空だし、伝記が出版されたのは1964年なので当然ラストのアカデミー賞授賞式は含まれない)。エピソードの取捨選択と創造した箇所が果たして適切だったのだろうか。

そんな本作で一番重要と言えるのがチャールズ・チャップリンを誰が演じるかである。そんな彼を演じたのは若き日のロバート・ダウニー・Jrである。特に楽屋で放浪紳士チャーリーになる場面とその姿で最初にカメラの前で演技する場面は本物を見ているのかと思えるほど見入ってしまった。これはただの真似ではなく、純粋に感動さえする演技であった。ただ、多くの人はチャップリンの映画の中の姿は知っていてもそれ以外の場所での姿は知らない。本作は基本的に映画の外のチャップリンがメインでもあるのでそこは評価に困るところでもある(もちろんロバート・ダウニー・Jrの演技は全編通して良かったことに違いはない)。

それ以外のキャラクターはダイジェストの如く映画が進んでいく弊害で、一場面登場したら後に出てこないキャラクターばかりである。個人的にはチャップリンの自伝で最後にエドナ・パーヴァイアンスからの手紙に感動したのでそこを起点にしても良かったのになとは思ったが、やはりアメリカから追放されたチャップリンがアカデミー賞に出席する場面で映画が終わるのは当然か(最後にチャップリンに拍手を送りたい気持ちも分かる)。

当初の編集の4時間で本作を鑑賞したいとも思わないが、幼少期を削ってもチャップリンの生涯を145分で描くのは無理難題だったんだと思う。随所に良い演技、良い音楽などはあるものの、一映画としてはそこまで評価できない作品。

本作を見てチャップリンの何かしらを知ることが出来て感動できたのならそれはそれで良いはずだ。ただ、もしダイジェストのようで物足りなさを感じたのならチャップリンの自伝を読むことをおすすめする。文庫で上下巻の合計1,100ページとなかなかのボリュームだが、読む価値は大いにあると思う。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

 【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

 

【書籍関連】

 

<チャップリン自伝:若き日々>

 

形態

├紙

翻訳者

├中里京子

長さ

├413ページ

 

<チャップリン自伝:栄光と波瀾の日々>

 

形態

├紙

翻訳者

├中里京子

長さ

├688ページ