【作品#0406】カサブランカ(1942) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

カサブランカ(原題:Casablanca)

 

【Podcast】

 

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。

 
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【概要】

1942年のアメリカ映画
上映時間は102分

【あらすじ】

1941年12月のフランス領モロッコの都市カサブランカ。ナチスドイツによる各国侵攻を受け、戦火を逃れようとヨーロッパの人たちはカサブランカからリスボン経由でアメリカへ逃れようとしていた。アメリカ人のリックは酒場を経営しており、パリ陥落前に理由を告げずに去ってしまった恋人イルザと偶然の再会を果たす。

【スタッフ】

監督はマイケル・カーティス
音楽はマックス・スタイナー
撮影はアーサー・エディソン
第二班の監督はドン・シーゲル

【キャスト】

ハンフリー・ボガード(リック・ブレイン)
イングリッド・バーグマン(イルザ・ラント)
ポール・ヘンリード(ヴィクトル・ラズロ)
クロード・レインズ(ルノー署長)


【感想】

アカデミー賞では作品賞含む3部門を受賞し、オールタイムベストなどの企画があると必ず上位にランクインされる名作。中でも「Here's looking at you, kid(君の瞳に乾杯)」は名台詞(名翻訳)としても知られる。

戦争が男女を引き裂く話なんて山のようにある。死んだと思った夫が生きていたなんて、本作の製作に大きな影響を与えた真珠湾攻撃を描いた「パール・ハーバー(2000)」でも同じことやっている。日本で生きていると、戦争で恋人と引き裂かれるなんて経験をすることはまずない。この時代に見た人には現代の平和な観客とは全く異なる生々しい映画体験になったことだろう。

永遠の愛を約束した女性から突然の理由なき別れを手紙で知らされた男が、皮肉な、そして面倒なことには巻き込まれたくないと思う人間になってしまった。ただ、弱者を見ると救わずにはいられない男でもある。その男を演じたボギーにロマンを感じる。そこへ星の数ほどある酒場の中でなんで自分の酒場へ別れたイルザがやって来るのか。彼女との思い出、彼女がリックと共にフランスを去らなかった理由を知って通行証を渡してイルザとラズロの2人が脱出できるようにする。同じくアフリカを舞台にした「グッド・ライ~いちばん優しい嘘~(2014)」のラストに近しいものを感じた。

何と言っても本作はイングリッド・バーグマンがとにかく美しい。特にアップになった時の細かい表情からは目が離せない。当時のモノクロ映画によくある女性への照明の当て方だが、モノクロ映画のアップがこれほど美しい女優がいただろうか。誰かと2人で映るショットとイングリッド・バーグマン単独でカメラに収まるショットの照明の違いは明らかである。1940年代の美しき女優と言えばイングリッド・バーグマンだと感じる。舞台設定が映画製作当時という、その当時にしか作れない、出せない味がある。そして、本作は当時のイングリッド・バーグマンの美しさを切り抜いた映画であるとも感じる。

ラストはリックが2人を裏切ったと見せてルノー署長を裏切り、イルザとラズロを出国させることになる。リックがイルザとラズロを飛行機に乗せようとしていることにイルザが気付いた時にカメラはリックとイルザに2回寄っていく。この場面までは割と普通の取り方をしている分、この場面でカメラが主人公たちにグッと寄っていくと観客の感情も引き付けられることになる。そして、この見つめ合う2人の美しさよ。ハンフリー・ボガートが少し見下ろし、イングリッド・バーグマンが少し見上げ、彼らの帽子のつばが直線で繋がるような角度は何とも形容しがたい美しさである。マックス・スタイナーの美しい音楽が流れていても、飛行機のエンジンがかかると音楽は鳴り止み、リック、イルザ、ラズロのそれぞれのアップになる。その際のテンポといい彼らの表情といい非常に美しいカット割りである。

そして、本作このさっぱりとした終わり方が絶妙である。振り返ると、本作のヒロインとなるイングリッド・バーグマンの登場シーンも、イルザとラズロが店に入って来る場面でイルザを特別に捉えるショットではなかった。そして最後のシーンでもイルザとラズロがカメラを遮って行くカットであり、イルザのアップではなかった。彼らの登場シーンと最後のシーンがきれいな対をなしている。安い演出をしてしまう監督なら、飛行機で泣いてうなだれるイルザと慰めるラズロを映したり、感動を煽る仰々しい音楽を流したりしただろう。こんな名作の終わり方を真似ずに、音楽をでかでか流したり、ヒロインが涙ながらにうなだれたりするシーンを使うことがどれだけ多いことか。

ただ、本作で唯一弱いところを挙げるとすると、ラズロ、もしくはラズロを演じたポール・ヘンリードにあまり魅力がないところだろう。イルザが結婚していたことも、チェコスロバキアでレジスタンスとして活動していたこともこのキャラクターには説得力がない。かといって極端に良い奴でも悪い奴でもない。改めて考えてみたが、もしかしたらこれが一番いいバランスかもしれない(少し引っ掛かるのは事実だが)。

まだ10代だったころに初めて見た際は良さの分からない映画だったが、10年以上経過してから鑑賞してこんなに素晴らしい作品だったのかと驚かされた。見るタイミングで映画の印象なんて変わるものだと思うが、もし初見時の印象がイマイチだったとしても後に見直してほしいと感じる一本である。

【音声解説1】

参加者

├ロジャー・イーバート(評論家)


評論家ロジャー・イーバートによる音声解説。アメリカで最も権威ある映画評論家の1人で、本作「カサブランカ(1942)」と同じ1942年の生まれである。カメラの動き、照明による光と影、帽子やタバコと言った小道具、矛盾箇所など様々な角度から多くの指摘をしている。また、非常に耳障りの良い声であり、字幕を追うことになる日本人ですら聞きやすいと感じる。

【音声解説2】


参加者

├ルディー・ベルマー(評論家)


評論家ルディー・ベルマーによる音声解説。上記のロジャー・イーバートとは異なり、残された資料や証言から本作が製作されていく過程でどのようなことがあったかを詳しく解説してくれる。確かに興味深い情報もたくさんあるが、これを映画の映像に合わせて話す必要があったかは甚だ疑問である。映画内の映像について触れる場面もごくごくわずかであり、わざわざ映画の音声解説として収録した意義は正直見つからない。製作過程について詳しく知りたい人にはうってつけだと思うが、そうでなければロジャー・イーバートによる音声解説を聞くべきだと思う。



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/ドイツ語/イタリア語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

本作のソフトはDVD、BD、4K ULTRA HDで発売されており、複数のタイプが存在する。

 

映像特典が最も充実しているのはBD(2枚組/メモリアル・エディション)ならびに、4K ULTRA HDと一緒に付いてくるBDである。ただ、先に発売されたDVD(2枚組/スペシャル・エディション)にしか収録されていない特典もある。

 

また、吹替に関してはBDにてテレビ東京版が収録されているが、後に発売の4K ULTRA HDにはスター・チャンネル版、テレビ朝日版を加えた3種が収録されている。

 

<DVD(パブリック・ドメイン)>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/ドイツ語/イタリア語)

 

<DVD(特別編)>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/ドイツ語/イタリア語)

映像特典

├メイキング(36分)

├予告編集

 

<DVD(2枚組/スペシャル・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/ドイツ語/イタリア語)

音声特典

├ロジャー・イーバート(評論家)による音声解説

├ルディー・ベルマー(評論家)による音声解説

映像特典(Disc1)

├ローレン・バコールによるイントロダクション

映像特典(Disc2)
├両親の思い出(約7分)

├削除されたシーン (約2分)

├未公開シーン集(約5分)

├ミュージック集(音声のみ)

├ドキュメンタリー:Bacall on Bogart(約83分)

├ドキュメンタリー:You Must Remember This(約39分)

├1943年脚本家協会ラジオ・ショー(約30分/音声のみ)

├1956年テレビシリーズ:Who Holds Tomorrow(約19分)

├アニメ:キャロットブランカ (約8分/日本語吹替付)

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/ドイツ語/イタリア語)

├日本語吹き替え(テレビ東京)

音声/映像特典

├上記DVD(2枚組/スペシャル・エディション)と同様(1枚に集約)

 

<BD(2枚組/メモリアル・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/ドイツ語/イタリア語)

├日本語吹き替え(テレビ東京)

音声特典

├ロジャー・イーバート(評論家)による音声解説

├ルディー・ベルマー(評論家)による音声解説

映像特典(Disc1)

├ローレン・バコールによるイントロダクション

├ワーナー劇場

  ├「情熱の航路」オリジナル劇場予告編

  ├短編映画:VAUDEVILLE DAYS

  ├THE BIRD CAME C.O.D.
  ├THE SQUAWKIN' HAWK

  ├THE DOVER BOYS AT PIMENTO UNIVERSITY

ビハインド・ストーリー
  ├ドキュメンタリー:BACALL ON BOGART

  ├偉大な監督:マイケル・カーティス
  ├「カサブランカ」の色褪せない魅力
  ├ドキュメンタリー:YOU MUST REMEMBER THIS

  ├両親の思い出
├未公開映像集
  ├削除されたシーン集
  ├未公開シーン集(音声なし)
  ├1955年テレビシリーズ:WHO HOLDS TOMORROW
  ├アニメ:キャロットブランカ
  ├ミュージック集(音声のみ)
  ├1943年脚本家協会ラジオ・ショー(音声のみ)
  ├1947年Vox Pop ラジオ・インタビュー(音声のみ)
├予告編集

  ├オリジナル劇場予告編
  ├1992年リバイバル予告編
映像特典(Disc2)
├YOU MUST REMEMBER THIS: THE WARNER BROS. STORY
├ワーナー・ブラザースの黎明(1923-1937)
├戦争と平和~第二次世界大戦前後(1937-1949)
├苦難と冬の時代(1950-1969)
├新たなる伝説の始まり(1970-1990)
├息づく伝統と巨大メディア(1988-2008)
├THE BROTHERS WARNER
├ジャック・L・ワーナー:映画界最後の大物

 

<4K ULTRA HD+BD2枚>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/ドイツ語/イタリア語)

├日本語吹き替え(3種)

  ├テレビ朝日版

  ├スター・チャンネル版

  ├テレビ東京

音声/映像特典

├上記BD(2枚組/メモリアル・エディション)と同様

封入特典

├ブックレット(32ページ)
├ミニポスター(2種各1枚)
├トランジットカード
├ロビーカード
├ロケーションカード

 

【音楽関連】

 

<サウンドトラック>

 

収録内容

├20曲/64分

 

【書籍関連】

 

<ノベライズ>

 

形式

├紙

著者

├スティーヴン・バークレイ

翻訳者

├田丸理砂

出版社

├東京学参 

長さ

├370ページ