【作品#0463】ロッキー・ザ・ファイナル(2006) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ロッキー・ザ・ファイナル(原題:Rocky Balboa)


【概要】

2006年のアメリカ映画
上映時間は103分

【あらすじ】

ロッキーは亡きエイドリアンの名前を冠したレストランを営んでいた。ある日、テレビ番組の企画で現在の世界チャンピオンのディクソンと現役時代のロッキーをコンピューター上で試合させていた。それを見たロッキーは小さな地元の試合で現役復帰を目指すが…。

【スタッフ】

監督/脚本はシルヴェスター・スタローン
製作はアーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ
音楽はビル・コンティ
撮影はクラーク・マシス

【キャスト】

シルヴェスター・スタローン(ロッキー)
バート・ヤング(ポーリー)
マイロ・ヴィンティミリア(ロバート)
アントニオ・ターバー(ディクソン)
ジェラルディン・ヒューズ(マリー)
トニー・バートン(デューク)

【感想】

一度は終わったと思われていた「ロッキー」シリーズ16年ぶりの6作目。かつてのシリーズからはバート・ヤングやトニー・バートンや亀のカフとリンクらが出演し、キャストは異なるが1作目に登場したスパイダーやマリーも登場している。ちなみにアポロの映像が一度も登場しないのは、アポロを演じたカール・ウェザーズが「ロッキー」シリーズのロイヤリティ未払いの訴訟をスタローンとMGM相手に起こしていたからである。

1999年ごろからシリーズ6作目の製作を考えていたそうだが、なかなかゴーサインが降りずに2006年になったようだ。シリーズも16年空けば、それはそれで相当なプレッシャーだろうし、何と言ってもロッキーが現役復帰するという設定ならスタローン自身が年を取れば取るほど大変なわけで、そう考えるとよくここまでできたものだと感心してしまう。

60歳に差し掛かるロッキーが現役復帰することになり、審査委員会や息子のロバート相手に話す場面はやや説教臭くはある。ただ、スタローン自身も失敗作と認める「ロッキー5/最後のドラマ(1990)」でシリーズを終わらせたくないというスタローン自身の思いもあるだろうし、「今更シリーズをするのか」という疑問の声にも「周囲なんて気にせずにチャレンジしたい」という思いが重ね合わせられているのだろう。

本作でのロッキーは後ろ向きな人間として登場する。愛するエイドリアンを亡くし、毎年エイドリアンの命日になると、エイドリアンの兄ポーリーと共に墓参りと思い出の場所巡りを行っている。そして、エイドリアンの名前を冠した「エイドリアンズ」では、お客さん相手にロッキーは昔話をしている。また、息子のロバートとはあまりうまくいっていないようで、観客側も居心地の悪さを体感できる序盤となっている。

このシリーズは毎作品のように誰かが死んでいき、本作もエイドリアンが5年前に亡くなったという設定になっている。だからこそ、1作目に登場したマリーやスパイダーを再登場させ、さらにはマリーの息子ステップ、そしてロッキーの息子ロバートを登場させたのだろう。過去ばかり見ているロッキーが、新たな仲間を疑似家族の如く形成していき、決して過去ばかり見るのではなく前に進んでいく姿にちゃんとしたドラマがある。

それを実現するために最も気概を感じるのはラストのボクシングシーンだろう。今までのシリーズは異なり、パンチを「ちゃんと」当てているのだ。もちろんすべて本気のパンチを当てている訳ではないが、当たってもいないのに当たっているふりをしたり、それっぽい効果音をつけたりしている訳ではない。確かにスタローンの作り上げた肉体はボクサーのそれではないのだが、ここまで鍛えているんだからある程度は戦えるだろうという説得力になっている。その点、ディクソンが体を仕上げて来ずに、試合中に負傷する設定はちょっとロッキーに寄り過ぎている気はしないでもないが、そこまで大きな問題ではない。

ただ、映画人スタローンが90年代以降すっかり落ち目になり、それこそ「ロッキーの人」と思われていたわけだ。そんなスタローンがそのロッキーの姿を使って立ち上がる姿を重ね合わせることはできるし、何を挑戦するのに周囲の目なんて関係ないし、年齢だって関係ない。シリーズ通して試合での勝利ではなく、試合ではない何かとの戦いに勝利することが最も優先されていた。本作における試合はそのリングに上がった時点でロッキーにとっては半ば勝利と言えるものだったかもしれない。それでも、ボクシングシーンを映画的にではあるがそれなりに盛り上げる工夫も努力もしているのだからそこは評価したいし、その試合が終わると早々に引き上げる姿には清々しさすら感じる。

あの突き上げた拳の静止画で映画は終わっても良かっただろうが、何と言ってもシリーズ1作目「ロッキー(1976)」はエイドリアンとのラブストーリーでもあった。そんなエイドリアンとの物語へのけじめという意味でもラストに墓参りのシーンがあったのも、それからその墓場から立ち去るロッキーがフェードアウトしていくのにもこのシリーズに対する真摯な終わらせ方だろう(その9年後に「クリード」シリーズが始まるが…)。

そして、その後エンドクレジットが流れる横には、フィラデルフィア美術館前の階段(ロッキー・ステップ)を駆け上がり、ガッツポーズをしたりシャドーボクシングをしたりする観光客たちの映像が流れる。「ロッキー」シリーズは成功作も失敗作もあったにせよ、いずれにしても映画的にはこれ以上ないキャラクターの1つと言えよう(少なくともすぽーつえいがのキャラクターではトップだろう)。観光客たちの映像たちが何よりもそれを物語っている。多くの観客に感動や興奮をもたらしたからこそ、何十年たった現在でも多くの人があの聖地へ足を運ぶのだろう。

また、前作「ロッキー5/最後のドラマ(1990)」同様に、舞台がフィラデルフィアであり、1作目の「ロッキー(1976)」を思わせる場面や設定はたくさんある(フィラデルフィア美術館へ駆けあがるシーン、生卵一気飲み、犬、スパイダーにマリーなど)。そういったシリーズファン向けの迎合するような映画ではなく、このシリーズにけじめを付けようという真摯な姿勢は確実に伝わった。1作目との比較なんてできないが、これほどブランクの空いたシリーズにおいて、これ以上ない終わらせ方になったと言える。

【音声解説】

参加者
├シルヴェスター・スタローン(監督/脚本/ロッキー役)


シルヴェスター・スタローンによる単独の音声解説。ノスタルジーを感じさせるために、フィラデルフィアでの撮影や地元の素人を起用した話、リアリティを出すためにレフェリーやコミッショナー、実際にボクシングの記者会見が行われた会場を使用した話など興味深い。作品全体を鑑みてカットした場面の話や、起用した俳優の印象、使用した楽曲、ほぼやらせなしのボクシングシーンなど聞き応え十分である。作品だけでなく、この音声解説からも作品のテーマは十分に伝わって来る。

【関連作品】


ロッキー(1976)」…シリーズ1作目
ロッキー2(1979)」…シリーズ2作目
ロッキー3(1982)」…シリーズ3作目
ロッキー4/炎の友情(1985)」…シリーズ4作目
ロッキーVSドラゴ:ROCKY Ⅳ(2021)」…シリーズ4作目のディレクターズ・カット版
ロッキー5/最後のドラマ(1990)」…シリーズ5作目
「ロッキー・ザ・ファイナル(2006)」…シリーズ6作目

クリード チャンプを継ぐ男(2015)」…スピンオフ「クリード」シリーズ1作目
クリード 炎の宿敵(2018)」…スピンオフ「クリード」シリーズ2作目

クリード 過去の逆襲(2023)」…スピンオフ「クリード」シリーズ3作目




取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├シルヴェスター・スタローン(監督/脚本/ロッキー役)による音声解説

映像特典

├技術対精神力:メイキング・オブ・「ロッキー・ザ・ファイナル」

├リングのリアリティー:“最後の戦いを撮影する”

├NGシーン集

├未公開シーン集(7種)

├もうひとつのエンディング

├オリジナル劇場予告編集(「ロッキー・ザ・ファイナル」「ロッキー」)

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├シルヴェスター・スタローン(監督/脚本/ロッキー役)による音声解説

映像特典

「ロッキー・ザ・ファイナル」 最終ラウンドまで

├技術対精神力:メイキング・オブ・「ロッキー・ザ・ファイナル」

├リングのリアリティー:“最後の戦いを撮影する”

バーチャル・チャンピオン:“コンピューター試合を作る”

├NGシーン集

├未公開シーン集(7種)

├もうひとつのエンディング

EASTER EGG

├オリジナル劇場予告編集(「ロッキー・ザ・ファイナル」「ロッキー」)

  ※下線部は上記DVDに収録されていないもの

 

<BD(6枚組)>

 

収録内容

├「ロッキー」

├「ロッキー2」

├「ロッキー3」

├「ロッキー4/炎の友情」

├「ロッキー5」

├「ロッキー・ザ・ファイナル」