【作品#0464】ウォーリアー(2011) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ウォーリアー(原題:Warrior)


【概要】

2011年のアメリカ映画
上映時間は140分

【あらすじ】

かつては格闘技で実績をあげていた2人の兄弟がそれぞれの事情から再び格闘技の世界に入ることになる。

【スタッフ】

監督はギャビン・オコナー
音楽はマーク・アイシャム
撮影はマサノブ・タカヤナギ

【キャスト】

ジョエル・エドガートン(ブレンダン・コンロン)
トム・ハーディ(トミー・コンロン)
ニック・ノルティ(パディ・コンロン)
ジェニファー・モリソン(テス)
フランク・グリロ(フランク・カンパーナ)

【感想】

日本では当時劇場公開されなかったスポーツ映画。ジョエル・エドガートンとトム・ハーディは負傷しながらの撮影となった。また、彼らの父親を演じたニック・ノルティはアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。

冒頭から2人の男を中心に話が展開していき、しばらく交わることはないが、彼らが対決することになるのは何となく想像がつく。そしてパディがブレンダンのもとを訪ねた時にブレンダンとトミーが兄弟で、その父親がパディあることが分かる。なぜ彼らが疎遠になっているのかは徐々に語られていくことになる。

酒に酔って妻に暴力を振るっていたパディは、妻を亡くし、2人の息子とは疎遠になってしまった。そんな彼も息子たちから信頼を取り戻そうと1,000日以上の禁酒をしている。ただ、今更1,000日禁酒したところで息子たちの信頼を取り戻せるとは限らない。そんなパディも信頼を少しでも取り戻そうと戦っている。かつては親子コンビでレスリングをやって来た実績もある。そんなパティを演じたニック・ノルティが見事であった。ニック・ノルティは強面の俳優なので、割と強い男を演じることが多かったが、だからこそ本作のように弱さを見せる場面が際立つ。

ブレンダンは母親に暴力を振るっていた父親パディを憎んでいるが、同時に結婚して母親のことを弟のトミー任せにしたことで後ろめたい気持ちを抱いている。ただ、ブレンダンはテスと結婚したことで2人の子供にも恵まれている。それが正しかったと思っているというかそう思っていたい。そうでも思っていないと子供たちの存在を否定しかねないものにもなるのだから。だからこそブレンダンは家という家庭の象徴を絶対に売りたくないわけである。

トミーは父親のみならず、暴力が振るわれる母親と自分を捨てて女性と結婚する道を選んだことで兄のブレンダンをも憎んでいる。トミーは家庭内に信頼できる人間がおらず、海兵隊の中にその「兄弟」なる親友を見つけることができたが、戦地で亡くしてしまった。そんな親友の家族のためにトミーはスパルタに出場することを決意し、あくまで父親パディはそのスパルタで優勝するためだけのコーチとして雇うことにする。かつては父親の指導の元、レスリングで活躍した実績はある。ただ、パディが父親らしいことを言ってくると全く相手にしない。スパルタ初日の快進撃の後、スロットをしているところへやって来たパディにトミーは心を折るようなキツイ言葉を浴びせてしまう。

無名のトミーが勝ち上がってくると、戦地での英雄的行動が報道され始める。ところが、本人はそれを英雄的行動だと一切思っていない。トミーは誰かに認められたくて、勝ちたくて戦っている訳ではない。自分の唯一の亡くなった「親友」のためである。トミーはブレンダンに「海軍にいたか」と聞いて、「行っていない」と言われると「じゃあ兄弟じゃない」とまで言っている。本気の戦いの世界の中で初めて親友を作ることができたからこそ、ブレンダンは自分と母親を置いて逃げた男だと思っている。トミーが格闘の世界ではなく海兵隊員として戦地へ行ったのも母が亡くなったことで空いた傷跡を埋めるためだったのかもしれない。

ラストで2人が戦うのはもはや予定通りなのだが、彼らがスパルタという本気の戦いの舞台でぶつかり合うことに意義がある。一発のトミーと関節技のブレンダン。ブレンダンは驚異の粘りで関節技に持ち込み、なかなか試合を終わらせようとしないトミーの左腕の関節を外してしまう。左腕の関節が外れてもう戦うことなど不可能なはずなのにトミーはまだ戦いを続けようとする。「もう終わってもいいんだ」という兄ブレンダンの言葉はトミーには届かずにまだ次のラウンドに進んでしまう。人生はやり直すことはできない。1ラウンド終わったら次のラウンドに進んでしまう。他の誰かが止めるか、タップするかしない限り次の戦いは始まる。満足に戦える状態でなくても本気で戦おうとするトミーに、もうこれ以上戦いたくないと思っていたブレンダンも本気で戦うことになる。最後はブレンダン得意の関節技を決めたところでようやくトミーがタップする。ブレンダンも本気になったこと、決勝戦の試合が終わったことでトミーはもう戦わなくて良くなった。この戦いは涙なしには見られなかった。

おそらくPTSDになっているであろうトミーの狂気を演じたトム・ハーディの素晴らしさは記しておきたい。狂気じみたキャラクターだが、そんな中でも禁酒を破って「白鯨」の船長になりきっている父親パディを抱きしめる場面の優しさも感涙ものだった。狂気じみた中に人間らしい優しさを表現できる俳優。後の「マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)」のラストでフュリオサに対する行動のシーンにも通じるものがある。

自分分を罰したり、本気で向き合ったりという意味において、ボクシングとか総合格闘技のような1対1で戦うスポーツは「ロッキー(1976)」に代表されるように本当に映画と相性が良い。本作も格闘技映画として見ればトップクラス。当時日本で劇場公開されなかったのが本当に不思議であると感じる。



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