古い歌をリクエストしていただきました。1930年に作られた「Walkin' My Baby Back Home」。江利チエミが発売した邦題には「歩いて帰ろう」というタイトルがついています。

 

幸せな、良き時代の香りがするウキウキ曲です。月光値千金、みないな。曲を作ったRoy Turk (lyrics) もFred E. Ahlert (music)もまったく聞き覚えがありません。

 

最初にヒットさせたのは、ジャズ・ギタリストで歌も歌うニック・ルーカス。翌年の1931年ことです。昭和でいうと6年ですね。


ニック・ルーカスが、1951年テレビで「ウォーキン・マイ・ベイビー・バック・ホーム」を歌う映像です。彼はギブソンのギターを用いて活躍したジャズ・ギタリストで、ギブソンには自己名義のモデルのギターがあるほどの人。という点では、レス・ポールの大先輩ということになりますか。

 


これは正真正銘、同じ1931年発売のレコードです。当時のシンガー、アネット・ハンショウのSP盤です。飾り気のないストレートな歌唱に、ボクは良き時代の香りを感じます。

 

 

時代が下がって1945年11月、見事な歌唱で一世を風靡したジョ・スタッフォードのレコードです。この頃日本は、・・・終戦から3か月。映画『そよかぜ』(同年10月公開)で並木路子の歌うリンゴの唄に、飢餓感と終戦の安堵感を抱いていた時期ですね。

 

 

つぎはこの方の十八番、ナット・キング・コールが1951年に発売した「ウォーキン・マイ・ベイビー・バック・ホーム」です。癒されます。この年にサンフランシスコ講和条約が締結され、ようやく日本が再び世界の仲間に入れた年です。

 


意外にも、ジョージ・ベンソンがキング・コールのトリビュートアルバムで弾いて歌っています。歌の上手さに改めて感服。「ブリージン」の口三味線だけじゃないんですね。

 


名人、ディーン・マーティン。1970年の自身のテレビ番組で歌っています。ホントにスウィング感が素晴らしいシンガーです。実は、コメディアンのジェリー・ルイスが紹介してから歌うヴァージョン(モノクロTV映像)もありましたが、成熟度を取りました。

 

 

我らが江利チエミ。1953年のSP「歩いて帰ろう」をYouTubeに上げている人がいました。でもキーが低すぎるでは?寺島真三・編曲、キングレコードからの発売です。

 

 

この曲をリクエストしていただいたDupinさんがご覧になった映画『ストックホルムでワルツを』は、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」をビル自身のバックを得て録音した(しかもスウェーデン語で)女優兼歌手、モニカ・ゼッタールンドの人生を描いた映画で、最後に流れたのが「ウォーキン・マイ・ベイビー・バック・ホーム」でした。


スウェーデン以外でも「ウォーキン・マイ・ベイビー・バック・ホーム」のモニカ・ゼッタールンド・ヴァージョンは広く愛好されていたようです。スウェーデン語でのタイトルは「Sakta Vi Ga Genom Stan」(注:正確にはGaの「a」の上に小さい○がついています)。ただ唯一モニカ自身の動画でYouTubeに上がっていたのはメドレー版で、2:57~4:37の間が「ウォーキン・マイ・ベイビー・バック・ホーム」です。なんだか投稿者の編集ミスみたいでブチっと切れた後です。

彼女のレコードは1962年ですが、ボクが唯一持っているモニカとビルの共演盤アルバムには入っていませんでした。ボクも映画は観ましたが、しみじみとしたいい映画でした。 

 


最後は、その映画でモニカ役を演じた女優兼歌手エッダ・マグナソンの劇中歌唱のMVもありました。そういえば映画公開直後に映画のプロモーションも兼ねて東京のブルーノートに来日公演して、超満員だったそうです(ボクは行ってはおりません)。改めてスウェーデン語で聴く「Sakta Vi Ga Genom Stan」は素晴らしいですね。

Edda Magnason エッダ・マグナソンの「ウォーキン・マイ・ベイビー・バック・ホーム」。野外でのライヴ映像です。観客と一緒に歌っているのがステキです。

 

 

(最初に投稿した時に見ていただきたかった公式動画は、今は見ることができません。

ぜひおすすめしたいので、以下のURLをクリックしていただいて、リンクでご覧ください。)

リンク⇒https://youtu.be/Ni5a6Q8D16I

 

映画公開時にはマイブームで盛り上がったモニカ・ゼッタールンドの「ワルツ・フォー・デビー」。それが過ぎると忘れやすいボクは、Dupinさんのリクエストでようやくこの曲を思い出しました。ありがとうございます。

 

この曲は90年前に生まれ、多くの歌手たちのレコードで広く愛好され、生き続けました。モニカの映画は2014年11月公開ですから、あれから5年余。一昨年はフレディ・マーキュリーとクイーン、今度はジュディ・ガーランドの映画が3月公開されます。

 

永く音楽を聴き続けていると、映画化などでの再発見が嬉しいものです。