シマノフスキ/スターバト・マーテル
ロバート・ショウ指揮アトランタ交響楽団、合唱団。シマノフスキ、プーランク。ともに二十世紀に書かれたスターバト・マーテルを収めた一枚です。冒頭にグレゴリオ聖歌「悲しみに沈めるみ母は涙にくれて」を収めています。カトリック教会、十三世紀フランシスコ会で生まれたセクエンツィア。この詩は磔刑にふされたイエスを前にした聖母マリアの悲しみを表したもの。子を失った母というテーマは宗教を超えて心に響くものとなっています。有名なペルゴレージの作品をはじめ、600を超える作曲家が曲を付せています。グレゴリオ聖歌にまで立ち戻り、二十世紀の作品を収めた好企画。子を失った悲しみは普遍のテーマで、現代にもつながるものです。二十世紀では独唱、合唱、管弦楽という編成です。管弦楽の大きさが作品によって異なるものです。死を扱った宗教音楽には他にレクイエムがあります。例えばシマノフスキのスターバト・マーテルもポーランド語を基にしたレクイエムという構想から生まれました。プーランク作品の構想もレクイエムから発しています。こうした作品の多くが身近な者の死を契機にしています。スターバト・マーテルはより個人的な悲しみを扱うのです。シマノフスキ、プーランクともに二十世紀多様の時代の音楽。新しい語法を取り入れています。シマノフスキではポーランド語を採用したように、ポーランド的なものを積極的に音楽にとり入れました。作曲者も上演の際には原語の使用を強く望んでいました。 ショウの演奏は複雑に織られた管弦楽を背景にしていますが、主体は合唱です。独唱も飛び抜けることなく、声とのバランスが図られる。普遍的なテーマは心を打つものとなっています。プーランクの音楽の多くは陽性のものが多く、情緒に拠らない音楽的なものが多い。歌劇のカルメル派修道女との対話、スターバト・マーテルといった作品の真摯さもプーランクの一面です。合唱の力を感じられる一枚となっています。人気ブログランキング