シューベルト/ヴァイオリンとピアノのための作品全集 Vol.1
ユリア・フィッシャーのヴァイオリン。マルティン・ヘルムヒェンのピアノによるシューベルトのヴァイオリンとピアノのための作品集の一枚目です。ヴァイオリン・ソナタ(ソナチネ)三曲に、ヴァイオリンとピアノのための華麗なるロンドロ短調 D.895, Op.70を収録しています。この種の作品で有名なグランデュオや、幻想曲は第二集に収録されています。2009年の録音。現在は、二枚を合わせたものも出ています。シューベルトのヴァイオリンとピアノのための作品はこれで網羅されます。ヴァイオリン・ソナタはソナチネと表記されることもあります。これはモーツァルトとベートーヴェン作品と比べると短いことによっています。一曲は四つの楽章を持つものでも二十分に満たない長さとなっています。シューベルトはソナタと楽譜に表記しました。ソナチネとしたのは出版社であったディアべリです。ディアベリの名はベートーヴェンの大規模な変奏曲でより有名でしょう。音楽家でもあったディアベリ。今日に至るまでソナチネ表記が多いのもソナタとしては展開部の長さは確かに短すぎるのです。奨学金を得てコンヴィクトにあったシューベルトは、弦楽五重奏のための序曲や、弦楽四重奏曲第一番を作曲しています。休みの日毎に、兄や父とアンサンブルを楽しむためのものでした。シューベルト本人はヴィオラを担当。弦楽器への経験を積みます。ヴァイオリンにも造詣がありました。ヴァイオリン・ソナタは本来、ヴァイオリンのオブリガート付きのピアノソナタでした。ベートーヴェンに至ってヴァイオリン、ピアノとの間に対等の関係が生まれたとされます。当盤の三曲はシューベルトが二十代に突入する直前の時期。コンヴィクトを去り、短い教師生活がありました。教職を辞め、音楽三昧の日々。生活は貧しいものでした。作品にはソナタとするには小ささがあります。作品に書かれた1816年はベートーヴェンでは歌曲集「遙かなる恋人に寄せ」が書かれています。すでに後期に突入していました。ヴァイオリン・ソナタにバランスをもたらしたクロイツェル・ソナタは1803年の作品です。シューベルトは、ロマンの新しい時代に旋律を歌わせます。ロンドは三つのソナタ(ソナチネ)から十年後、そして晩年に突入していました。この作品だけがシューベルトの生前出版された唯一のヴァイオリン・ソナタ編成の作品となりました。ユリア・フィッシャーは、作品に瑞々しい叙情を取り戻します。人気ブログランキング