バロック・カラーズ
マルティン・シュタットフェルトのバロック小品集。バロック・カラーズ(Baroque Colors)と題された一枚です。2023年の録音。シュタットフェルトは1980年生まれ。2002年のバッハ・コンクールで優勝しました。デビュー盤もバッハ、ゴールドベルク変奏曲から始まります。現代のバッハ弾きとしてグールドの姿を重ねる人もいるでしょう。一方、グールドが馴染むことができなかったロマン派の音楽でも高い評価を得ています。ショパンの練習曲にも自作の即興演奏が挿入されます。ショパンが平均律クラヴィーア曲集に何度も立ち返っていたこと。現代のドイツのバッハ弾きはショパンのうちにもバッハの余波を見ているのです。バロック・カラーズ、二枚のディスクで取り上げた作曲家もクーナウに始まります。以降、クープラン、バッハ、スカルラッティ、ヘンデル、ガルッピ、ソレール、ロワイエの作品をオリジナルで演奏したディスクに。二枚目はバッハ、リュリ、パッフェルベル、パーセル、ヴィヴァルディ、テレマン、ガスパル、クーナウ、ヘンデル、コレッリ、メルヒオールといった作曲家を自身の編曲のもとに構成しています。一部は四手用のものでリリアン・アコポヴァと共演しています。鍵盤楽器という性能を生かしたものから、歌劇で用いられた素材を多声の音楽に落とし込んだものを現代のピアノで演奏する。バッハに至るバロックの音楽にも多声という大きな流れがありました。この編曲と即興演奏という前衛的なものまで取り込んでアルバムを構成するのがシュタットフェルトの独自の視点です。このアルバムに限らず、多くのアルバムでこうした試みが行われています。パーセルやヘンデルのシャコンヌ、リュリのパッサカリアなどを取り入れたことからも、バッハと周辺を俯瞰し、バロック全体を見通しています。 バッハの時代にすでに多声の音楽は下火になりつつありました。モーツァルト、ハイドンの時代に向かう途上にはバッハの息子たちの音楽がありました。大バッハの音楽は時代からも超絶しています。存命中にはバッハよりも名士がいました。テレマンやヘンデルもそういった作曲家にあたるでしょう。古典を経てロマンに至っても、バッハの余波を見出せる。当盤の選曲はロマンへの繋がりさえも意識されています。現代のバッハ弾きとしてのバロック小品集です。人気ブログランキング