ヴァンゲリス/霊感の館
ギリシャのヴァンゲリス。78年に発表された前衛音楽「霊感の館」です。ヴァンゲリスは炎のランナー、ブレードランナー、南極物語、1942 コロンブスといった映画のサウンドトラックで有名です。クラシック・レーベルの老舗ドイツ・グラモフォンでは瞑想-見えない絆(Invisible Connections)も出されました。こちらは「霊感の館」の路線にある前衛音楽とされています。生前、最後のアルバムとなったJuno to Jupitarもユニバーサル傘下デッカから発売されました。そこにはゲオルギューも参加しているのです。「霊感の館」はパリの建築、ポンピドゥー・センターに触発されて制作されました。建物も現代美術を扱い、外観も剥き出しの配管という特徴的なものとなっています。ヴァンゲリスはその無機質、前衛に着目しました。シンセサイザー、YamahaのCS80を駆使。搭載のエフェクターリング・モジュレーターは変調用の波形を掛け合わせ無機質な音に変化させるものです。多くを即興で作り上げ、シンセサイザーの性能を引き出しました。ヴァンゲリスを特徴づける息の長い旋律や複雑に織られたリズムはありません。前衛作品は20世紀、ミュージック・コンクレートに共通するものがあります。テープでの編集、楽音以外のものも積極的に取り入れ、積極的に加工していくという手法です。シンセサイザーも当初は実験室での音響装置でした。ヴァンゲリスは楽譜の読み書きができないことを公言していました。できるだけ即興的に全てのコントロールを行うことを重視しました。現代では多くのトラックを重ね、そこに必要なものを詰め込んでいくものです。ヴァンゲリスは、こうした手法ではなく複数の楽器を積み上げ、必要な音をリアルタイムに演奏することを好みました。最終的には複雑な機構を持った多くのシンセサイザーを制御するシステムを作り上げ、必要な音を瞬時に展開できるようにしていきました。 天国と地獄、反射率0,39といったシンセサイザーを駆使した音楽から「霊感の館」の非音楽的な一枚は衝撃的でした。今もって問題作なのです。こうした音楽が生まれる背景、創作態度といったものもクラシックの前衛音楽の手法とは近しいものがあります。成果物はポピュラーミュージックのファンには回避されることが多い。伝統的な音楽を聞くひとはほとんど気づかないで通り過ぎてしまいがちです。人気ブログランキング