ナクソスのヴィラ=ロボス、ブラジル風バッハの全曲です。ナッシュヴィル響。「ブラジルの民俗音楽とバッハの作曲様式の融合」​​を目指した作品は九つの組曲から成っています。六つの編成は異なるものとなっています。そのため全曲を網羅することは少ない作品です。二十世紀のブランデンブルク協奏曲にも例えられることもあります。組曲毎に奏者を用意する必要があるという共通点。ブランデンブルク協奏曲には、当時の協奏曲の独奏楽器としては異例のチェンバロの導入がありました。ブラジル風バッハにも、サクソフォーンの濃厚な調べが曲のトーンを決めている第二番があります。ヴィラ=炉ボスの独学で音楽を学びました。父ハウルはアマチュアの音楽家でした。父の影響でピアノ、クラリネット、チェロといった様々な楽器を演奏するようになり、独学で演奏できる楽器は増えていきました。民族的な音楽と 現代的な音楽を融合する。ヴィラ=ロボスはハンガリーのバルトークにも比せられるようになっていきます。一方、独自性は伝統と発展から醸成されてきたものではありません。感性で音楽を捉えるものでした。バッハの技法とは、前奏曲、トッカータ、フーガ、幻想曲、アリア、コラールといったバッハの楽曲に散りばめられたものです。多声的な展開もあり、ブラジルの濃厚な音楽が落とし込まれていきます。濃厚な民族性は時にロマン的な響きを醸し出します。叔母がバッハの平均律クラヴィーア曲集を好んで弾いていたという環境。ヴィラ=ロボスの原風景といったもので、アカデミックなものというより、より精神的なものだったわけです。バルトークと同様、民謡採集にも向かい、作品は膨大な数となっています。民族的なものはヨーロッパの音楽とは異質なものでした。あまりの多作家ゆえに全貌を捉えるのは難しいヴィラ=ロボス作品をナクソスは積極的に取り上げています。

 

ブラジル風バッハが新しい音質で登場。この様々な楽器の響きを含む異様は全曲を通して感得されるものです。経験を通し感性の作曲家ヴィラ=ロボスは音楽的な器の中にブラジル音楽を入れ込みました。西欧音楽の語法の中に聞く異質なもの。パリに学び、ブラジルに戻ってのちに故国の音楽的資産の価値をも再確認したのです。

 

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