ブラームスのピアノ四重奏曲の全曲録音。全曲の中では第一番が演奏頻度も高く、ディスク制作が多くなっています。終楽章に「ジプシー風ロンド」を置き、シェーンベルクが管弦楽化を行っています。レメーニに帯同しての演奏会を初め、ハンガリー舞曲集をはじめロマの音楽はブラームスにも浸透しています。良い例と言えるでしょう。意外なことにはブラームス生前は明るい第二番の評価が一番高いものだったのです。三曲のピアノ四重奏をまとめたものの代表的なものにはデームスのピアノにバリリ四重奏団のメンバーによる演奏が今でも上がります。今回はヴァイオリンのシモン・ゴールドベルクとヴィオラのプリムローズによって結成されたアンサンブルによるもの。音楽祭に集うメンバーからフェスティバル四重奏団と名付けられました。ブラームスのピアノ四重奏はロマン派の増大する音量、ピアノを交えた室内楽という流れから生まれました。ピアノ五重奏は弦楽パートの調整が難しい作品です。ブラームスの作品は一つ。もともとの形はピアノ五重奏ではなく、弦楽五重奏、二台のピアノ版と紆余曲折の上にまとまることになりました。ピアノ四重奏はたった一本のヴァイオリンを外すだけで弦楽パートの活用の余地は大きくなります。室内楽の分野として確立したものとなりました。常設アンサンブルも多い弦楽四重奏、ピアノ三重奏に対し、ピアノ四重奏はレパートリーの数は少なくなります。ブラームスではピアノ三重奏と同数の三曲。比重も大きくまとめて触れることの益は大きいのです。ピアノはヴィクター・バビン、チェロはニコライ・グラウダン。ピアノの縦横の活躍に弦が加わる形です。収容メンバーがフルトヴェングラー時代、戦前のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を支えたシモン・ゴールドベルクの弦。リリー・クラウス共演のモーツァルト演奏が有名です。室内楽の取り組みは多く、ブラームス作品としては弦のパートの動きを確認できる演奏の一つでしょう。

 

ピアノ四重奏ではピアノ一つが突出するのではありません。弦楽器との親和性も高くソナタ形式の楽章を中心に置き、ロマンの中でも古典的な形式の中での展開を試みたブラームスらしい室内楽を聞くことになるでしょう。第三番は初稿から二十年近くを経ての発表となりました。ブラームスは他者への批判でも有名ですが、同じように自己批判も厳しいものがありました。ブラームスの室内楽へ誘ってくれる一枚です。

 

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