今年リリースされたばかりのYoung & Foolishと題されたC.P.E.バッハとモーツァルトの作品集です。セリーヌ・フリッシュの創設したカフェ・ツィマーマンの演奏。アルファ・レーベルらしい意欲のある試みです。C.P.E.バッハはシンフォニア ニ長調 H.663、チェンバロとフォルテピアノのための協奏曲 変ホ長調 H.479、モーツアルトはディヴェルティメント ヘ長調 K.138、ピアノ協奏曲ト長調 K.463を収録しています。チェンバロは楽団のセリーヌ・フリッシュ。フォルテピアノにはメルニコフが参加。時代楽器の響きで、正当性ではなく遊び心ある展開をしています。何しろYoung & Foolishがテーマです。バッハ一家の次男。最初の妻、マリア・バルバラの息子は、生前の高名は大バッハ以上のものがありました。音楽に感情表現を持ち込んだ多感様式は、モーツァルトのみならずハイドン、ベートーヴェンといった後続に大きな影響を与えます。ロココ趣味から装飾、優雅な印象を与えるギャラント様式もC.P.E.バッハがひらいたものです。これもバロックのけばけばしさへの反動でした。主旋律に適宜な和音づけ、楽曲の構造を追求するものです。モーツァルトは正しくC.P.E.バッハの音楽の流れの延長にあり、生涯、ギャラント様式を追求したといっても良いかもしれません。ここでバロックから古典へと音楽史的にも重要な移行が行われていたのでした。ユニークな複協奏曲もチェンバロ、フォルテピアノという移行の時期とは無関係ではありません。楽器の変遷も表現の意欲から進んでいくものです。

 

モーツァルトのピアノ協奏曲第十七番。ウィーン時代の協奏曲としては重要です。C.P.E.バッハの遺産はモーツァルトの中で成熟し、二十番からはじまる一段と深い境地に至るのです。すでに第十七協奏曲はベートーヴェンの第四協奏曲への影響が指摘されています。ここでは第芸術というより、勢い、稚気といったものに焦点を当てています。管弦楽も自発的。随所に楽器の運用の巧みを見ることができるでしょう。

 

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