ファンタジア
90年バーゼルに生まれた若きハーピスト、マグダレーナ・ホフマンのドイツ・グラモフォンの第二弾。大バッハを中心にバッハの息子、W.F.,C.P.E.バッハ、ヘンデル、ヴァイスの作品をまとめたFantasiaと題されたバロック作品集です。ハープは撥弦楽器です。弦楽器ですが、擦弦楽器であるヴァイオリン属とは異なります。音を持続させることは苦手。しかし、ヴァイオリンが苦手とする重音は豊かで、アルペジオなどを得意とします。エジプトの壁画に描かれているだけに期限は古い楽器です。聖書のダビデに、ギリシア神話のオルペウス、吟遊詩人の時代の竪琴もまたハープの仲間です。管弦楽法ではハープの用例について記されます。特にフルートとの相性は良いとされています。ロマン以降のフランスの作曲家には用法の巧みな者が多く、見せ場となります。ベルリオーズの時代には用法から難しい奏法となることを回避するために複数の奏者を用意するという方法をとりました。半音階を難なく演奏できるように改良が重ねられ、今日のハープがかたちづくられていきました。当盤は、ハープで演奏されるために移されたものとなっています。楽器の発展の歴史から、企画もののような展開となるのは仕方ありません。ここがグラモフォンらしく、ラトル、メータ、ペトレンコといった音楽家と共演してきたマグダレーナ・ホフマンの音楽性が引き立つところです。ハープの音色をバロックに移しても、新たな古典ともなりうるものとしています。バッハの時代のファンタジアも作曲者に形式を離れた多くの裁量を与えました。バッハの半音的幻想曲とフーガといった作品に始まり、古典、そしてロマンのシューベルト、シューマンともなると幻想曲の扱うところは大きく拡大していきました。当盤は幻想曲だけではなく、前奏曲、他小編を含んでいます。バッハの平均律クラヴィーア曲集でも、厳格なフーガに対し、前奏曲の扱うところは、自由な展開の小品となっています。 すでにバロックの時代に、こうしたイメージを喚起する幻想曲が生まれていました。あえてバロック奏法などに寄せてはいません。バッハの時代に、よりリュートの分野で巧みだったのはヴァイスです。ギターの初心者から中級へと移行するときに弾かれることが多いのはファンタジアです。幻想曲の典型でしょう。バッハ同様、声部の表現があり、ハープに移されても同様の効果を発揮します。奏法は異なりますが、発音の原理はリュート、ギター、ハープともに撥弦楽器なのでした。人気ブログランキング