堀静香さんのエッセイ。我らが百万年書房から出てる「暮らし」シリーズ第一弾です。

ひとことでいうと、何も起こらない日常エッセイなんですけど…日常っていっても、ほっこりするものばかりじゃなくて、生きてたら誰もが必ず目にする・耳にするような、戦争のニュース、子どもを産むこと、知ってる人が自死したこと、そういうことについて語るときのためらいやとまどいを、堀さんはよそゆきのキレイな言葉にしてしまわないで、そのままおずおずと、最後までこれでいいのかと思案しながら、そうっとそうっと置いていくのです。し、新鮮…!

でもですね、このエッセイを読むと、逆に現代社会を生きる私たちがあまりにもためらわなさすぎなのでは、と思えてくる。とにかく早く、短く、カンタンで、そして強い言葉で、意見や立場を表明することを急かされて、あるいは多くの人に影響を与えることばかりがもてはやされて、その陰でないことにされてきたもの。ないっていうか、ホントはあるのにその価値を誰も認めなくなったもの。それがこのエッセイのなかにはある。

現代社会でうまくやっていけちゃう人はきっと、そんなためらいの言葉が何の役に立つ、とか思うでしょう。でもさ、役に立つ言葉だけが活躍する社会なんて、なんかヤだよ私は。そういう、隅に追いやられてきたためらいやとまどいの言葉に、堀さんは静かに光をあてる。それを見ると、なんだかとっても安心するのです。あっていいんだよね、こういう気持ち。


あと、ときどき差し挟まれる短いエッセイの、その短さと、連れて行かれる距離の遠さのコントラストがものすごい。これが文芸=文章芸術ってやつか!文芸って、こういうことができるんだ!とワクワクした。堀さんは、小説も書かれるとよいのではないでしょうか。

 

 



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