『風の歌を聴け』

村上春樹さんのデビュー作。久々に再読。

はじめて読んだ頃はわからなかったけど、最初から「デレク・ハートフィールド」なんていう架空の作家をでっちあげてくるところとか、唐突なアフォリズムとか、な～んか他人ごとのようなしれっとした文章とか、現実に存在しなさそうなデカダン女子とか、急に幻想世界に連れて行かれるところとか、あとＴシャツの説明を文章じゃなくて絵に描いちゃうところとか。村上春樹さん独特の、「あらよっと」っていう感じが散見されまくりで、見つけるたびにニヤニヤしちゃう。

全体的に、「…で、これは何の話？」っていう６０年代の青春スケッチみたいなものが続いて…私はたぶん発見しましたよ、ああ村上さんはこれが本当に書きたかったんだ、という一文を。

それはユーミンが、恋愛の歌に見せかけて、本当はこの世界の輝きや、瞬間のきらめきみたいなものを表現したいのだ、と言っていたことと似ていると思う。だってタイトルからして『風の歌を聴け』だもんね。

でも私の浅～い村上知識じゃ間違ってるかもしれないから書かないけど（笑）、私は改めてこの小説、一見アメリカ文学みたいだけど実はすごく日本っぽいというか…バター風味の俳句、みたいな感じがしましたねぇ。