レイモンド・カーヴァーの短編から、表題作。

バツイチの中年男が、母と弟と別れた妻と娘と息子に金の無心をされて(←されすぎ笑!)、にっちもさっちもいかなくなって、なんか笑っちゃうぜ、はっはっは、という話。

役にたつことがうれしい、とか言ってるけど、お人好しすぎるただのバカなんじゃ?とはじめは思う。思うんだけど、久しぶりに夢に出てきた父、父性へのあこがれ、自分がかつてアル中で家族に迷惑をかけたこと、などがさりげなく織り重なって、最後にはしーんとなってしまい、なにも言えなくなる。知れば知るほど、なんにも。

行き詰まった労働者の心情が、舌をまくほど鮮やか。持ち金と発言権の大きさが比例する国で、ワーキング・クラスの声なき声をすくいあげるのは、政治家ではなく作家なのだなあと思う。覚えておきたい。