ほどよく短いエッセイとか語りおろし、レアなところでは、仕事仲間・安西水丸さんの、お嬢さんの結婚式での祝辞なんかが収められていて、興味のあるところだけつまみ読みするのがおもしろかった。

その中で、エルサレム賞を受賞したときのスピーチが超よかった。

時は2009年、イスラエル軍のガザ地区爆撃に世界中から非難が集中したタイミング。

村上さんのもとにも、受賞を辞退するべきだ、という声が殺到したそうですが、村上さんは賞を受けることを決めました。

いろんな立場の人がいて、もし私が中東の人だったら・中東の村上春樹読者だったら・スピーチを聞いていたら・聞いていなかったらとかいろんな条件で、それぞれどう思っただろうか、と想像してしまった。

スピーチを読んだら、「物語には、有事の際に一番あとまわしにされてしまう人間のある部分に語りかけられる力がある、それを信じて書き続ける」という村上さんの決意が痛いほど感じられて、目が覚めるようだった。

断ったほうが百倍ラクなのに、すごい度胸だと思う。

また読み返したい。