中国人作家・楊逸さんの小説で、日本語を母国語としない作家による、初の芥川賞受賞作。
80年代末の中国、主人公は大学生の浩遠。そして幼馴染の至強。初恋相手の英露。民主化運動を先導する甘先生。私が中国に行ったときに出会った、若い人たちのキラキラした感じを思い出す。
そんな浩遠が、民主化の失敗を機に挫折していく。大学を退学になり、移住した日本でも、中国人民主同志会に参加するが、まじめに祖国の民主化を考えている中国人などもういないという現実。
中国の人たちの潰えた夢は、決して叶えられることはなく、著者は寄り添うことしかできない。しかも、母国語ではない言葉で。それでもなんとしても書かなくてはならんという切実さが伝わってきて、じーんとする。おそらく楊逸さん自身のためだけでなく、公権力に迫害され、沈黙するしかなかった数知れぬ人々のために。
でも天安門事件を書いてるので、大陸で出版されることは、これからもないんだろうな。
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●芥川賞受賞作の本(隠居の本棚より)