「さてかへゝしかば、どうがつとおよりどうほういんおおけられてあめおんいのりあり。ほういんとうだいいちにんむろとうおんこうぼうだいかくだいしょうだいしんごんほうかがみにかけ、てんだいごんとうしょしゅうみなむねかべたり。それにしたがひてとおよりのに、じゅういちにちたいりてかぜふかずあめしづかにていちにちいちりしかば、ごう殿どのぎょかんのあまりにきんさんじゅうりょうむまやうやうおんひきものありときこふ。かまくらじゅうじょうばんにんをたゝきくちをすくめてわらうやうは『にちれんひがほうもんもうしてすでにくびられんとせしが、とかう左右してゆりたらば、さではなくしてねんぶつぜんそしるのみならず、しんごんみっきょうなんどをもそしるゆへに、かゝるほうしるしめでたし』とのゝしりしかば、にちれんとうけうさめて『これはおんあら』ともうせしほどに」

 これから以下3つの節がしんごんによる雨の祈りとだいあくふうことをお示しですね。
 だいしょうにんさまかまくら殿でんちゅうからお帰りになった。
 そして間もなく耳にしたことは、へいのもんと対面した2日後の4月10日からどうほういんおおせ付けて雨の祈りがあった。
 やっぱりばくは、ことにへいのもんしんごんに対する執着が物凄く強かったんですね。
 だいしょうにんさまが御心配あそばしたどっけーじんにゅうしっぽんしんこーそのままだったんです。
 ですから、だいしょうにんさまのお姿を見て「だいもうこくはいつごろ責めてまいりましょうか」ということを一応は聞くもののやっぱりしんごんの毒を捨てきれずにふたたび雨の祈りをどうほういんにやらせてしまった。
 このどうほういんという男はしんごんの総本山でありこうぼうが建てた寺である東寺第一の智者とわれており、じょうこうの次男むろの師匠であった。
 むろというのは、出家してにんに入ったのでそこをむろったんですね。
 さらに、こうぼうだいかくだいしょうだいしんごんほうかがみにかけるごとく弁えておった。
 こうぼうというのはしんごんの元祖であり、かくしょうというのは天台の座主にもかかわらずしんごんを取り入れていったしんちゅうむしであります。
 しかし、世間に仏のごとくこうぼうかくしょうの三人はあがめられておった。その秘法のすべてをわきまえておったのがどうほういんであります。
 さらに、それだけではなく、てんだいごんとうしょしゅうみなむねかべるほどの大変な大学者であり、当時ほん第一のしんごんわれた。
 この時だいかんばつがあったんですが、それに従って、10日からの雨の祈りをせよということになり、その祈りの翌日から大きな雨がり、しかも風が吹かず静かにして一日一夜ったというんですね。
 これを見て、ほうじょうときむね感激かんげきのあまりに金三十両と馬一頭とその他様々な引き出物を引き出してたたえたというんです。
 でかまくら中の上下万民は手を叩いて口をすくめてだいしょうにんことを笑ったというんです。何とったか。
 「にちれんぼうちがった法門をいだしてすでにくびを切られんとしたところ、どうにかこうにか許されたら少しも恐れ入ることなくかえってねんぶつぜんそしるだけではなくこのとうとしんごんの密教などもそしったから、かかる法のしるしがめでたく現われて雨がったのだ」とこうって悪口をったというんです。
 さあこれを見て、だいしょうにん達も興ざめしてしまって「だいしょうにんさまへいのもんに対してしんごんの邪法たるところを強く強く破折あそばしたが、あまりにあの破折は強すぎたのではございませんか」というようなことまでい出す者が出てきたというんです。
 いいですか、このようにしんごんでもって雨の祈りをして一日一夜雨がった。これはどういうことかといえば魔の働きですよ。
 要するに、へいのもんしんごんを取り上げた。
 その時にほんこくの人にしんごんの邪法を信じさせて、だいしょうにんさまぶっぽうを捨てさせようという魔の働きでもってこのしんごんの雨の祈りにそういうしるしが現われるように見える。
 ところが、じゃきょうでもってこのようなしるしが現われたのは必ずその後でもって罰が出てくるんです。
 ですからよく「てんきょうでも功徳があった」「りっしょうこうせいかいをやっても功徳があった」とじゃきょうで功徳があったと自慢するけれども、これは絶対ぜったいに一時的でどうのない魔のやくであって、やくがあればその後に必ずだいばつがあるんです。
 ですから、どうのないやくというのは正しいやくじゃない。
 例えば、かくせいざいを飲んで元気になったとしても、かくせいざいが体にいいわけがない。どうのないげんしょうは必ず反動がある。
 これも同じでもって、じゃきょうしんごんの祈りでもってしるしが現われたら魔の働きなんですよ。
 そこをだいしょうにんさまがその次の段で大確信だいかくしんをもって破折あそばされるんですね。


平成15年 4月8日 『下種本仏成道御書』御書講義