今は西暦207X年。私の名前は、波呂和 就子、56歳。子供が独立したのを機に熟年離婚したばかり。
昔は、夫婦が離婚する理由としては、相手が浮気したり、価値観が合わなかったり、モラハラを受けたりして離婚したケースが多かったらしいけど、今は子供が独立すれば、別に相手を嫌いになったわけではないが、一緒の墓に入りたいと思わなくなったらさっさと離婚して、それぞれセカンドライフとして新たなパートナーを見つけるのもトレンドになっているので、私もその流れに乗って決断しただけ。
結婚するとき、夫婦別姓を選択していたので役所や金融機関への手続きも簡単だった。
元だんなは財産を離婚分割してくれると言ってくれるけど一生遊んで暮らせる額ではないし、年金も昔は65歳からもらえたらしいけど、今は70歳からしかもらえない。平均寿命も男性:88歳、女性:95歳になっていて、今からできれば75歳くらいまでしっかり働いて、少しでも年金額と貯金を増やしておかないと安心した老後はおくれそうもないので、しばらくは婚活と就活と平行して頑張っていくつもり。
まず、婚活については、とりあえずシニア向けの出会い系サイトや結婚相談所に登録して「申し込み」を待つことにした。今は高齢化社会を反映して、適齢期よりもシニアの出会い系サイトの方が活性化していて、多くのシニア男性との出会いが期待できそう。
ただ、就活については久々なので不安で悩んでいたけど、友人に聞いたらハローワーク(HW)ではオンラインの窓口で相談ができるようになっていて、地方や遠隔地の利用者もアクセスしやすく、交通費もかからないので早速試してみることにした。
なお、リアル拠点は「デジタルに不慣れな層」や「対面での安心感を求める層」向けに特化して全国の市区町村の役所の片隅に配置しているらしいけど、行っても窓口の数も少なくて長時間待たされるらしい。
●マッチングと応募データ作成はAIで
聞くところによると、昔はネット上では求人検索しかできず、職業相談や応募を希望する際はわざわざ所轄のHWに出向いて、混雑時には1時間くらい待たされて、窓口で職業相談員から紹介状をもらい、自分で応募書類を作成して郵送するか、面接日程を調整してもらい、持参するような面倒くさいことをしていたらしい。
今は、自分の希望条件を入力すれば、事前登録している職歴・年齢・保有資格などから、アンドロイド型ロボットの相談員が過去の採用実績に照らし合わせて、求人情報を採用確率も含めて提供してもらえるとのこと。
応募も事前に性格診断を受けておけば、ロボット相談員が自己PRや志望動機も含めて、履歴書とか職務経歴書のたたき台を電子データで作成してくれるので、後は、必要に応じて自分で少し手直しするだけ。
昔は、応募の際には、履歴書や職務経歴書は紙ベースで、面接時に持参したり、事前郵送することが必要だったらしいけど、今は、応募したい求人があれば、求人画面から応募ボタンをクリックするだけで応募は完了。その際に履歴書や職務経歴書も自動的に送信してもらえる仕掛けになっていて、あとは、応募先からの連絡を待つだけ。文章を書くのが苦手な私にとっては、本当に便利になって助かるわ。
●いろいろなタイプのロボット相談員が応対
さっそく、ネットで個人情報を事前登録して、オンラインで空中ディスプレイに接続したスマホでログインすると、アンドロイド型ロボット相談員が目の前の空間に現れ、いろいろ相談してもらえることとなったの。ロポット相談員も様々なタイプがいて、
・キャリーナさん(想定:35歳女性、元大学のキャリアセンター勤務)
・ジョブ太さん(想定:40歳男性、元就職エージェント会社勤務)
・キャリ蔵さん(想定:65歳男性、元大手企業人事部所属で定年退職)
・ナビ乃さん(想定:60歳女性、主婦、社会保険労務士)
など自分の好みでその都度選ぶことができるので、私の場合、イケメンのジョブ太さんを選び、いきなり自分にマッチする求人情報の提供をお願いする前に、現在の労働市場の動向を聞いてみた。
●高度な仕事はAI、単純な仕事は人間?
就子「新しいことにチャレンジしたいので56歳の女性で未経験でも応募できる仕事にはどんなものがあるのですか?」
ジョブ太「今は、むしろ昔とくらべて未経験歓迎の求人は増えていますよ。どうしても機械化できない単純作業や作業間の繋ぎでどうしても人間が介在しないといけない作業は、業務経験がなくてもAIロボットが教えてくれるので心配はありません。今は、難しいことや経験が必要なことはすべてAIロボットがやってくれるので、後はそのAIロボットの言う通りにやってくれればいいのです。そういう意味でどうか安心してください! 56歳の波呂和さんでも仕事はいっぱいありますよ。求められる人材は、年齢にかかわらずAIロボットの指示通りに迅速かつ正確に作業してもらえる人が有利ですよ。」
聞いてて、なんか複雑な気分になったので、さらに聞いてみた・・
就子「もう少し自分のスキルを高めたり、社会貢献を実感できる仕事はないのでしょうか?」
ジョブ太「そうですね、例えば・・・
・AIでもできない創造性が求められる仕事(企画、デザイン、研究など)
・人間関係や感情理解が必要な仕事(介護、教育、カウンセリングなど)
・現場対応力が必要な仕事(土木建築現場、災害対応、保育、医療、介護現場など)
こうした分野で、まだまだロボットやAIではできない仕事ならありますが・・・。波呂和さんは、こうした仕事に興味はありますか?」
私自身にそんなセンスも経験も資格もないので、もう少し私にもできそうな事務職、販売職、製造系、運送系、介護系などで具体的にどんな求人があるのかジョブ太さんに尋ねてみることにした。
次回 ハローワーク(就活)未来予想図Ⅱ につづく















