60歳男性、施設警備の求人に応募したいと自選した求人票を持参して来窓。早速に事業所に連絡し、面接日程も調整して応募となった。
人柄も体力的にも問題なく、おそらく採用になるだろうと思っていたら後日、本人が来窓して「保証人が要ると言われ、一人暮らしで頼れる家族や身内もおらず、やむなく辞退した。次は保証人の不要な求人を紹介してくれ」と寂しそうに言われたことがあった。なんともやるせない話である。
ハローワークに相談に来られる方の中には、一人暮らしで家族や身内がいない天涯孤独な高齢者や生活困窮者、わけありで家族や身内と絶縁状態の人が時々来窓してきた。単身世帯が4割といわれている時代なのでなにも珍しいことではない。
●慣習的な制度
現金や金品を直接取り扱う仕事などはやむをえないと思うが、中堅~老舗の製造業・卸業・地方企業などでは、慣習的に行われていることが多い。
身元保証人を求めること自体は違法ではなく、企業が提出を求めることはできるが、労働者に強制することはできない。提出しないことを理由に内定を取り消すのは、原則として不当とされる可能性がある。
ただ、企業によっては法律に触れることは避けたいことから冒頭のように事前に確認し、身元保証人が立てられないと内定を出さない企業も多い。
●法律上は・・
身元保証に関する法律では、以下のような制限がある。
・期間を定めない場合は3年(定めても最長5年まで)、自動更新は原則無効
・会社に損害を与えた場合の保証額の上限(極度額)を明記しなければ無効
・従業員に不正や不適任があった場合など、保証人に通知すべき義務がある
通常は、入社して3年経てば保証人としての責任期間は終え、その後は会社側の管理監督責任が問われることになる。
これ以外に身元引受人を求められることがある。身元保証人との大きな違いは、本人の品行や信用を保証し道義的な責任を負う人で、通常は法的責任はないので契約書に明記されない限り金銭的な賠償を負うことは無い。
ただ、いずれにせよ、他人から就職時に身元保証人や身元引受人を頼まれたときは、充分に契約書を確認することをお勧めする。
●緊急連絡先は必須?
ここ数年、確かに身元保証人が必要という求人は減ってきたが、緊急連絡先としての身元引受人は必須という会社はまだまだ多く残っている。
一度だけだが、住むところがない人に、身元保証人不要の寮付きの製造業の派遣求人を紹介しようとしたら、身元保証人は不要だが緊急連絡先が確保できない人の採用は難しいと言われ、紹介を見送ったことがあった。
企業側としても、もし勤務中に万が一(死亡、意識不明など)のことがあった場合のリスクを考えればやむをえないことかもしれない。
●保証人代行サービスはあるが・・
就職や入院時に、どうしても保証人が必要な場合、比較的安価な手数料(2~5万円)で利用できる保証人代行サービスがある。ネットで簡単に調べることができるので利用したい方は一度調べてみてほしい。
ただ、元来こうした境遇の人は、この手数料も支払うことができない人が多いのが実情である。
●保証人不要の企業を探す方法
なお、保証人不要の企業を探したい場合は求人サイトで「保証人不要」「身元保証人不要」 「保証人なしOK」などのキーワードで検索すればよい。
住み込みの交通誘導・土木・建築・手元作業などは保証人なしでも雇用してもらえるし、IT系・ベンチャー企業・外資系企業は保証人制度を廃止しているケースが多いようだ。
●立てられない時はダメもとで相談
保証人や緊急連絡先が立てられない場合も、もちろんダメと言われるかもしれないが、諦める前に応募先によく事情を説明して相談してみてほしい。
代行サービス料金を利用するので初任給がでるまで保証人を待ってもらえないかなど、いろいろ妥協案を検討してもらえる可能性もあるので、この理由だけですぐに応募をあきらめることはないようにしてほしい。
●家族や身内は大事
以前、私が入院をすることになり、病院からは同居していない保証人を求められ、幸い別居している娘に頼むことができた。
就職時や入院時に、当然のように家族や身内がいて、身元保証人や身元引受人を引き受けてもらうことが当たり前のことのように考えている人は、改めてその「ありがたみ」を感じてほしいところだ。
「就職する」ということは、家族や周りの協力があって初めて成り立つ契約行為の一面があることを忘れてはいけない。