●就職氷河期世代とは

 就職氷河期世代については頻繁にマスコミで取り上げられおり、ご存じの方も多いと思う。おおまかにいうと、概ね「1995年~2005年頃」に新入社員として入社する時期を迎え、不本意就労を強いられ正規社員に就けなかった人たちである。この時期は新入社員の求人倍率が1倍を切ることもあった。非正規雇用が増大し格差社会を生み出すきっかけになった時代ともいえる。

 政府もこうした世代を支援しようと、ハローワークでは令和元年から就職氷河期世代の人(1968年4月2日から1988年4月1日の間に生まれの方)で正社員の期間が1年未満だった人を正社員として雇用すると、採用した企業に助成金を支給する制度を導入し、個別支援の専門窓口を設けて支援する施策を実施している。

 当初、正規雇用者を30万人増やす目標を掲げたが、これまで11万人程度にとどまり、成果があったかどうかの評価は難しいところだ。

●窓口では・・

 ただ、相談窓口でこの世代の人と面談していると、正社員で働きたいという意欲があまり感じられず無気力感がただよう人も多く、正直、支援させてもらおうという意欲がわかないな~~と感じることも多かった。

 また、相談者には不満や不平を言うだけで社会適応能力が乏しいと感じる人もいて、おそらく就職氷河期世代でなくても就職は難しそうな人も散見していたこういう人には別の支援策(福祉的なアプローチや生活支援、社会参加の段階的支援)が必要ではないかと感じることもあった。

 

●同情論と自己責任論

 就職氷河期世代については、同情論自己責任論がある。

 たしかに、この時代はリーマンショックなどの不景気や労働者派遣法の改正で派遣できる職種が製造業まで拡がり、本来なら正社員で雇用されるはずが、派遣や期間限定社員など非正規雇用になったりして気の毒な時代でもあったが、その後アベノミクスで好景気が続き、正社員で就職する機会はいくらでもあったはずである。現に今でも人手不足で困っている業界はいっぱいある。自分さえ気持ちを切り替え、仕事に対する考え方を変えれば正社員の仕事はいくらでも見つかるし、この世代の人だけをことさら取り上げて支援する必要もないのでは? という意見がある。

 

 一方で、就職氷河期世代の中には、「自分にはもうチャンスはない」「社会から見放された」と希望を失い「どうせ頑張っても無駄」という深い無力感やあきらめを抱えた人も多く、そうした心理的影響が、たとえ経済が回復していても再チャレンジへのブレーキになって、努力しなかったというより、努力する気力を失っていた、あるいは自己肯定感を失って選択肢が見えなかったという人もいて、制度や経済の側面だけではなく、人の心のダメージにも目を向けることも忘れてはいけないという意見も聞かされたことがあった。

 

 確かに、相談者の深層心理にまで踏み込んで寄り添う姿勢こそが「キャリアコンサルタント」として使命かもしれない・・などと考えたりして、正直、私自身でもいろいろ葛藤があったのも事実である。

 

●就職氷河期世代も高齢化に -セカンドキャリアを考えよう-

 こうした就職氷河期世代も、年長者は50歳代に入ってきている。

 年齢を重ねると、非正規雇用で雇い止めされた後、新たに再就職したくても非正規雇用といえどもだんだんむずかしくなる年代である。

 令和の今の売り手市場から考えると、この時代に社会人デビューを迎えた人たちにとっては「もう30年、後に生まれていたら・・・」と思っているはずだ。

 ただ、「40歳過ぎたら自分の顔に責任をもて」と言われるように、いつまでも自分の生まれた世代や社会に対して嘆いても仕方がない。 

 このまま非正規雇用で不安を抱えながら漫然と働くのがいいのか、就職氷河期世代の人たちもそろそろ自分自身のセカンドキャリアについて真剣に考えて欲しいところだ。

 

●不安に備えるには・・

 就職氷河期世代の老後の生活や将来の不安を少しでも軽減するための解決方法は 今のうちに、自らの意識を変えて、実際に行動に移すしかない。

 今さら遅い、私には無理と初めから決めつけず、例えば、職業訓練等を受講してリスキリングしながら何か資格を取得して未経験の職種にも挑戦して正社員をめざしてみる。(もし、資格に迷ったときは

を参考にして欲しい)

 

 あるいは、年齢的に正社員をめざすのが難しいのであれば、高齢になっても経験があればつぶしがきいて(簡単に転職できて)長く(70歳以上でも)働ける職種(介護、運送、タクシー運転手、警備(いずれ管理職)など)へ今のうちに挑戦してみる。

 また、副業でもいいので何か好きなことやできることから始めてみる など、とにかく行動に移すことが大事である。

 

 政府も前述の助成金だけではなく、就職氷河期世代が年金を受給者になり始める2040年ころには、受給額が減額され、年金だけでは生活できなくて生活保護に頼る人が増大することから、基礎年金の底上げなどの対策にも着手している。

 しかしながら、以前、第33話でも書かせてもらったが

『人は、馬を水飲み場に連れて行くことはできても、馬に水を飲ますことはできない』

 政府がいろいろ支援策を実施してみても、結局のところ、当事者本人がその気にならない限り空振りに終わってしまう。

一念発起を期待したいところだ。