●負けた・・・

 生成AIについては以前「(第84話)生成AIにきいてみました」や「(第47話)ハロワは空気がよどんでいる」でも少し触れてきたが、その後の進化は目覚ましいものがあり、正直、すでにその対応能力は、私がハローワーク(HW)で6年間、職業相談員(キャリアコンサルタント)として積み上げてきた知識や経験などをはるかに超えているレベルだと感じることが多くなり、なにかむなしい気持ちになってしまった。

 たとえば、応募書類で一番苦労する履歴書の志望動機や自己PRの表現については、年齢、性別、これまでの職歴(年数)、保有資格と自身の境遇(疾病、障害、シングルマザー、子供の年齢、障害、ひきこもり、LGBT等)を入力し、応募先企業の業種、応募する職種を入力すると、簡単に志望動機や自己PR(案)を作成してくれる。

 「(第66話)履歴書 ワケアリ人(離婚を機に転職他)の志望動機の書き方」で掲載している、私が6年間の経験から苦労してまとめた訳あり人の志望動機サンプル集よりも的確で優れた表現のものを一瞬のうちに作成してくれる。

 もちろん大手の金融・商社・製造・IT企業などの正社員へ応募する際の職務経歴書レベルにはまだまだ不充分ではあるかもしれないが、中小企業やパートや派遣などの応募書類に書く志望動機ならこのレベルで充分である。


 

 おそらく、面接指導もオンラインでAIロボットが模擬面接を実施してくれて、話し方とか話すポイントを指導してくる時代は、そう遠くない将来で実現すると思われる。

●マッチングはAIがもっとも得意?
 さらに求人側と求職側とのマッチングはAIが最も得意な分野と言える。
 現在でも就労条件を指定して検索し、応募者の独自の判断や職業相談員の経験と勘で選別しているが、それもAIでは過去のマッチング(採用)に関するビッグデータを背景に、職歴や保有資格、通勤時間なども含めてかなり高いマッチング率で選別してくれるはずだ。

 まだ実現されてはいないが、民間のエージェント会社などは近い将来「あなたの経歴にAIでマッチする仕事を紹介します」とAIによるマッチング機能をアピールしてくるのは間違いない。(ただ、国のDX化は民間企業より10年は遅れていると言われているので、HWでの活用はかなり遅れる可能性が高いと思われるが・・・)

 

●キャリコンはオワコン?

 おそらく、若いうちから情報リテラシー教育を受けた人が高齢になる頃には、パソコンやスマホを自由に使いこなせる人が増えてきて、HWの窓口に出向いて、相談員から職業紹介を受けたり、応募書類(履歴書等)の作成指導を受けることは漸減していく。
どうやらHWの窓口での職業相談員は近い将来ほぼ消滅する仕事の一つになるのは間違いないようだ。
 こう考えると、キャリコンはオワコン(終わったコンテンツならぬ終わったコンサルタント)になってしまうような気がする。
 

●生き残る方法は?
 そんな中、キャリアコンサルタントとしてなんとか生き残る方法を考えてみた・・・
〇もう一歩上のステージでの支援
 AIが得意なのは、過去の実績に基づく情報の整理や文書作成、パターンに基づいた検索だが、人の「本音」や「迷い」、「価値観」や「希望」をくみ取って、それに寄り添った支援をするのはAIには難しいはずだ。人が人を支える、その「対話力」「関係構築力」こそが、これからのキャリアコンサルタントに必要な価値と言えるかもしれない。

 

〇AIを利用するスキルを高める
 AIに凌駕されるのを恐れるのではなく、うまく活用することに視点を変えてみる。
 例えば、履歴書を作成する場合AIの力を借りて書類を「下書き」してもらい、それを応募者の個性が反映された形にブラッシュアップする役目を担うのである。AIを活用するスキルを高めることは、むしろ強みになるはずだ。


〇「キャリア相談」の深度化・多角化
 今後は職業の選択支援だけでなく、生き方・働き方・マネープランとのバランスまで踏み込むような、よりパーソナルでライフデザイン寄りのコンサルティングにシフトすることが重要かと思う。
 また、教育や研修分野への広がり、キャリア教育、AIリテラシー教育、職業観育成など、教育領域での活躍の場を求めてもいいかもしれない。

 こうして、キャリアコンサルタントに限らずコンサルタント業務として生き残るには、AIの登場は「終わり」ではなく「変化の始まり」として捉え、共存する方法を模索するしかないようだ。