休みの日になると、パターンナー君のうちに行き、あたしがデザインを持ちより、彼がその場でパターンを引いた。
「あ、これ・・・」
指差した手が彼の手にぶつかる。
恥ずかしくて引っ込めようとしたその手を、力強く引っ張られた。
その場で抱きすくめられた。
手をつないだこともない男に。
それは決して、嫌な感じじゃなかった。
ただわき上がってきたのは・・・
言葉にできないせつなさ。
彼のことが、好きかと言われたらまだそれはわからない。
だって今の今まで考えてもいなかったから。
ただ・・・
やっと居場所を見つけたような・・・。
ここにいていいよと言ってもらったような・・・。
終電が終われば毎日のように24時間開いてるファミレスでミーティングして、休みの日は彼のうちに行く。
こんなに一緒にいたのに・・・
彼も男なんだ。
改めてそのことに気付いた。
ひとりでがんばってきた。
あの夜から彼と同士になったけど・・・
となりじゃなく並んで前を向いていた。
彼の顔を、じっくり見たこともなかった。
温かいものは、手を伸ばせば届くところにあったのに。
振り返って彼を抱きしめ返そうとしたそのとき・・・
「ごめん・・・」
そう言って彼はパッと離れた。
温まった身体が、すうっと冷たくなった。
そして、あたしたちは何もなかったように仕事を続けた。
(つづく)
あゆみです
「夢をかなえる」
明日は22時にお届けできるかな。
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夢をかなえる『プロローグ』
夢をかなえる『失業』
夢をかなえる『全滅』
夢をかなえる『希望』
夢をかなえる『満開』
夢をかなえる『決意』
夢をかなえる『暴力』
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夢をかなえる『動揺』
夢をかなえる『沈黙』
夢をかなえる『変化』
夢をかなえる『熱意』
夢をかなえる『内緒』
読んでくれてありがとう、またね