チーフが電話をかけておいてくれた会社は3社あったけど、どこにいっても
「申しわけないけど・・・今年は新卒の人も断っちゃったんだよねぇ」
そう言われたら、それ以上いいようがなかった。
いよいよ週末になる。
チーフは全部だめだったらまた電話しておいでと言ってくれたけど・・・。
と、久しぶりにケータイでツイッターをのぞいてみた。
なんとなく、前の会社の社名を打ち込んでみたら・・・ツイッターのアカウントがあった。
そして・・・
会社で、被災地にいって炊き出しをしていることを知った。
あたしに首を告げたとき、チーフはこの会社が残るかどうかみたいな話をしていた。
でも・・・今、社員みんなで配送トラックに乗って、在庫を物資として持っていってそこで炊き出しまでしているという。
「自分たちに、いまやれることをやります。あ、週明けにまた仙台に行きますので取引先各位、フォロワーのみなさん、物資の持ち込み、お待ちしています」
なかの人が誰かはわからないが、そのツイートには元気がみなぎっていた。
(あたしだって、みんなと一緒にボランティアしたかったよ・・・)
こんなことを思うのはきっと最低だけど。
状況は刻一刻と変わるから、あたしが辞めてから突然そういう展開になったのかもしれない。
仙台の生産ラインがどれだけ壊滅してるかみにいったのがきっかけだと過去のツイートをさかのぼったら書かれていた。
でも・・・
つまるところあたしは仲間になれなかったのだ。
ここであたしがチーフの言葉を真に受けて電話しても面倒な奴と思われるだけだろう。
あるいは・・・ボランティアの手が足りて喜ばれる可能性もなくはないけど・・・それで、何も聞かされなかったらショックだろう。
自分がひとりぼっちであることを思い知らされるのはもういい。
ツイッターをのぞいてみてよかったと思った。
自分で何とかしよう・・・
でもどうやって・・・?
あてなんて何もない。チーフの推薦があるメーカーでも難しいのだ。
と、あたしはかつて読んだ本の一節を思い出した。
「部屋はあなた自身です。あなたの部屋は雑然としていませんか?人生が滞っているのは、部屋がちらかって、空気が滞っているからです」
あたしは苦笑した。
あまりにもその通りだったから・・・。
あのとき以来、時が止まっていた。
オールナイトしてマップを仕上げようと、ペンに色画用紙、コピー用紙に消しゴムのかす・・・机いっぱいに散乱したままでほこりさえたまっている。
あれから毎日面接に出かけていたから、机を見ることもなかった。ううん、無意識に避けていたのかもしれない。
そう・・・前の会社の仕事をそのままにしているから次の縁が来ないのかも。
そうだ!断捨離しよう!まずはこのファイルから・・・
と、ファイルを手に取ったとき・・・
一枚のカードがはらりと落ちた。
以前、展示会の時取材をしてくれた業界紙の記者さんの名刺・・・。
あたしはおそるおそるその電話番号をケータイに打ち込んだ。
(つづく)
あゆみです
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「夢をかなえる」
明日も22時にお届けします。
お楽しみにね。
読んでくれてありがとう、またね
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