「こういうときこそ、服で夢を与えたいんだよね」
夢・・・
その言葉が社長の口から出たとき、スイッチが入った。
結局入社した日、ささやかだけど、と歓迎会をしてもらい
お酒を飲んでアツく語り合った。
社長は、年齢もあたしと二つ違いだそうだ。
「震災の年に君がきてくれたのも縁だと思う。前にいた会社はマルキューに商品をおろしていたって?よし!うちもマルキューにおろせるようになろう!」
社長ありがとうございます・・・
絶対ここで結果を出そうと決意した。
「そしてね・・・
僕の夢は、
いつかパリコレにデビューすることなんだよね」
「すごい・・・実はわたしも・・・パリコレほどスケール大きくないけど・・・
コレクションに出れるデザイナーになることが夢なんです」
夢を誰かに話したのは初めてだった。
大盛り上がりで解散し、翌日からあたしははりきってデザインした。
だけど・・・
「なんか違うんだよね」
社長はピンと来ないらしい。
最初ははりきってああでもない、こうでもないと企画をだしまくっていたあたしだけど、だんだん気持ちがなえてきた。
なんかって、何?
違うって、何が?
何度書き直してもいいから、それを教えて。
意気投合して、服作りについてアツく語り合ったのはなんだったんだろうか?
何を描けば気に入ってもらえるんだろう・・・
ほんとうは、あたしのこと試しているの?
ほんとうは、あたしのことが嫌いなの?
いつしか、社長に気に入られるデザインってどんなのか、そのことしか考えられなくなっていた。
服を着るのは若い女の子達なのに・・・。
あたしは極度の緊張の中で仕事をするようになっていた。
そんなある日。
「これ発注したの、君か?」
(つづく)
あゆみです
「夢をかなえる」
明日も22時にお届けしまっす!
最初から読みたい人はこちらを見てね。
夢をかなえる『プロローグ』
夢をかなえる『失業』
夢をかなえる『全滅』
夢をかなえる『希望』
夢をかなえる『満開』
読んでくれてありがとう、またね