☆ERA通りの移植とERA検査なしの移植の軍配は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ERA通りの移植とERA検査なしの移植を後方視的に検討したものです。

 

Fertil Steril 2022; 118: 314(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.05.013

要約:2018〜2019年に凍結胚移植を実施した方を対象に、ERA通りの移植とERA検査なしの移植を後方視的に解析しました。両群間の年齢、BMI、過去の胚移植不成功回数には有意差を認めませんでした。ERA検査を実施した307名の非受容期と受容期の比率は、過去の胚移植不成功回数による有意差を認めませんでした。妊娠成績の結果は下記の通り、全ての項目で有意差を認めませんでした。

 

ERA      受容期   非受容期   オッズ比(信頼区間)  P値

症例数     125名    182名       〜

臨床妊娠率   59.2%    51.6%   1.15(0.95〜1.38)   NS

出産率     48.8%    41.7%   1.17(0.97〜1.40)   NS

 

        ERA実施   非実施   オッズ比(信頼区間)  P値

症例数     307名    2,284名       〜

臨床妊娠率   54.1%    58.9%   0.92(0.79〜1.20)   NS

出産率     44.6%    51.3%   0.87(0.73〜1.04)   NS

 

解説:最近、ERA検査に否定的な報告が増えています。本論文は、ERA検査の有無で妊娠成績が変わらないことを示しています。さらに、過去の胚移植不成功回数によるERA受容期率に有意差を認めないこと、ERA受容期と非受容期で妊娠成績が変わらないことから、ERA検査は何の意義もない検査であるものと推察されます。

 

下記の記事を参照してください。

2022.9.18「☆ERA検査は有害!?

2022.8.28「☆ERA検査の有用性は否定的!? メタアナリシス

2021.11.9「黄体ホルモン濃度と着床の窓

2021.8.19「子宮内の液体を用いて着床の窓の検査が可能!?

2020.8.19「ホルモン補充周期のE2値は着床の窓に影響しない

2012.12.28「採卵前の黄体ホルモン(P)上昇

2019.9.9「☆着床期に内膜は薄くなる方が良い!?

2019.6.29「告知:ERPeak検査導入のお知らせ

2019.4.12「子宮内膜受容能 その1:子宮内膜受容能とは?

2018.4.28「着床障害には、着床の窓のズレと壊れがある!?

2018.3.26「ERAテスト:カナダからの報告

2018.3.14「ER Map®/ER Grade®とは?

2018.1.31「非侵襲的NCS検出法

2017.10.19「☆着床の窓:スペインから続報

2015.9.4「☆黄体ホルモン濃度はいくつあれば良い?

2014.12.21「☆ERAテストについて

2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報

2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」
2014.8.10「「着床の窓」について」

2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?